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秘密の恋  作者: 菊花
本編
10/38

8




そっと玄関を開ける。

まだ起きてないかな…?

なるべく音を立てないように台所に入っていく。


お酒を飲んだ次の日だから、パンよりはご飯のほうがいいかと思い、味噌汁、卵焼きと作っていく。


先生、午前中にはって言ってたけどギリギリまで寝てるかな?

起こしたほうがいいかなぁ。

現在9時。

迷う時間だな…。



その時、先生が寝ている部屋からアラーム音が鳴った。

待ってれば起きてくるかな、と思っていたのにアラーム音は止まる気配がなく、鳴り続けている。



「これは起こしたほうがいいよね…」



先生がいる部屋に向かい、ドアを開けてみる。

ピピッピピッと鳴り響く中、布団の山はピクリとも動かない。

どうしようと迷いつつも部屋に入った。



「先生…?」

「うぅーん…」

「先生、アラーム鳴ってますよ。起きてください」

「うん…?」

「とりあえず止めちゃってもいいですか…?」



スマホへ手を伸ばそうとした瞬間。


「えっ!?!由姫ちゃん!?」


がばっと起きた先生と、ふれそうなほど顔が近づく。


「きゃあっ!」

「ごっごめん!!」


お互いにばっと距離を取る。

ちっ近かった…!!


「えっなっなんでっ」

「ごめんなさいっ!アラームがずっと鳴ってて…!」

「あ…」


ピピッピピッとずっと鳴っていたアラームを先生が止める。

静かな部屋を気まずい空気が流れた。


「ごめん、気付かなかった…うるさかったよね?」

「いっいえっ!起きなきゃいけない時間なのかなって…。えっと…ごはん…出来てますから…どうぞ」

「あぁ…うん、ありがとう…」


はっ恥ずかしい。

俯いたまま座っていると、先生がはあーっとため息をついた。


「…由姫ちゃん」

「…はい」

「男が寝てる部屋に入ったらダメだよ」

「え…でも…」

「部屋のドアを叩けばいいし、それでも起きないなら空貴を起こせば良かったでしょう」

「でっでも!先生だし、大丈夫かなって…」

「…そんなの、わかんないでしょ」


腕を引かれ、気が付いたら布団に仰向け転がされる。

私の上には、先生が。

押さえられた手に力を入れたものの、ビクともしない。


「ほら、簡単にこうなる」

「……!!」

「分かった…?」


声が出ない。

ただただコクコクと必死に頷いた。



「女の子なんだから、気を付けて。男には力で敵わないんだから」



先生がさっと起き上がり手を差し出してくれた。

今の今で、その手を取るのに躊躇してしまう。

その様子を見た先生は、自嘲気味に笑った。


「ごめんね」


ぽんっと頭に手が乗せられ撫でられた。

そのまま先生は部屋を出ていってしまう。



ふっと掠めた、先生の匂い。

布団に残る、ぬくもりと。



怖かった、でも。

それ以上に先生と触れたところが熱くて。

心臓が痛いくらい、鳴っていた。







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