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四匹のゴブリン

 

 あれから森あるあるで意気投合した俺達はすっかり仲良しになった。


 あれは美味そうな匂いをしている木の実なのにどうして食えないのか、あそこの道は石ころが多くて邪魔だとか色々な事を。つまらない事かもしれないが、結構森って理不尽なんだよ。


『……なるほど、それでこの森にやって来たのか』


「そうそう、それでゴブリン達がどうなっているのか知りたいんだけれど知らない?」


 俺がそう尋ねると、レッドゴングは頭をポリポリと掻いてから腕を組む。


 ゴリラなせいか凄く動作が人間らしい。感情もよく顔に現れるので見ていてちょっと楽しい。


『そうだなー、つい二カ月くらいまではそこらにいたんだけれどな』


 ちょうど俺とゴブリン達が別れた頃ですね。


『何か急に騒ぎ出して、うるさいなあと思っていたらいつの間にかいなくなっていたな。多分奥の方に縄張りでも作っているんじゃないか? 四匹で固まって行動しているゴブリンを前に見たし』


「奥に? それってどっち?」


 俺がどの方角かと質問すると、レッドゴングはある物を指した。


『あの山の方だな』



 ×     ×      ×




 南の森からやや東にある山。


 山と言うよりは崖と言った方が良い気がする。もともとエーテルから東には例の炭鉱といった鉱山のような物が多く存在するので似たような感じになっているのだろうか。


 レッドゴングの指さした山も随分と大きい。


 少し山肌が荒れて穴や、岩が多く見えるが一応は山だ。


 結構傾斜があるせいか、登るのが大変そうだ。


 現在はそこを目指して歩いているのだが、万が一にもゴブリンがここら辺にいたら案内させるなり尋問させる方が手っ取り速いので視線は光らせておく。


『母ちゃん、最近緑色の小さい奴いないね?』


『そうねー、まあお陰で過ごしやすいんだけれど何か不気味ねー』


 と呑気な声で話すオークの親子。


 やはり、まだまだ奥に進まないといないのだろうか。


 レッドゴングによると、ここのゴブリン達はしょっちょう他の魔物や動物から食料を奪おうとちょっかいをかけたりしていたらしい。


 非力なので簡単に追い払われる事が多いそうだが、ゴブリンキングなどの統率者がいれば大いに変貌するとの事。


 ゴブリンキングほどにもなれば、多くの数のゴブリンを意のままに操る事ができるという。


 半年前にも起きた大量発生はそれが原因だとか。


 今回もそうなのでは? と聞いてみた所ゴブリンキングが現れれば、森が殺伐とした雰囲気となるので少なくとも違うのだそうだ。


「はて、そうなればアイツらはどうしているのやら」


 あのゴブリン達の性格からして人間達を襲うという考えに至るとは思えない。


 そんな事を考えるような魔物ならとっくにアスマ村を襲いにいって父さんに斬り捨てられているはずだ。


 オークとオーガとも仲良くしていたし、そんな事は考えていないとは思うのだが……。


 そんな事を考えていると、水の流れる音が聞こえてきた。


 川にでも着いたのだろうか。


 そのまま歩くと、徐々に木が途切れて川が見えた。


 上流から流れ出す川は勢いよく水が流れている。


 水が段差や岩に当たって、ところどころでは水が跳ね上がっている。それは水だけではなく川魚もだ。


 すると上流の段差の上から影が現れた。


 山にも近いのでレッドゴングの言う通り、ゴブリンがこの辺りにいるのではと思い、目を凝らす。


『確かここら辺に……を置いたよな?』


『ああ? もうちょっと下じゃね?』


『おい、お前どこに……たんだよ?』


『多分ここかな? 目印になるように石積んどいたし』


『いや、そんなのすぐに崩れるだろうが……』


 予想通りゴブリンがいた。ギギ達とは違う通常種が四匹。


水の流れる音と遠さのせいでその声はところどころにしか聞こえないので、俺はゴブリン達の会話を聞くためにひっそりと接近する。


 彼ら何かを探すように水の中を調べている。魚でも取って食べる気だろうか。


 しかし、彼ら手にしているのは丸太。あれでは到底魚を獲れるようには思えない。


 思いっきり水にでも叩きつけて魚を跳ね上げさせるのだろうか。


『お! これじゃね!?』


『『『どれどれ?』』』


 一匹のゴブリンが大きな声を上げると、他のゴブリン達がばしゃばしゃと駆け寄った。


 どうやら何かを見つけたらしい。


『違うじゃねえか、それはさっき俺達が置いた奴だろ! 見ろ! 中には何も入ってないじゃないか!』


『全く、お前の目玉は木の実か何かかよ』


『全くその通りだ……いや、俺の目玉が木の実って事じゃないからな? 何も入ってないって事に頷いただけだからな?』


『『『はいはい』』』


『お前の頭が空っぽなのは知っているから』


『違―う!』


 それからは再び水面とにらめっこして散開しだした。


 それをしばらく見守っているうちに一匹のゴブリンが叫び、何かを掲げた。


『あったぞ! これだ! 魚がいっぱい入っているぞ!』


『『『おう! よくやった!』』』


 ゴブリンが掲げた網には多くの魚が入っていた。


 ゴブリンの癖になんと知恵を働かした狩り方を!


 俺が高度な狩りを見て驚愕していると、彼らはこんな事を言った。


『よっしゃあ! これでベルさん達に褒めてもらえるぞ!』


 聞き覚えのある名前を聞いて、溜息をつきたくなってしまったがそれを聞いて納得をした。


 あの人間のような高度な狩りの違和感。


 あれは湖で魚を獲る時に、ゴブリン達の捕り方があまりにも無様だったので教えたやり方だ。


 だってペリカンのおこぼれを食べるようで可哀想だったから。


 恐らくあの網は魔物の素材か木か何かで細かく編み込んだのだろう。


 ゴブリン達は網を担いで満足げに向こう岸の方へと走り去っていく。それはレッドゴングの指差した山。


 レッドゴングの言った事が的中するのでは? と思いつつ、俺はゴブリン達のあとをつけた。


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