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秘密の恋  作者: 菊花
本編
14/38

12




先生が家に来なくなった。

年度末に向けて忙しいみたいだ、と兄は言っていた。


学校で会う先生はちょっと違って。

私は物足りなくなる。





「由姫ー帰ろー」

「奈々、今日私図書当番だから」

「あ、そっか。どうする?待ってるー?」

「先帰ってていいよ」

「そう?大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「帰り気をつけてね」

「はいはい」




高校にもなれば図書室を利用する生徒も多くはない。

今日は司書の先生が不在で、貸出ができないからなおさらだった。

返却されてきた本を片付けているとき、慌てたように誰かが入ってきた。



「…先生?」

「っ!!由姫ちゃ…っと」

「どうしたんですか?」

「ちょっと…」


後ろを気にしながら小声で囁く。


「ごめん、匿ってくれない?」

「えぇ…?」


さっと棚の影に隠れた瞬間、3年の女子生徒が2人入ってきた。


「あれぇ?いないねー」

「こっち来たと思ったんだけどなぁ」

「あ、ねぇ!遠野先生来てない?」


匿って、はこれかな…。


「来てないですよ」

「えぇーほんとにー?」

「残念ながら…」

「ちぇー。あともう登校日ないのにー!」


もう少し探そうよ、と2人は出ていってしまった。

3年生の登校日はもうない。

それまでに先生と、という女子生徒は思ったより多いのかもしれない。

はあ、と棚の影から深いため息が聞こえる。


「…先生モテモテですね」

「そうね…」


ややげんなりとした声に振り向く。


「…やっぱり迷惑だったりします?」

「ちょっとね」


…迷惑なんだ。

ずしん、と心が重くなった。

なら、私の気持ちも。



「どうしたの?」

「…はい?」

「最近、元気ない?大丈夫?」

「元気ですよ?そうだ、先生。まだ探されているみたいだから、しばらくここに隠れてればいいですよ。なんなら鍵、かけちゃいます?」

「由姫ちゃん!!」


今まで聞いたことがないような声。

思わずビクッとなった。


「ごめん。鍵は、かけないで。奥にいるよ」

「…分かりました」

「…ありがとう」


先生、怒った?なんで?

すっと奥へ行く背中を黙って見送ることしかできなかった。



閉める時間が近付き、奥にいる先生に恐る恐る声をかける。


「先生、そろそろ閉めるので…」

「あぁ…。もうそんなに経った?」


壁によりかかり本を読む先生が、私の方を向く。

目が離せなくて見つめ合う形になった。

一瞬のことだったはずなのに、妙に長く感じる。

先に目を逸らしたのは先生だった。


「先に出るね」

「はい…」

「そういえば、相方は?」

「今日は先に帰ってます」

「そう…」

「先生…?」

「裏門のカーブミラーのとこ、わかる?」

「え?はい」

「そこで待ってる。送って行くよ」

「え、でも…。」

「暗いし、危ないから。空貴が心配するでしょ」

「…ありがとうございます」

「ん、じゃあまたね」






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