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敗戦国の精鋭竜騎士 〜添えるは箱庭お嬢様〜  作者: 水無月 純/横澤 青葉
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遂にこの時が来たか・アイツの夢が壊われる瞬間

こうして、73番隊は訓練を積んで行く。


ある日はドラゴンに跨り武器を振るい、

時には雨風に吹かれ地上に落ちる日もあった。

だが、訓練の賜物か、元々丈夫なのか、怪我をする者はいなかった。

だが、女性は基本武器を振るうよりもドラゴンを乗りこなし翻弄する事を目的としているため、雨風で揺るぐ者はいなかった。


…当然望南も何度か落ちた。

見事な受け身を取り無事だったが。


こうして時は流れて行く。


そして、隊長の口から遂に待ち侘びた言葉が放たれた。


「1週間後の今日。俺ら73番隊は解散し、それぞれの部隊に配属となる。そして、推薦された者2名が哨戒団(しょうかいだん)への配属権を得られる。」


湧いた。特に田辺が湧いた。


「俺は哨戒団に入るためにここに来たんだ!わかるか?哨戒団は給料が高い上に長い間配属されるとそれなりの立場に立てる!それで俺を見下した奴をぶちのめしてやるんだ!」


ここで、田辺の夢が音をピキピキと立てて崩れる一言が教官から聞こえた。


「田辺。お前はもう無理だぞ。」

「どうして!?」

「ドラゴンから落ちるのが1番多い。更に手を離して武器を扱える様になったのも最後。更に集合が遅い。ならまだしも救えるかもしれなかった。だがお前は最初に私に食ってかかった。挙げ句の果てに来ない日もあった。見ていたぞ。お前だけ訓練量が少ないだろう。人間としての礼儀すら無いお前は兵士でいれるだけ有難いと思え。」


田辺が崩れ落ちた。

よく見たら泣いている。

まぁ仕方ない。これも報いだ。

とは言え、後1週間でこの隊も終わるのか。

自分の配属先がクソみたいな隊で無ければいいのだが。


望南はとある事件が起きる事も(つゆ)知らず。


あの日から5日後。配属先決定日から2日前。

朝からある会議にて。


「米軍が沖縄に攻めてきている。恐らくここの中で1人が出向けばなんとかなるが、死ぬんリスクを負うには少々物足りない。何か案はあるか?城田大将。いや、城田教官。」

「俺の訓練隊から出すのはどうだ。今回はまぁ悪くない。特に霜槻はな。」

「どうしてだ?」

「あいつの使ってるドラゴン。ありゃイフリートじゃねぇ。恐らく神級か冥王級だな。」


会議室内がシーンと静まり返る。


「馬鹿な!そんなクラスになると人間に懐かないぞ?何馬鹿な事言っている。」

「だな。まぁ勘だ。びっくりさせたな。」

「では今回は城田教官の訓練隊を出撃させる。以上!」


と、会議が終わると6人の人中の範囲外の人の形をした化け物達が会議室から出て行く。


─────────────────────


なんだか心臓が熱く(たぎ)る。

今日は特に激しく、目を覚ましてしまったので外へ出、龍舎へ行くとニーズホッグが震えていた。


ここでハッとしてニーズホッグを龍舎から出し、少し開けた所へ行くとニーズホッグの身体はググググと大きくなり、凛々しくも美しいドラゴンと化した。

毛は黒ではなく赤だが。


「遂にこの時が来たか。」

「ふん。このままだと殺しているが我とお前は生命が繋がっている。今はその事に感謝してとっとと寝るんだな。」

「どの口が偉そうに言ってるんだ。」

「なんだと?今の発言死に値するぞ?」

「殺してもいいがお前も死ぬぞ。その上にお前が漏らした写真をばら撒くからな。冥王級のドラゴンが漏らした写真をばら撒くからな?」


ニーズホッグはわっはっはと愉快に笑い出した。


「それでこその望南だ。だが残念だな。お前は名誉の戦死と言うものが出来ないぞ。」

「馬鹿だな。俺は何があっても生き続ける。こんな馬鹿みたいな事で死ぬなんて事しない。」

「俺と繋がってるのに死んだら地獄まで追いかけて魂を食らってやる。」

「やれるもんならな。」


正直今までの俺ならこんなドラゴンは信用出来ないし、兵士なんてならずに隠れて暮らせば住むかもしれないが、俺は段々変化して行っている。

年月を経たからなのか。はたまたあのクソ(ゆずき)のせいなのか…


──────────────────────


「良かったじゃん!」

「おめでとう。」


ニーズホッグが成龍した時に柚木や鐘成隊長から祝いの言葉を言われた。

と。この件以外は何事も無く進むと思いきや、城田教官からの言葉が衝撃的なものだった。


「お前ら。これから沖縄に行ってもらう。男子は迎撃隊。女子は援護隊だ。それでは。」


とだけ言うと城田教官は戻って行った。

代わりに所博士が来て、


「女子。私に付いてらっしゃい。」


と、3体のドラゴンを率いて、1体のドラゴンに乗って来た。


「3…体。」


普通乗る本人にしか従わないのだが、それすらねじ曲げ、更に3体も連れてきた。


「どうでもいいから早く乗って。」


と、足早に連れて行ってしまった。


「では行くか。」


俺と田辺は鐘成隊長に付いていき、沖縄支部まで到着した。


「これからは真の戦いだ。気を抜いたら死ぬぞ。絶対に生きて帰るからな。」

「「はい。」」

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田辺の夢が壊れる瞬間

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