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敗戦国の精鋭竜騎士 〜添えるは箱庭お嬢様〜  作者: 水無月 純/横澤 青葉
4/10

お前も役に立つもんだな

庭師の手伝いも慣れ、遂に他の仕事に就く日が来た。

庭師は最初とは逆にまるでこの世の終わりのような顔をしていた。

一部の人なんかは、


「終わりだ…これから徹夜が始まる…」


とブツブツ呟いて、気絶する人もいた。

辞めればいいのに。


閑話休題(それはともかく)


明日から俺は正式に仕えることになり、立派な役割が与えられる。

俺の場合は柚木の護衛兼荷物持ちだった。

護衛とは名ばかりで、完全に荷物持ちだ。

決してサボっていた訳ではない。


柚木は週3で出掛けるので、その残りは、柚木の給仕係だ。

柚木からの信頼は全体の頭一つ抜けていることもあって、荷物持ちを任されたのだが、庭師の手伝いよりもハードだ。

重い荷物を大量に持たされる上にそれのキープを求められる。

一日中手伝いをする方がマシだ。

更に、柚木の話(主に愚痴)を聞かなければならない。疲れるったらありゃしない。


慣れない仕事に悪戦苦闘して、リラックス出来るのは、夜の寝る前だけだ。

卵が落ちてきてから、窮屈さは増したが、抱き枕みたいな感覚で不思議な事に安らげる。


そして柚木の付き人も中々慣れてきた頃、寝ていると心臓に強烈な痛みが走った。

心臓に杭を打ち込まれるみたいな痛さだ。

そして卵にヒビが割れている。


─次の瞬間、心臓が言葉では言い表せない程の痛みに襲われ、自分の意識はブラックアウトした。


次に目覚めた時は朝だった。

それも、皆が起きるちょうど5分前。

だが、周りには卵が無かった。

腹の上にはふわふわした体毛の黒いドラゴンがいたが。

一言で言うなら「カラス。」

カラスの雛と比べて、そう遜色無い感じがする。

ただカラスと違うのは、(くちばし)ではなく、立派な牙が生えていると言う事だ。


僥倖な事に、俺が起きてからすぐに目を覚ました。

そして起きてからすぐに


「我はニーズホッグなり。跪け。人間!」


と「可愛らしい」声で言ったのだ。

あまりの自体に頭が働かず、ただただ「は?」と言う事しか言えなかった。


「頭が高い!」


と、羽をパタパタさせながら言っているこの黒い龍は「ニーズホッグ」と言ったな。

最初から名前があるって事はそこそこ強いドラゴンなのか?

と、思案していると、


「おい!朝礼だぞ!」


と、下からお呼びがかかった。


「とりあえず大人しくしてろ!」


とニーズホッグの後頭部に拳骨を食らわせ、急いで部屋を出る。

ニーズホッグは怒り「なんじゃと!?」と言葉と共に口からブレスを吐き出そうとしたが、スッと引っ込め、


「この布団の寝心地は悪くないからな。」


と、布団の上で丸まって夢の世界へと入って行くのであった。


ニーズホッグがぐっすり寝ている時に、望南は柚木の買い物の荷物持ちに来ていた。

そして、掲示板をふと見た。


「国ノ為、其ノ命ヲ捧ゲヨ。兵隊募集中。昇給有」


と、希望制だが、兵役に付ける旨の文が書いてある紙が貼ってあった。

その時に俺に衝撃が起きた。

将来は中々安泰。そして昇給がある。

そして資金も中々貯まった。

ここで兵隊になって、世界を見てみるのも悪くないと思う。

決めた。兵士になろう。

そう決めてからの行動は早かった。

辞表を提出し、奥様と旦那様に土下座をし、なんとか許しをもらえた。


そして、駐屯所へ面接に行った。

質問は年齢や、家業。動機など一般的な物であったが、最後が耳を疑う質問だった。


「ドラゴンを持っているか?」

「えっ?」

「貴様はドラゴンを使役しているか?」


ここで悩んだ。だが、正直に答えていかないと損をするかもしれない。


「はい。使役しております。」

「何属性だ?」

「まだ産まれて間もないので、わかりません。」

「…そうか。」


と、これで面接は終了した。


後日、届いたのは、「竜騎士枠合格」との旨。そして、明日には横浜駐屯地へと赴く様にとの事だった。

隣で寝ているニーズホッグに、「たまにはお前も役に立つもんだな。」と頭を撫で、ふわふわの感覚をいただいた。


そして、柚木には辞めることを伝えてなかったので、伝えに行くと、当然ブチ切れた。

「この恩知らず!」だの、「勝手に死ね!」と罵り、息荒く出ていった。


「まぁ、所詮こんなもんだよな。」


と勝手ながら納得した。

そして運動がてら、庭師の手伝いをし、今日1日は終了した。

そして次の日、出て行く当日だ。

皆に挨拶をし、出て行く途中で、柚木が「待って!」とドタドタ駆けてきた。


「うちも行くんじゃけん!」

「別にいいけど、俺竜騎士枠だから。」

「…え?」

「いや、竜騎士枠。」

「なんで?一般じゃないん!?」

「まぁな。」

「実は…うちも。」

「は?」

「一般はもう締め切ってた件ギリギリ竜騎士枠に滑り込んだんや!」

「え?ドラゴンは?」

「おるで。」


と、柚木は笛を吹くと、真っ赤なドラゴンが悠々と舞い降りてきた。


「うわ…でっけぇ。」


ただこの一言に尽きた。

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