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残された人々

 

 スケルトンが住む炭鉱内からエーテルの街へと帰還する頃には、時刻は正午を過ぎていた。


 俺は外での野宿や携帯食糧しか食べていない為にお腹を空かしていた。


 体も砂まみれだしお風呂にも入りたい。


 ちなみにこの世界にもお風呂はある。


 全ての家庭にまでは普及してはいないが、大衆浴場へと向かえば誰でも入浴する事ができる。


 値段は三百ノイズ。この世界の平均価格からすれば結構な値段だ。


 毎日入るとすれば一週間は五日なので、千五百ノイズはかかる事になる。


 さすがに毎日は入らないが、週に三回は入っている。これは日本人故なのだ仕方がない。


 お風呂上がりのお酒とステーキが最高なのがいけないんだと思う。


 ああ、想像したらお腹が空いてきた。


 さっさと宿へと戻って着替えを取り、お風呂へと入ろう。そして早く温かいご飯を食べたい!




 宿へと直行した俺は余分な荷物を置き、それから大衆浴場で汚れを落とした。


 その後冒険者ギルドへと向かい、クエストの達成報告をする。


「おいジェド! お前兎に頭下げていたって本当か!?」


 開口一番がこの言葉である。


 いつも通り、ギルドでたむろしている冒険者達が俺を出迎える。


 もっとこう、クエストどうだった? とか、よく戻って来たなとか色々あると思うのだが何でこの言葉なのだろうか。


 まともに出迎えてくれたのは、木に止まっていたハニーだけなのか?


 とにかく、それは嘘だと否定しておく。


 あれは炭鉱のクエストが急に入ったから、その日の取引は中止だと伝えるように頼んだだけだし。べ、別に頭なんて下げてないし。


「恋人はハニーバードなんだって? そんなに寂しいなら夜の店に行っちまえよ!」


「違うわ! あれはハニーって名前なだけだ!」


「鳥に名前なんて付けちゃって可愛いなあージェドは」


 ジョッキ片手に可笑しそうに笑う冒険者達。


 俺はその冒険者達を潜り抜けて、受付へと向かう。


「ジェドです。クエストの報告に来ました」


「はい、お疲れ様です。今回は残念でしたね」


 俺が報告に来ると、いきなり職員に同情に満ちた笑顔でそう言われた。


「はい?」


「炭鉱内は暗くて、光源が必要になるせいでどうしても片手が塞がってしまうのですから、ソロでは難しかったでしょう。ええ、仕方がないです。それに地形も複雑で有毒ガスが漏れているとの情報もあり、あそこの攻略はまだまだ難しそうですね」


 俺が呆然としている間にツラツラと話し続ける職員。


 ああ、もしかして俺がマナ鉱石のクエストを失敗していると思っているのだろうか。


 押し付けるように行かせておいてちょっと酷い気がする。


「あの……持ってきましたよ? マナ鉱石」


「はい?」


 俺の言葉により、今度は職員さんが間抜けな声を出す。


 それに俺は答えるように、ポーチからゴロゴロとマナ鉱石をカウンターへと乗せる。


「マナ鉱石を採ってこられたんですか!?」


 身を乗りだしながら叫び出す職員の声に反応したのは冒険者達。


「嘘だろ!? あいつ本当にあそこからマナ鉱石かっぱらってきたのかよ!?」


 おいちょっとそれ、俺が盗んできたみたいな言い方はやめてもらいたい。


 採掘してきたと言いなさい。


「マナ鉱石が採れる近くには、かなりの有毒ガスが漏れていたって聞いたが」


 本当にスケルトン達に案内を頼んでいて良かった。一人なら絶対に死んでいたかもしれない。


 絶対もう採掘には行きたくないな。


「少し鑑定してきますね!」


 そう言うと、職員はマナ鉱石を抱えてバタバタと奥に走り出した。


 恐らく、マナ鉱石に詳しい職員に確かめてもらうのだろう。


 そして奥からは「本物だ! マナ鉱石だぞ!」と言うような興奮した声が聞えてくる。


 後ろのテーブルでは騒がしくも「ほら賭け金よこせ!」などと言った怒声や悲鳴が響き渡る。


 程なくすると冒険者達がそれぞれ給仕に注文を頼み、再び騒ぎ出した。


 俺の炭鉱攻略祝いという名目で今日は真っ昼間から、宴会をしてお仕事はお休みするらしい。


 大丈夫なのだろうかここの冒険者達は。


 俺が心の中で心配していると、先程と同じ職員が戻って来た。


「凄いですね全部本物でしたよ。さすがは採集のスペシャリストですね。ジェドさんならきっと採ってこられるだろうと信じておりましたよ? 本当ですよ?」




 ×     ×      ×



 それから俺は報酬を受け取ると、冒険者達に半ば無理やりに宴会へと入れられた。


 主役がいないでどうするとの事だったのだが、それは明らかに口実だ。


 しかし、俺もいい加減にお腹が空いて辛かったので混ざることにした。


 途中で大いに盛り上がったのは俺がスケルトンを三十体以上討伐していた事であった。俺からしたらあれは討伐というより、浄化してあげたという感じなので複雑だったのが、目を丸くして驚く皆の顔は面白かった。


 そして俺は夕方にはへとへとになり宿屋につくなり泥のように眠った。



 それから次の日。


 目的の為にお酒を抑えていたために、朝から頭痛が起こることもなくスッキリと目が覚めた。


 今日はスケルトン達の家族の様子を見に行くのである。


 俺は受け取ったメモを片手に石造りの住宅街を歩く。ここには一階建ての赤い屋根をした建物が多く立ち並んでいる。


 空き地で元気そうにはしゃぐ子供の声。その中に偶然メモと一致する特徴の少年を発見。


 ここら辺に住んでいると聞いたので、恐らくあの子なのではないだろうか。


 そう思い、俺はその少年の名前を呼ぶ。


 すると少年、カール君は不思議そうな顔をして俺の方へと近付いてきた。


「なあに? お兄ちゃん?」


「ちょっと聞きたいことがあってね。カール君のお母さんの名前はアンナさんだよね?」


「うん、そうだよ。お母さんの知り合い?」


 そう問われてどう言えばと迷ったものだが、正直に言った。


「えーと、お母さんじゃなくてお父さんの知り合いかな?」


「そうなんだ! お父さん遠い所にいるってお母さんが言っていたし、戻って来たのかな?」


 目を輝かせて言うカール君のこの言葉には、本気で困った。


 これにはどう答えたものか。


 恐らく、まだ幼いカール君には理解できないと思っての言い方をしているのだろうか。


「お父さんはまだ戻って来れそうにないんだ。その代わりにこれをお母さんに渡して欲しいって言っていたよ」


「本当!? うん! わかった!」


 結局濁した答え方をしてしまったのだが、カール君は特に気にした様子も無く頷いた。


 それから封筒を受け取るカール君に俺は一言尋ねた。


「今は幸せかい?」


「うん! お母さんがいるから!」


 ニッコリと笑うとカール君はお母さんの名を呼びながら元気に走り去っていく。

 そしてその道の先では、女性達が楽しそうに談笑していた。


 それからカール君の声に気が付くと、優しい笑顔を浮かべる。


 恐らくあれがアンナさん。


 メモにはやけに容姿が誇張されて書かれていたが、特徴は合致している。


 愛妻家だと言うのは話を聞いていてすぐに分かったのだが、メモにびっしりと書かなくても。


 あと、体のどこに黒子があるとか書かないでもらいたい。これを俺が確かめられる訳がないだろうに。


 カール君が元気に飛び込んできたのを、優しく受け止めるアンナさん。


 そのまま抱き上げて幸せそうに笑い合う。


 俺はその姿を確認してから、そこから立ち去った。





エマさんの娘などのストーリーは余裕や、要望があれば後で挟もうかなと思います。


これにてスケルトン関係は大体が終了です。次は森かな。

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