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がちゃん、と玄関で音がする。
一瞬兄かと思い、すぐに違うことに気付く。
バタン!と自室のドアが開いた。
「由姫っ!!」
「奈々…」
「空貴にぃから連絡あって…!何があったの!?」
「奈々ぁ…私、振られちゃった…」
「え!?」
泣きながらなんとか奈々に図書室で先生に会ったこと、送ってくれたこと…思い余って告白をしてしまったことを話していく。
「生徒だから、それ以上もそれ以下もないって…」
「なにそれ…!!」
「それは、仕方ないことじゃない…?」
「おねーちゃん!」
乃々ちゃんが部屋に入ってくる。
仕方ない、と言いながらもどこか複雑そうだ。
「仕方ないってなにそれ!」
「遠野くんは教師よ。その辺の大人とは事情が違う。本心がどうであれ、そう言わざるをえない。」
「なんで…」
「周りが許さないのよ。生徒に手を出すような教師を親はどう思うかしらね」
乃々ちゃんの言うことはもっともだ。
1歩間違えれば先生が後ろ指をさされるようなことをした、そのことに愕然とする。
「でも!」
「奈々、いいよ。私、先生のこと何も考えてなかった」
「由姫…」
「先生が迷惑してるの、知ってたのに…。自分のことしか考えてなかった。先生が本当に好きなら、言っちゃいけなかった」
もしかしたら先生が危うい立場に立たされたかもしれない。
ただでさえ、告白をしたことで迷惑をかけたんだ。
…諦めなければ。
「諦めなきゃ…」
一瞬、乃々ちゃんが悲しそうな顔をした。
※※※※※※※※※※※※※※
兄は先生のとこに泊まると連絡があったらしい。
少しだけ、ほっとする。
今顔を合わせても、どうしたらいいかわからない。
そのかわり家には乃々ちゃんと奈々が泊まることになった。
乃々ちゃんが居間で電話をしている。
相手は兄だろう。
その先に、先生もいるのかと思うと、胸が騒ぐ。
あのまま先生の家に行ったんだ。
いいな、と思ったあたり未練がましい…。
「私、先生は由姫のこと好きなんだと思ってたなぁ」
「まさか」
「えぇー?そんな気しなかった?」
「なかった…と思う。ありえないよ。だって、先生だよ」
「んん…そうかなぁ」
「そうだよ。ね、もう寝よう?」
パチン、と電気を消す。
「明日、学校行ける…?」
「行く。休んだら、先生気にするかもだし」
「ねぇ…諦めるの…?」
諦めるよ、と答えたいのに答えられない。
私、本当に諦められるの…?
好き、と言葉にしてからこんなにも気持ちが大きくなっていたことに気付いた。
あまりの気持ちの強さに、ただただ涙をこらえることしかできなかった。