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秘密の恋  作者: 菊花
本編
18/38

16



念入りと言ってもいいくらい、慎重に私は先生を避けた。

必要以上に会わないように。

すれ違うことすら許さないように。

そして、先生も。

恐らく会わないよう、動いているように思えた。

もともとあまり関わりもないのだから、驚くほどに簡単に会わなくなった。



「今日…」

「何?」

「ううん、なんでもない」


今日は先生の誕生日だ。

きっと今日も先生の周りは大盛況なのだろう。

それは、もう遠い世界の出来事のようだ。




「空貴にぃ、今日は?」

「友達と飲みに行くって言ってたよ」

「じゃあ、由姫んとこ行こー。今日のご飯何にする?」

「何がいいかなぁ」


兄の「友達」。

あの日から、兄は頻繁に友達と外で会うようになった。

その友達が、先生だってことは知っている。

なんの因果か、私が振られることによって、望んでいたことが叶った。


そして私は先生が家に来る前と同じ生活に戻った。

自分と、兄のための食事を作る。


このまま、接点を持たずにいればいずれ忘れられるんだろう。

それでいい。

時々チクリと痛むことがあるけど、時々苦しくて泣きたくなる日もあるけど。


きっと、それももうすぐなくなる。


そう、思っていた。





※※※※※※※※※※※※※※





「もう3年生かー早いなぁ」

「いよいよって感じだね」

「自由に遊べるのは1年後かぁ」



気分転換にどうよ!と奈々に誘われ春休みはバイトに明け暮れた。

おかげであっという間に春休みが終わり、気が付けばもう新学期だ。



「結局由姫も進学コースかぁ」

「進学って言っても短大だし」

「受験することには変わりないじゃん」

「まあ、そうだけど。がんばんなきゃね」




ふと、あのひとの面影がよぎる。

このところの忙しさで、思い出すことも少なくなっていた。


きっと、もう会っても大丈夫。



「またクラス一緒だといいね」

「えーそんなに上手く同じになるかなぁ」


クラス発表のボードが近づく。

奈々と一緒だといいな、緊張しながら自分の名前を探していく。


「あ!あった!由姫!一緒だよ!」

「ほんと…」


喜ぼうとしたその時。

まさか、という名前を見つける。

ドキンドキンと心臓がなる。


「由姫…?」

「うそ…担任…」


奈々がえっと驚いたのが分かった。


「うそでしょ…?」




担任 遠野 大




先生の名前が、そこにあった。






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