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第7話《忍び寄る落ちこぼれの気配》

今日は友達とキャンプに来ております。夜の暇な時間に書き終わりました。ふぅ、頑張った!

 歓迎パーティーの翌日、とある報告が薫の元へと伝わった。


 ユウトがやっと目を覚ましたのである!


 この情報は薫を通じてクラスメイト達にも伝わり、皆でお見舞いに行くことになった。ちなみに健吾は既に退院しており、皆と一緒にいる。



 彼らが病室に到着してドアをノックしようとすると、部屋の中から女の子の朗らかな笑い声が聞こえてきた。


 ──何故あいつの部屋から女の子の笑い声が!?


 華音の目から光が消える。背後に不動明王がいるように見えるのだが、気のせいだろう。


 皆は戸惑いながらも、こそっと扉を開けて中を覗く。するとそこには、思いがけない人物がいた。


 レベッカ王女である。


(な、なにぃっ!?なんで王女がユウトと喋ってるんだよ!ちくしょう!羨ましい……)


(ばかっ!そうじゃないでしょ!でも、こんな所になんで王女様がいらっしゃるのかしら?いけないわ。ダメ王女は八つ裂きね)


(華音ちゃん!?何を言ってるのですか!?というか、皆さん背が高くて全然見えませんよぅ!私にも見せてくださいッ!)


(あ、ばかっ!誰だ押してんのは!?扉が開いちまうだろ!)


(やばいッ!もう耐えられねぇ!!)


「「「「ああああぁぁぁぁ……!!」」」」


 いきなり病室の扉が開き、クラスメイト達がなだれ込んできた。


「うおおおおぉッ!?な、なんだ!?どうしたんだお前ら!」


「きゃあ!!な、何事ですか!?」


 クラスメイト達の斬新すぎる登場にド肝を抜かれたユウトとレベッカ。二人とも目が点になり、口があんぐりと開いている。


「す、すみません皆さん……私が悪いんです……ユウトくんのお見舞いに来たら女の子の声がしたので、こっそり覗いていたらこんなことに……申し訳ありません。」


 地球の誇る残念っ娘、異世界でもやらかした。


「お、おう!大丈夫だせ薫ちゃん!少しびっくりしたけどな!」


「そ、そうですよ!お気にならさず、薫さん。誰にだってミスや失敗はありますから!」


 ユウトはともかく、レベッカの王女スマイルの効果は絶大であった。思わず見とれる薫。金髪碧眼の美女に微笑まれたら、性別に関わらず誰だってこうなってしまうのだ……


「は、はい!頑張りますッ!」


 こぶしを胸の前で握り、グッとガッツポーズをとる薫。一件落着である。



「ところで王女様。どうしてここへいらっしゃったのですか?」


 華音が遠慮がちに尋ねる。先程の殺意は一体どこへ……


「あら、レベッカでいいわよ、華音ちゃん。歳も近いのだし、敬語も必要ないわ!」


「でもそれは失礼ですし……じゃあ、レベッカ様で。……ところで、なんで私の名前をお、覚え……てるの?」


「うんうん。ありがとう!昨日のパーティーで皆さん自己紹介したでしょう?だから全員の顔と名前はもう覚えたわ!」


 なんだと!?クラスメイト達に戦慄が走る。なんという記憶力。小さい頃からの教育の賜物で、一度見たり聞いたりしたものは、すぐに覚えてしまうのだそうだ。あれ?この能力、既視感が……

 しかも彼女、獲得しているスキルは“読心術”と“念話”、そして“言語理解”の三つ。


 読心術を行使すると、人の心が読めるのだという。交渉にもってこいの能力だ。王国の外では異形が蔓延っているため国境を超えることがなかなか出来ず、残念ながら交渉する相手がいないそうだが……

 そして念話。これは地球でいう電話のようなものだ。但し、電話のように通話料金はかからず、電波が圏外になることも無い。王国民全員が持っている訳ではないのだが、とても便利なスキルだ。

 最後に言語理解。なるほど、このスキルのおかげで薫達は異世界人とのコミュニケーションに困らずに済んだのである。このスキルも優れもので、相手の言葉が自動で翻訳されて耳に入ってくるだけでなく、己の発した言葉も自動的に翻訳されて相手に伝わるのだ。したがって、このスキルを獲得すれば異世界生活に困ることは無い。



「それで、ユウトの所にいたのは、かくかくしかじかという理由があってのことなのです」


 レベッカの説明を要約するとこうなる。


 異世界からやってきたユウトという人物が瀕死の怪我を負って、まだ目覚めないらしい。心配だ。

 一日経ってもまだ目覚めない。とても心配だ。よし、病室へ行こう!


 ということである。


「ユウトは、私が病室についた途端に目覚めたのです。彼は私に地球のお話をたくさん聞かせてくれました!本当にたくさんの事を!皆様、ユウトはとても面白い御方ですね!私、感動しました!」


 ユウトをチラチラ見ながらそう力説するレベッカの頬は、紅く染まっている。


 ──まさかッ!?


 小さい頃から蝶よ花よと愛でられて育てられてきたレベッカは、男に対する免疫が皆無である。

 そんな彼女は、どうやらユウトに一目惚れをしてしまったらしい。


 ユウトに突き刺さる数多の視線。苦し紛れの口笛を吹きながら、急に窓を眺めはじめるユウト。


 皆を代表して華音が一歩前に出る。


 不動明王、降臨!!


「わ、ちょっと待てって!俺何にもしてないじゃないか!!」


「知らない!絶対許さないわ!」

「何をだよっ!?」


 ユウトの死期が目前に迫っている!


 しかし、レベッカに救われる。


「ま、待ってください華音!ユウトが居なくなれば、私は耐えられません!だから、どうか……」


 王女にそんなことを言われては、華音も死刑を中止せざるを得ない。


「…………」


 華音の、光の消えた瞳にじっと見つめられて、ユウトの背筋に冷や汗が流れる。



 と、その時。


「ここにいらっしゃいましたか!皆様、訓練の時間です!私に付いてきてください!」


 クリスティーナが病室に駆け込んできた。


「お、やっと訓練の時間だ!みんな行こうぜ!」


「そうね、行きましょう!」


 皆ぞろぞろと出ていく。ユウトを置いて。


「わわわ!みんな待ってくれよ!!ごめんってー!」


 慌ててベッドから降りて靴を履くユウト。


「いってらっしゃい、ユウト。頑張ってくるのですよ!また夕餉(ゆうげ)の場でお会いしましょう!」


 照れたように笑いながらユウトに手を振るレベッカ。

そんな可愛らしい仕草に悶えながらも手を振り返し、


「おう!行ってくる!」


 ユウトは病室を後にした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 訓練は宮殿の外にある闘技場で行われるそうだ。

 一行が入口の門に到着すると、内部から、呪文の詠唱や剣を打ち合う金属音、雄叫びなどが止まることなく聞こえてくる。まるで音の洪水だ。ワクワクが止まらないクラスメイト達。


「さぁ、お入りください。騎士団長がお待ちです!」


 クリスティーナの案内で、人気のない一角へとやってきた。


 そこで待っていたのは、黄金に輝く鎧を身につけた、三十路を過ぎたばかりと思われる男であった。宮殿でよく見かけていた騎士達とは一線を画する、濃密な覇気。


「闘技場へようこそ。諸君の訓練を担当する、テオドレド王国騎士団長のエドワード・アルフォードだ。以後よろしく。」


「「「よろしくお願いします!!!」」」


 体育の鬼教師を思い出したのだろうか、皆、条件反射で一斉に礼をする。騎士団長並の迫力をもつ体育教師って……さすが名門である。


「さて、皆にはまず、己のスキルがなんであるかを知ってもらう。そのためにこれを持ってきた。」


 エドワードが取り出したのは……


 スマホほどの大きさをした、金色の質素な板だった。


「「おぉぉぉぉ…………」」


 クラスメイト達から感嘆の声が漏れる。


「皆が驚くのも無理はない。これは全知全能板(全てを掌握するもの)と呼ばれるものだ。さて、このボードは、お前達の体をスキャンすることによってスキルと職業を示してくれる。この国でスキルや職業を調べることが出来るのはこのボードのみだ。皆の分を用意してあるが、まずは一人ずつ出てきてもらい、ステータスをお互いに理解し合ってもらおうと思う。では、誰から始める?」


「俺が行きます」


名乗りを上げたのはユウト。


「よし、こちらへ」


 ユウトの全身を緑色の光線が照らす。ピコンという電子音と共に光が消えたので、全知全能板の画面を覗く。

すると……


――――――――――――――――――――――――


名前:轟ユウト 

性別:男 

年齢:16歳

職業:研究者

魔力:10

筋力:10

体力:10

敏捷:50

通常スキル:言語理解

特殊スキル:学習


――――――――――――――――――――――――


 なんだかゲームキャラクターのステータスのようである。


「ふむ、この世界の人間の各ステータス平均値は、約10だ。お前達も同じくらいのようだな。ユウト、お前は敏捷地が特に優れているようだな。それに、これは……特殊スキルじゃないか。素晴らしい。しかし、学習、だと?聞いたことがないな。調べてみよう。」


 画面の“学習”の部分をタップする。


――――――――――――――――――――――――


スキル名:学習

能力:完全記憶。己の知覚した全ての物事を記憶し、決して忘れることがない。


――――――――――――――――――――――――


「ほぅ、戦闘スキルではないが素晴らしい能力だ。精進しろよ。」

「はい!ありがとうございます!!」

騎士団長からのまさかの褒め言葉に照れるユウト。やはり、特殊スキルは珍しいのだろう。


「では、次。」


「俺が行くぜ。」

今度は健吾が進みでる。


スキャンが終了すると……


――――――――――――――――――――――――


名前:剛臣健吾

性別:男

年齢:17歳

職業:拳闘士

魔力:200

筋力:200

体力:200

俊敏:200

通常スキル:不屈の闘志・剛力・打撃強化・物理耐性・知覚速度2倍・魔力感知・言語理解・念話【+思念伝達】


――――――――――――――――――――――――


 ……チートであった。


「こ、これは素晴らしい……全てのステータスにおいて並の上位騎士を超えておるぞ。そしてなんというスキルの多さだ。攻撃特化の職業だな。拳闘士とは……王国にも数人しかおらぬぞ。」


 健吾のあまりの強さに唖然とするエドワード。


(俺、もしかしてめちゃくちゃザコいんじゃ……)


 先程の優越感も吹き飛び、身体中から嫌な汗が噴き出るユウト。

 そして、その予感は当たることになる。


 ちなみに華音のスキルと職業は、


――――――――――――――――――――――――


名前:柳川華音

性別:女

年齢:17歳

職業:予言者

魔力:300

筋力:100

体力:100

敏捷:100

通常スキル:未来予知・魔力増幅・魔力耐性・魔力感知・言語理解・思念伝達


――――――――――――――――――――――――


 健吾ほどの強さではなかったが、予言者とは、職業がなかなかチートである。


 エドワードさん、驚きのあまり今にも倒れそうだ。


 ちなみに、各ステータスは自らの努力や訓練次第で成長することが可能らしい。

 スキルは、念話は会話のみだが、思念伝達はイメージを相手に送ることも可能になる、というように、派生スキルとして進化したりするらしい。また、スキル自体が進化することも稀にあるそうだ。


 その後もクラスメイト達がスキャンされ、彼らのチート級の能力が次々と暴露されることとなった。


 そしてこの日を境に、ユウトとクラスメイト達の間に軋轢が生まれることになる。

やっとクラスメイト達のスキル&職業を明かすことが出来ました。いやぁ、皆さん強いですね……

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