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秘密の恋  作者: 菊花
本編
15/38

13




急いで帰り支度をして、学校を出る。

裏門から歩いて数分の所に、見覚えのある車が止まっていた。

覗き込むと助手席を指される。

…いいのかな、助手席。

 

「失礼します…」

「どうぞー」


シートベルトをしたのを確認して発進した。


「空貴に連絡した?」

「え…いいえ」

「した方が良くない?」

「そんな、小学生じゃないんだから。先生も過保護ですよね」

「そう?空貴のが移っちゃったかな」


困ったように笑った先生の横顔。

先生と話すの、久しぶり。

嬉しい、でも心臓がぎゅうっとなって。


「ご飯、ちゃんと食べてますか?」

「食べてるよ、心配?」

「最近、家に来ないから…」

「忙しくて」

「また来てくださいね」

「ん…」


歯切れの悪い返事に、誘ったことを後悔した。

兄ならばともかく、私はそこまでの近しい関係ではないということだろう。


なんとなく黙り込んでしまう。

先生の雰囲気もいつもと違うような気がした。



「…誕生日」

「え?」

「いや…おめでとうを言ってなかったなって」

「ふふ…ありがとうございます。先生はもうすぐですね」

「んー。このくらいになると誕生日とか気にしなくてね」

「ケーキ、焼きましょうか?」

「いいよ、手間かかるでしょ」


まただ、突き放されているように感じるのは気のせいだろうか。


静かに車が止まった。

家まであっという間だ。

もう少し、一緒にいたい。


「着いたよ」

「もう少し…」

「由姫ちゃん…?」

「もう少し、一緒にいたいです」

「何言ってるの」

「先生…」

「…駄目だよ」


わかってる。

わかってるけど気持ちが溢れて止まらない。


「遅くなるから。明日も学校でしょ」

「いや…」

「由姫ちゃん!」

「好き…先生…」


ひゅっと息を飲んだ音が聞こえた。


「先生が好きなの…」


言ってしまった。

もう後戻りは出来ない。

長い沈黙の後、先生が絞り出すような声で言った。


「由姫ちゃんは生徒だよ。それ以上でもそれ以下でもない」


わかってたのに。

胸がズキズキと痛んで、涙が溢れる。


「由姫ちゃ…」

「ごめんなさいっ!」


車のドアを開け、外に出た瞬間。


「由姫っ!?」

「お兄ちゃん…!」

「なっなんで泣いてっ…大!?まさかお前!」


先生につかみかかろうとするのを必死で止める。


「違うのっ!違うの…先生は悪くないからっ私がっ先生を困らせたのっ!だから!」

「でも…」

「なんでもっないからっお願い…お兄ちゃん…」

「由姫…」

「先生、ごめんなさい…さっき言ったことは忘れてください…送ってくれてありがとうございましたっ」



マンションに向かって駆け出した。

お兄ちゃんの呼ぶ声が聞こえたけど、もう先生の前にいることすら辛い。



終わった。

終わっちゃった。



私の恋。




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