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敗戦国の精鋭竜騎士 〜添えるは箱庭お嬢様〜  作者: 水無月 純/横澤 青葉
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プロローグ 別れ。そして新たな出会い。

「そんな…一体誰が…!?」


まだ幼き少年は目の前のグロテスクな死体が"何なのか"を瞬時に理解した。

それは友達と遊びに行く時に見送ってくれた母だった。

あの鮮血に染まった白いカーディガン。あれは間違いなく母の物だ。

恐る恐る顔を確認したら、あの母の顔だった。

腹部を刺されたのか、苦痛に歪んだ顔をしていた。

それでは父は?


「お父さん!返事をして!」


少年は父を大声で呼んだ。

ドンと言う物音がして、少年は安堵した。


「父さん!一体何があったの!?」


少年は物音のする方へ駆けて行った。

だが、目にしたのは、

─父の書斎が紅い炎を上げ、炎上している光景だった。

その時、不意に背後に気配を感じた。


「おかえり。」


父がいつものにこやかな笑顔で少年を迎え入れた。

ただ、異なる点は複数ある。

まずは、父の衣服に血液が付着している事。

次にその手には、母の物と思われる血液がびっしりと付いた包丁が握られていた。

父の目には…光は写っていなかった。

少年は絶体絶命だった。

前には包丁を握った父。

後ろは燃え盛る炎。


だが、その時、父の後ろから手が伸びてきた。


「逃げて!!」


母が父に抱きつき、それに驚いた父は少年から目を離してしまった。


「私はもう助からない!だからあなたは行きなさい!それに、この家ももうすぐ倒壊する!だから早く逃げて!」


母の悲痛な叫びは少年に届いた。

少年は目から大粒の涙を零し、裏口へと駆けて行った。

黒い煙はまるで1本の木のように真っ直ぐ、太く上がっていたため、近所の人が騒ぎ立てたらしく、人だかりが出来ていた。

だが、人だかりは玄関付近に集中していたため、裏口から出て行く1人の影には気付かなかったのだ。


少年は必死に走った。見知った道を抜け、まだ知らない土地まで走った。


そして肉体は限界を迎えた。

少年の心も身体もズタボロだった。


「人なんて信じる俺が悪いんだ…父さんを信じたから母さんは死んだ…人間なんて信じたら駄目だ…信じられるのは俺だけ。」


少年は固く心に誓った。


「俺は誰も信じない!もう裏切られるのは懲り懲りだ!それなら!誰も信じなければいい!心を許さなければいい!決して幸せなんて思わなければいい!…ただそれだけなんだ。」


近くに公園を見つけた。

そこの公園の水を飲み、顔や、転んで血が出た所を洗った。

そしてベンチで横になり、夜を明かすために寝た。

疲労は相当溜まっていたらしく、1分もせずに寝入った。


────────────────────────────


〜とある車の中の運転席と助手席で〜


「ちょっと待ちんさい。」

「なんでしょう。」

「あっこに居る人。まだうちと同じ位ちゃうんか?」

「はて、何がですかな?」


まだあどけなさが残る顔の少女はため息を付いて少し大声で言った。


「年齢やて。そんくらいわかるじゃろーが。」

「ふむ…よく見たらそうでございますが、どうしたのですか?」

「うち、友達がおらんかったんよ。あんなを友達にするんじゃ!」

「お嬢様。あの様な人を家に入れたら奥様に怒られてしまいます。」

「その時はうちがお母様を説得するけん!」


白髪が生えてきた初老の男は、やれやれと遂に折れたみたいで、


「お嬢様が説得して下さいね。お願いしますよ。」

「わかった!ありがとうね!」


そして運転席から降りた男は、汚れた少年を担いで車の中に寝かせ、運転を再開した。


───────────────────────────



そして、次に少年が目覚めたのは豪華なベッドの上であった。


「ここは?」


とぽつり漏らしたが、部屋には誰もいない。

そして部屋の中を探索していると、バターン!と扉が開き、1人の少女が入ってきた。


「目覚めたんじゃな!」


顔に満面の笑みを浮かべ、突進して来る。

まだ疲労が完全に抜けていない少年は無論それに耐えられるはずが無く、ベッドに押し倒される。

興奮しているのか。ものすごい早口で少年に語りかける。

少年は何を言っているのか理解できずに、


「ちょっと。落ち着いてくれ。」


少年はそう語りかけるも少女の耳には届いていないようだった。

少年はスッと息を吸いこみ、


「落ち着け!」


と大声で語りかけた。

少女はビクッと驚き、悲壮な顔をして尋ねた。


「なんじゃ?」

「とりあえず退いてくれ。」

「わ、わかった。」


少年に覆い被さる様にしていた少女はベッドに腰掛けた。

そして少年は猜疑する様に聞いた。


「名を名乗れ。」

「わかった。うちは如月(きさらぎ)柚木(ゆずき)。うちが名乗ったんじゃけんあんたも名乗りんさいな。」

「…霜槻(しもつき)望南(もなみ)。」

「ふむ…望南か…」


柚木は感慨深く呟いた。

だが望南の質問は止まらない。


「ここはどこだ?」

「うちの家。」

「そうか。では邪魔したな。」


そう言って望南は立ち上がる。

だが柚木は不思議そうな顔をする。


「どうして?」

「そりゃ、いつまでも他人の家に上がってたら悪いしな。」

「その服装で?」


望南は自分の服装を確認した。

自分の身体が纏っているのは豪華だとわかるバスローブ。

こんな物着て行ったら瞬く間に追い剥ぎに合う。


「お前の家って金持ちなのか?」

「うーん、多分そうじゃな。現に貴族じゃけん。」


貴族と言えばこの国の極々一部しかなれない上流階級だ。

貴族と平民の差は凄く、待遇、居住区域の治安等、例を挙げたらキリがない。

だが、貴族から見た平民はまるで家畜。ゴミの様な目で蔑んでいるのは周知の事実。

平民が。それがさらに泥だらけの服を着た薄汚い望南が居たのが発覚したらすぐに殺されるであろう。


「なんで俺は生きてるんだ?」

「それはうちがお母様を説得したけん!」

「…は?」

本日より執筆を開始致します!

よろしくお願いします。

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