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ボスゴーレムとの戦闘

『俺、動物や魔物と話せるんです』三巻が11月25日に発売です! Amazonでも予約開始されておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 

「【イグニ・フレア】」


 魔法言語が唱えられたことにより、俺の手から燃え盛る炎が生まれる。


 あの巨大なゴーレムは俺達が近付くことで、敵として認知して迎撃してくるはず。


 ならば最初は不用意に近付くのではなく、遠くから魔法を撃って様子を見てみるのがいいだろう。


 これなら危険も少ないし初級魔法がどれほど効くのかわかるからな。ないとは思うが、もし魔法が当たって反応しなかったら、そのまま遠くから一方的に攻撃すればいい。


 そんな考えの下、俺は右腕を振りかぶって広間の中央に佇む巨大ゴーレムに火球を投げつける。


 燃え盛る火球が巨大なゴーレムの胴体に迫り、火球と巨大ゴーレムの距離が十メートルになった時、巨大ゴーレムの兜の下から無機質な赤い瞳が光った。


 そして、次の瞬間大気を切り裂くような音が響く。


 気が付けば巨大ゴーレムに迫った火球はかき消されており、宙には儚い火の粉が待っていた。


 剣を振り回した巨大ゴーレムは、真っ直ぐに俺達を見据えて地面に大剣を突き刺す。


 それは侵入者である俺達に何人足りとも、ここから先には進ませないという強い意志表示をしているかのようだった。


「やっぱり、そう簡単にはいかないか」


 初級とはいえ、あんな簡単に魔法を潰されてしまうとは。


 あんな重質量の大剣を食らったら一たまりもないだろうな。


 アスマ村の森で戦ったオーガと同じくらい、いや、それ以上の緊張が走る。


 だけど今回は精霊魔法や遠距離からの弓、そして身体能力を活かした攪乱ができる頼もしい相棒がいる。


 フェリスが付いてきてくれて本当に良かった。


「ジェド、わかってるとは思うけど無理はしちゃダメよ?」


「ああ、わかってる。あの巨体相手だから避けに徹するよ。魔法の援護をよろしくね」


 フェリスと軽く言葉を交わして、俺は前に出る。


 俺とゴーレムの距離が詰まっていくごとに、ゴーレムによる威圧感が増していく。


「【イグニ・フレア】」


 そして、ゴーレムの大剣が届かない距離から、目くらましとばかりに火球をゴーレムの顔部分に発射す

 る。


 しかし、巨大ゴーレムはそんなものはお構いなしとばかりに大剣を振りかぶってきた。


 だが、俺は巨大ゴーレムの防御能力からその行動も予想していたので、慌てることなく右へと回避。鈍重な大剣が床を叩き、衝撃波と木屑が飛び散る。


 大剣を躱した俺の方にゴーレムが視線を向ける。


 その瞬間、ゴーレムの肩や顔面、関節部分に矢が当たった。


 間違いなくクリーンヒットしているのだが、硬質な身体をした巨大ゴーレムにはまるで効いておらず、矢は突き刺さることもなく弾かれて虚しく地面に落ちた。


「やっぱり矢じゃ話にならないわね」


 フェリスは矢で相手の視線すら引けないことに気付くと、背負っていた弓と矢筒を放り投げた。


「お願い! 力を貸して風の精霊!」


『任せてー! 今日はエルフの皆のために頑張るから!』


 フェリスの声に呼応して、翡翠色の光をした風精霊が現れた。


 そして、フェリスの魔力を受け取ったのか『発射!』と可愛い声を上げながら風の刃を飛ばす。


 それは通路内にいたゴーレムを倒した時の何倍も魔力が込められているもので、鋭さや速度、魔力の濃度が段違いだ。


 フェリスの援護を確認した俺は巨大ゴーレムの注意を引くために、剣を抜いて踏み込んでいく。


 俺の迎撃への対処を優先したゴーレムは、即座に大剣を持ち上げて斜めに斬り下ろしてきた。


 それを俺はステップで何とか回避。


 同時に、ゴーレムの右肩からキイイィンという甲高い音が響く。風の刃が着弾した音だ。


「何あれ!? 硬すぎるわよ! 結構魔力を込めたのに!」


 ダメージを確認するべくゴーレムの右肩を見てみると……装甲が引っ掛かれたかのように削れているだけであった。


 とても今までのゴーレムのように腕を切断といったような事はできなさそうである。


 今の一撃はそれなりに多い魔力が籠っていただけに、そのゴーレムの硬度に驚くしかない。


「【ラッド・ラジエーション】ッ!」


 ゴーレムから距離を取った俺は、ノーマルゴーレムを打ち抜いて見せた光魔法を打ち出す。


 目の前に収束していた光がゴーレムを打ち抜かんと飛んでいく。


 それをゴーレムが大剣の腹を使うようにしてガード。


 俺はその隙に飛び出して、魔力を通した剣でゴーレムの足を思いっきり斬りつけた。


 まるで硬い巨木を斬りつけたような感触。手に響く重い感触を何とか堪えながら、もう一度剣を振ってから離脱する。


 斬りつけたゴーレムの足には、フェリスの風の刃と同じように浅い十字傷があるだけであった。


 魔力を通せば石だって斬れる父さんの剣でもこれか。これさえ使えば、もう少し大きなダメージを通せるのではないかと思っていたが、予想が甘かったようだ。


 ゴーレムから離れると、俺の放った光魔法を完璧にガードしていたのか、傷一つなかった。


 多分、あの持っている大剣も並の素材ではないのだろう。


 距離をとった俺の下に、フェリスがやってくる。


「ジェドの剣はどうなの?」


「ダメだよ。まったく効果がない」


「……そう。となるともっと高威力の魔法を直接ぶつけるしかなさそうね」


 予想はしていたが、厳しい戦いになりそうだ。




 ◆   ◆   ◆




「【アルド・ランス】」


 魔力を元に形成された土の槍が、ゴーレム目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。


 ゴーレムはそれを大剣で弾き飛ばし、逆に距離をとっている俺の方に突進してきた。


 それは鈍重そうな巨体とは思えないほどの速さで、大剣による振り下ろしへの反応が少し遅れる。


「風の精霊! あの腕を狙って!」


『わかった!』


 その瞬間、フェリスの風の刃がゴーレムの振り上げた腕を阻害するように当たる。振り上げた腕の力があまり伝わらず、それでいて振り下ろす角度を邪魔するような絶妙な場所だ。


 風の刃はゴーレムの腕の振り下ろしに巻き込まれて呆気なく砕け散るが、見事に大剣の軌道を逸らし、反応が遅れた俺でも躱すことができた。


「フェリス、助かったよ! できれば、それでゴーレムの動きを阻害してほしい!」


「簡単に言うけど凄く神経使うのよ!?」


 神経を使う程度で済んでいるのがさすがだ。


 俺も風魔法のを使えるけど、あんな器用な真似はできる気がしないや。


 フェリスと風の精霊に信頼があってこそだな。


「【アルド・ランス】」


 フェリスと風精霊の技術に触発されながらも、俺は再び土魔法を唱える。


 俺の前で槍が二つ形成される。そして、それを目の前にいるゴーレム目がけて勢いよく射出。


 当然ゴーレムの大剣で防ごうとするが、俺は土の槍をコントロールして避けさせることに成功。土の槍がゴーレムの肩にそれぞれ突き刺さる。


 しかし威力が足りなかったらしく、肩に僅かな凹みを作ったのみ。


 先程から初級魔法を使って弱点のような属性がないかと探っているが、特にそれらしいものはないようだ。風、光、土、火、水、闇といったものを試してみたが、全てが同じような結果に終わっている。


「特に弱点になる属性はなさそうだよ!」


「わかった。なら予定通りに高威力の魔法を撃つのみね! 風の精霊よ!」


 俺が一度後退してフェリスに情報を伝えると、彼女は勢いよく腕を突き出す。


 すると、翡翠色の光をした精霊達が集まって腕の近くをまわり始めた。腕の辺りを中心にして一気に風が吹き荒れる。


 それって泉で俺を吹き飛ばしたやつだよね? と思ったが違った。


 フェリスの前で吹き荒れる風はヒュンヒュンと空気を切り裂くような音を発している。


『魔力がいっぱい! いつもよりすごいのいくよー!』


『うん! ヒューんって切り裂くの!』


 フェリスから多くの魔力を貰ったのか、精霊達が嬉しそうな声を上げて回る。


 恐らく、吹き荒れる風の速度が速すぎて、全てが風の刃になっているのだろう。


 以前は手加減されていたとは……本来の威力を想像すると肝が冷えるな。


 だけど、今はそれが頼もしい。


「行って!」


  フェリスの声を合図に風の精霊達が螺旋状に回ってゴーレムに突き進む。


 さすがに竜巻を斬れるとは思わなかったのか、ゴーレムが大剣の腹で胸元を守るようにして防御態勢をとる。


 やっぱり、あのゴーレムも他と同じく核が胸元にあるのか。あそこだけ重点的に防御するということは、そこに核があるということだろう。


 吹き荒れる暴風は、辺りにある空気を切り裂きながら、地面を削り木片を巻き込みつつゴーレムを呑み込む。


 強烈な風の刃が吹き荒れ、硬質な何かが削られるような嫌な音が響いた。


 暴風に包まれてゴーレムの状況を目視することはできないが、この音から察するに硬い装甲や身体を着実に削っているようだ。


 しばらくの間、固唾を飲んで見守っていると、徐々に風の勢いが止んでいく。


 そして、威力の弱った風をゴーレムが煩わしそうに大剣で押し退けた。


 竜巻から解放されたゴーレムの全身は傷だらけ。あらゆる場所に切り傷がつけられており、俺達が今までに攻撃を与えた場所や、装甲の端などはダメージを受けて削れていた。


 硬質な身体を誇るゴーレムに、初めてまともにダメージを入れられた瞬間である。


『硬い! なにこれ?』


『全然削れない! フェリス! もっと魔力ちょうだい!』


 とはいえ、精霊達はこの結果に大変不満なようで、もっと魔力をよこせとばかりにフェリスに纏わりつく。


「え、えっと怒ってるの? 不満なの? ジェド、精霊達は何て言ってるの?」


「ゴーレムを切り刻みたいから、もっと魔力をちょうだい! ……だって」


『そういうこと!』


 俺の簡潔な通訳に納得したのか、精霊達が頷くように上下に動く。


「ええ? 今以上に!? さすがにそれは無理よ! そんなに魔力は残っていないもの!」


『『ええええー!?』』


 渾身の魔力を投入して発動させた魔法だったらしく、さらに魔力をよこせと言われるて驚愕するフェリス。さすがに魔力が豊富なエルフでも、今以上となると難しいのだろう。


 フェリスが言葉を尽くして魔力がないことを精霊に説明していると、ゴーレムがフェリスに向かって動き出した。


「やばいよ、フェリス。今の攻撃でフェリスが目をつけられたよ」


「う、嘘!?」




明日か明後日にも更新いたします。

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