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第13話《危機一髪!空前絶後の逃亡劇》

ブクマ44人達成!嬉しい限りです!

 ユウトが転移する数秒前の事である。


 前線で戦い続けるクラスメイト達を援護するため奮戦していた華音に、スキル【未来予知】がユウトの危機を知らせた。

 彼女の脳内でとある映像が再生される。


 映し出されたのは……


 一体の異形に飛びかかられ、かろうじで避けたものの体勢を崩して転倒するユウトの姿。


 映像は続く……


 ユウトは慌てて体勢を立て直す。しかしその直後、あたかもユウトの隙を狙ったかのように放たれた風属性魔法が、彼の足元で発動した。

 凄まじい風圧が生じてあらゆる物を吹き飛ばす。ユウトも例外ではない。抵抗することさえ出来ずに宙を舞う。

 後衛部隊をも飛び越えたユウトは、そのまま巨大な魔法陣へと背中から突っ込んだ。

 背中がそれに触れた瞬間、ユウトの全身が赤黒いオーラに包まれる。そして瞬きする間もなく彼は姿を消した。



 この映像の意味を即座に理解した華音は、


「皆、ユウトが危ないわ!あいつを守って!!」


 そう叫んだが、時すでに遅し。もう取り返しのつかない所まで事態は進行していた。


 直後、ユウトは転移してしまった。


 皆、クラスメイトの突然の雲隠れに唖然となる。

 

「ユウト……あぁ……ああああああ!!!」


 華音の悲鳴を発端に、広間に恐慌の嵐が吹き荒れる。


「ば、馬鹿野郎!お前まで行かせるわけには行かないッ!!」


 転移魔法陣に飛び込もうとする華音を、健吾が必死に羽交い締めにする。


「離して!私あいつと約束したんだから!あいつが傷付いたら私が治すって、これからもずっと一緒にいるって、約束したんだからぁぁぁ…………!!!」


 身を切り裂くような悲痛な叫びに誰も彼もがパニックを起こし、滅茶苦茶に魔法をかけ始める。陣形も何もあったもんじゃない。


 このままでは有利だった戦闘も不利に転じ、死者が続出するだろう。スペックの高さゆえに瀕死の傷を免れているが、それも時間の問題だ。

 そう判断したエドワードは、クラスメイト達に喝を入れる。


「気を引き締めろ!まだ戦いは終わっていない!ユウトの事はひとまず忘れて己の命を第一に考えろ!!」


 しかし混乱している彼らの耳にその声が届くはずもなく……


 皆を落ち着かせるのが先決か。残りの魔力量が心配だが、仕方あるまい。


「【聖絶】!最大展開!」


 白金のオーラが異形達を広間の壁へと追いやる。

 聖なる盾は何であっても通さない。異形の叫び声もしかり。


 聖絶内は静寂に包まれる。

 唯一聞こえてくるのは、体力を使い切って座り込むクラスメイト達の荒い息遣い。目は諦めと絶望に染まっている。


 そんな彼らを見てエドワードはため息をつくと、


「落ち着け馬鹿者共。ユウトは転移しただけだ、死んだ訳では無い!華音、ほかの皆も。ユウトを助けたいのならまずはお前達がこの戦いを生き延びろ!守護者たるこの俺がついているんだ、何を恐ることがある?」


 そう問い掛ける。


 寂寂(じゃくじゃく)たる空間に響く彼の声は力強く、不思議と耳に心地よい。

 エドワードの頼もしい言葉に、生徒達の沈んでいた心が復活する。


「華音、団長の言う通りだ。ユウトは俺達で必ず探し出そう。だから、まずはここを乗り越えるんだ!」

「う、うん……うん!そうね!あいつが助けを待ってるのに、私達が死んじゃあ意味が無いわ!よーし、皆、行くわよ!」


「「「「「おおおおおおおお!!!」」」」」


全身に(みなぎ)るエネルギー。頭の中をリセットして立ち上がった彼らの目に、闘志の炎が燃え上がる。


「よし、よく持ち堪えたなお前達。それじゃあ、まずは傷付いた皆を回復させよう。」


 エドワードは、華音をはじめ治癒魔法に適性のある者達に負傷者の回復を指示する。


「俺の魔力はあと少しで底をつく。聖絶を展開するのも限界が近い。

前衛部隊、俺が聖絶を解除したら洞窟方面に突撃しろ。洞窟に到着したら健吾、お前が崩落した岩を砕いて血路を開け!他の者は健吾を死守しろ!異形は俺と後衛部隊が可能な限り足止めする!ではカウントダウンを始めるぞ!」


 3 ── 2 ── 1 ── GO!


 合図と共に、聖なる結界が消失した。


 うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


 雄叫びをあげて突進する前衛部隊に異形が殺到する。

 その時、


「【光芒一閃】!」

「【火焔(かえん)砲】!」

「【爆水翔破(ばくすいしょうは)】!」


 詠唱を終えた後衛部隊が苛烈な魔法を放った。


 聖なる破滅の光線、螺旋を描いて突き進む爆炎、防御不可の水刃が前衛部隊を追い越し、一直線に突き進む。


 消滅し、焼かれ、切り裂かれる異形達。


 積み重なる死体を跳び越え、健吾達は走り続ける。洞窟までの距離は残り十メートルを切った。しかし、人生とは都合の良いようにはできていない。


 途端に輝きが増す魔法陣。

 今までは五分間隔で発生していたはずの異形が、止まることなく湧き出てくる。

 まるで『 お前達は逃がさない』と言わんばかりの量に、流石のクラスメイト達も苦戦を余儀なくされる。


 次第に押され始め、少しずつ洞窟から遠ざかっていく。


「くそっ!あと少しなのに……!!」


 健吾が毒づくが、物量に圧されてはどうしようもない。奴らは倒しても倒しても肉壁となって突っ込んでくるのだから。


 このまま終わってたまるかよ!俺はユウトを助けなきゃいけないんだ!!


 その思いが天に届いたのだろうか。


「みなさーん、どいてください!危ないですよ〜!【電撃】!」


 薫の掛け声と共に雷属性の上級魔法が放たれる。

 範囲内の全ての生物を麻痺させて動きを封じる、()()()()の魔法だ。

 とても便利だが詠唱に時間がかかるので、一対一の戦闘ではまず使われる事は無い。


 ビシャアアン!!バリバリバリッ!!


「アバババババババ!!??」


 そこらかしこでアバババし始めるクラスメイト達。


 ドジっ娘が今度もやらかした。


「ちょ、薫先生!?皆スタン状態になってますけど!?」


 後衛部隊を代表して華音がつっこむ。


「あわわ!やってしまいました!どうしましょう!?」


 両手で頭を抱えて慌てふためく薫。


「もう!しょうがない人ですね!歩花、魔力を貸して私の魔力がもう底をつきかけてる!」

「わ、わかったよ華音ちゃん!!」


 歩花は華音に駆け寄ると、並んで立った。二人は手を繋ぐ。途端に、華音に大量の魔力が流れ込む。


「歩花、合技行くわよ!」

「うん!」


「「愛の源なる天主よ。慈愛の権化たる神の前には全てが平等なり。神の加護がある限り、我らを阻むものなど存在せず!ー【回天(かいてん)】!!」」

 

 状態異常回復魔法が発動し、天井から癒しの光線が降り注ぐ。

 健吾達は薫に凄まじいジト目を向けると、無言で洞窟に向かって走り出す。


「今のうちだ!行け!」


 聖剣による飛ぶ斬撃で迫り来る異形をめった切りにしながら、エドワードが声を張り上げる。


「おう!皆、少し時間をくれ!俺のとっておきの技であの岩を粉砕する!」


 そう言うや否や健吾は目を閉じた。

 真紅の魔力光が全身を覆う。


 麻痺から回復した異形達が襲い掛かってくるが、他のクラスメイト達が必死で迎撃する。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」


 右腕を引いて鳩尾あたりに軽く拳を握り、それを包み込むように左手を添える。


 ズズズズズ……


 オーラが右手に移動し始めた。光が急激に輝きを増す!


「ゼアァァァァ!!!!【波動拳】!!!」


 裂帛の気合いと共に拳を突き出した。

 神速で繰り出された鉄拳から、純粋な魔力の塊が放たれる。


 まさに破壊の権化。岩を粉砕するどころか、洞窟よりも大きい穴を開通させてしまった。


 前衛部隊は洞窟の入口に陣を構え、血路を死守する。


「今だ!団長、皆を連れて来てください!」

「分かった!皆、先に行け!俺が殿(しんがり)を務める!」


 エドワードが一際大きな斬撃を飛ばして異形を薙ぎ払い、その隙に後衛部隊が洞窟に殺到する。


 残るは彼一人のみである。


「皆、これで最後だ。異形を殲滅しろぉ!」


 健吾の号令で放たれる無数の魔法。色とりどりの爆発が、洞窟に向かって走ってくるエドワードの背後を虹色に染める。


「よし、入口を閉じろ!」

 

 ぎりぎり滑り込んだエドワードの合図で健吾が天井にミニ波動拳を放ち、入口は再び閉ざされた。


 異形達の悔し紛れの咆哮をBGMに、彼らはお互いの健闘を称え合いながら出口を目指して走るのであった。

読んでいただきありがとうございます。


序章が終わりました。

第2章からはユウトがメインのお話になります。

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