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スケルトンの武器は凄いらしい

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!」


 俺は暗闇の前にライトアップされて怖さが倍増した頭蓋骨を見て、悲鳴を上げる。


 ただ頭蓋骨を見るだけでも十分にホラーなのに、ライトアップされて余計不気味に見える。


『んぎゃあああああああああああああああああああああっ!』


 頭蓋骨は大皿の上でカタカタと顎の骨を動かし跳ねると、ロープが勢いよく滑り下へと落ちていった。


 今のは間違いなくスケルトンだと思う。


 俺は落下防止の手すりから身を乗り出すようにして下を眺めると、そこには自分の頭蓋骨を回収している、スケルトンの体がいた。


 どうやら、今のスケルトンは首を外して大皿に置き、器用に体だけを操作してロープを巻き上げてきたようだ。


 確かに頭蓋骨だけを大皿に乗せて上に運べば、上にわざわざ向かわなくても済む。


 何というスケルトンならではのアイディア……。


『どうしたんだよ騒がしいな。坑道内だから叫ぶとうるせえんだよ』


『で、マイクの奴なんだって? また、腕折れたから貸してくれとか言っているんじゃねえか?』


『違えよ! 人間! 人間がいたんだよ!』


『人間? こんな所に?』


『本当だってこの目で見たんだって』


『『いや、お前に目はないだろ』』


『わかっているけど今はそんな事言っている場合じゃなーい!』


 見たところ下には三体のスケルトンしかいないようなので、俺はロープを使って下へと降りる。


 バキッ。


 あ、何か着地する時に踏んだ。


『ああああああああっ! 俺の大腿骨スペアが!』


 すると、一体のスケルトンが顎を大きく上げて叫ぶ。スペアって何だよ。そんなに大事な物をこんな所に置くなよ。


『そんな事より人間じゃん? 冒険者じゃん? 俺達やられるって!』


『だから言っただろうが人間がいるって! お前もスペアは諦めろって。そんなもん奥にまだまだあるだろう!』


『馬鹿野郎! あれほど俺の体にフィットする大腿骨はどこにないんだ。誰にも取られないように近くに置いていたのに!』


 そんな理由があったのか。


 こんな所に置くなとか思ってすまなかった。


『とにかく、冒険者だ! 武器を構えろ!』


『『おっしゃああああっ!』』


 多分さきほどご対面したスケルトンが声を上げて、皆武器を構えだす。


 それは小型鶴嘴、背骨、背骨という想像していた物とは違った武器を構えていた。


 もっとこう錆びた剣とか、盾とか、ボロい鎧を身に纏っているのを想像していたのだが、何か違う。


 いや、まあ崩落に巻き込まれた労働者がベースとしたスケルトンなので当たり前なのかもしれないが……これは突っ込まずにはいられない。


「もっとマシな武器は無いのか?」


『うっせえ! こちとら屈強な炭鉱労働者! そこいらの冒険者には負けねえ体を持ってんだ!』


『『そうだそうだ!』』


 小型の鶴嘴や背骨を肩に担いで、胸を張るスケルトン達。生きていた頃にはさぞ引き締まった筋肉が隆起していたに違いないが、悲しいかな。


 今は寂しくあばら骨が見えるだけである。


「いや、もう骨だけだよね? 筋肉とかないじゃん」


『『『……………………』』』


 胸を張った状態のまま固まるスケルトン達。この場にはそれぞれの得物を取り落とす音だけが悲しく響く。


『う、うう、うっせえ! お前達やっちまうぞ!』


『『おう!』』


 図星を着かれて怒り出したスケルトン達が、獲物を構え直しジリジリと近付いてくる。


「待て! 話せばわかる!」


『問答無用! 俺の大腿骨の恨み!』


 俺の静止の声も虚しく、スケルトンの一体が背骨を手にして躍りかかってきた。


 ちょっと背骨は尖っているから本当に当たると痛そうなんですけれど!


 切断系の武器なのか打撃系の武器なのかはわからない、それに微妙にしなっているような……この武器? のタイプがよくわからない。


 俺はとにかくそれを後ろに下がる事で躱す。


 背骨が地面を強く打ち付けて、砂煙が舞う。


 この密閉されているに等しい坑道内では砂煙が飛び散ることなく、漂い続けている。


 俺はそれを嫌って砂煙の範囲から逃れるようにして移動するが、別のスケルトンがそれを阻む。


『シェアッ!』


 気合の籠った呼気と共に放たれる背骨。


 空気を切り裂くように鋭い一撃。


 俺は砂煙による視界の悪さにより反応が遅れたが、何とか剣で受け止める。


 しかし、それは目の前で急に軌道を変えて俺の顔のすぐ傍を通っていった。


『ちいっ! 外したか……』


「飛び出しギミックだって!?」


『おうよ!』


 スケルトンの背骨怖い! あれはやっぱり立派な武器だった。


 俺がスケルトンの武器の凄さに戦慄していると、鶴嘴を持ったスケルトンが大きくそれを振りかぶる。


『そして俺の鶴嘴には!』


「まさかこれにも仕掛けが!?」


 まさか、これにも何かギミックが!? いや、でも鶴嘴に何を仕掛けるんだよ。


 するとスケルトンの持つ鶴嘴が眩い光を発し出した。


 ま、まさか! 魔法でも付与されているというのだろうか……っ!?


『先端に発光石が付いている! どうだ眩しいだろう!』


「うわー! 眩しくてよく見えない――何て言うと思ったか馬鹿野郎!」


 俺は隙だらけなあばら骨に、思いっ切り回し蹴りを放った。


『どうぇっ!』


 短い悲鳴と共に鶴嘴を持ったスケルトンが壁に叩きつけられる。


 それを見て他の二人のスケルトンが慌てて、そのスケルトンを介抱した。


『ぐ……ぐう……』


『おい、しっかりしろ!』


 俺はそれを眺めながら、スケルトンが取り落とした鶴嘴を拾い上げる。


 確かに鶴嘴の先端には小さな発光石が埋め込まれていて、光輝いていた。


 恐らくは暗い坑道内でも採掘がしやすいように考えられて作られた物であろう。


『か、川が見える。綺麗な川だ』


『駄目だああああっ! 去年それを渡って帰って来なかった奴が大勢いたろ!』


 まるで雪山で眠ろうとしている遭難者のように、顔をペチペチと叩くスケルトン。


 いや、それはそれで渡った奴が正解なのではないだろうか。


 渡ってないからこうしてスケルトンになっているのだし。


『くそ、よくもレンジを! 俺達二人でもやってやるぜ!』


 介抱していたスケルトンなど、必要ないとばかりに捨て置きながら言うスケルトン。


 行動と台詞が全くかみ合っていない気がする。


 というか自分達での数え方は人なんだ。


「とりあえず落ち着けって!」


『へへへ、俺の背骨の錆にしてやるぜ!』


『次こそは当ててやるからな!』


 駄目だ。全く聞いていない。


 スケルトンは嬉々として俺へと襲い掛かる。


「ああもう! しょうがない!【デア・パージ】!」


 俺の声に呼応して、スケルトン達の足元にの地面が光り輝く。


『お?』


『何だこりゃ?』


 そしてそれは瞬く間に光り輝き、スケルトン達を包み込む。


『『んぎょえええええええええええええっ!』』


 光魔法の浄化。これはアンデッド種の魔物に効くとされている呪文だ。


 これは一般の魔法本には記載されておらず、神殿の書物にしか載っていないそうだ。


 オオノキさんの家で学んでおいてよかった。


『か、体が熱い! あまりの熱さに逝ってしまいそうだ……っ!』


『一瞬、女神に会うかと思ったぜ』


 プスプスと煙を上げながら転がりまわるスケルトン達。


 魔力はそんなに込めていない為に完全に浄化はされていない。


 このスケルトンにはマナ鉱石が採掘できる所まで道案内をしてもらいたいのだから。


「ちょっとマナ鉱石の場所しらない?」


『はあ!? 今はそれどころじゃねえよ。お前光魔法使えるとか、神官だったのかよ!』


「いや、使えるけれど冒険者だよ」


『み、水。水をかけてくれ……』


 もう一体は重傷のようだ。放っておこう。


「そんな事よりマナ鉱石の場所」


『知らねえよ!』


 俺は再び浄化の光魔法を唱える。


 すると再びスケルトンの足元が光出す。魔力はさっきよりも多く込めているので一発で消し飛ぶはずだ。


『あわわわわわわわ、知ってる! 知ってるから浄化しないで!』





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