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2.はぐれ猫。
バスに乗ったらとても小さい猫がいてギョッとした。
いや、違う。15センチくらいの猫の人形だ。窓枠の上にポツリと置かれている。どんな子が忘れていったのか。きっと大事に手に持っていたんだろう。若草色の座布団に座ったその猫が、バスの振動に倣ってユラユラ揺れた。
お迎えを待っているのかな。はぐれたこと悲しんでいるのかな。サメのようにまん丸で黄色い目が、わたしを通り越して遠くのどこかを見つめている。早く帰れたらいいね。
窓際で熱心に外を眺めていた小さな子どもが、泣きながら今、猫を探している気がして、心の中で呟いた。『大丈夫。あなたは大事にされている』