ある日森の中……
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それから俺達はエーテルの街を出てすぐ近くの森へと来ていた。
今回の俺の案内役のハニーバードは、俺の歩く速度に合わせてパタパタと飛んでいる。
「ねえ、鳥って歌うのが好きなの? 群れで集まって歌ったりとかする?」
『歌? どうして俺達が歌なんか歌うんだ?』
「いや、その答えだけでわかったからいいよ」
何となく気になって聞いてみただけなのだが、どうやらアスマ村にいた鳥達が変わっていただけなのだろうか。
少なくてもハニーバードは歌わないらしいな。
「ところで黄金の木の実はどこにあるの?」
『まだまだ先だ。普段はこんなにゆっくりは飛ばないから距離も当てにならないな』
「ところで君、名前は何て言うの?」
『名前? ああ、俺には名前なんかないぞ?』
「あれ? でも名前を持っている鳥もいたけれど?」
少なくとも俺の村にいる動物達はほとんどが名前を持っていた。 人間達から名付けられた名前が気に入らなくて、別の名前を名乗っていた奴もいたけれど。
メスなのにコタローと名付けられた可哀そうな馬もいた。
本人はその名前を名乗らずにメルルと名乗っていたが、誰一人としてその名前を呼ぶものはいなかった。皆面白いからコタロー、コタローちゃんと愛情を込めて呼んでいた。
結局は俺に泣きついてきて、ニーナさんに名前を変えてもらった。
最初は難色を示していたニーナさんだったが、コタローをメルルと呼ぶと元気になった事から改名はなされた。
あの時のメルルという名前を提案したときのニーナさんの微妙な表情は忘れられない。
『まあ親につけてもらったり、自分が名乗ったりする場合もあるな。俺の場合は親が早くに死んだし名前も名乗ってはいないな。必要がないしな』
「……いつも仲間外れにされていて、ぼっちだもんね」
そう、このハニーバードはいつもギルドの近くの木に止まっていたのだ。ぽつりと木の枝に。
楽しそうに飛んでいる仲間はいるというのに、いつもギルドの近くの木で。
さすがに毎日同じ所に止まっていたらこっちだって気になるさ。
『ち、ちちち、違うし! 俺はただ好きで一羽になっていただけだし! べ、別に! 喋れる人間になんて興味なんてなかったし!』
ばさばさと翼を打ち鳴らして、必死に否定する鳥。
おいおい、ツンデレな鳥って需要あるか? しかもオスだぞ?
「はいはい、俺が友達になってやるから。そうだせっかくだから名前を付けてやろうか」
『誰が友達だ! まあ、お前がどうしてもと言うならなってやってもいいし、名前も一応聞いてやろう』
「じゃあ、名前はハニーバードから取ってハニーな!」
うん、名前は単純が一番。
動物達の方が知り合いが多いから、特徴的じゃないと覚えづらいんだよ。
『おい待て! それはたまに広場のベンチで座っているアホそうな男が、女を呼ぶときに使っているものじゃないか?』
「行くぞハニー」
『ちょっと待てえええええええええっ!』
そんな感じでハニーと会話をしながら森を歩く事しばらく。
森は鬱蒼とした雰囲気となり、日の当たる場所も少なくなってきた。
普通の冒険者なら視界が悪くて警戒心を上げるところなのだが、俺の場合は……。
『おいこの樹液舐めてみろよ! 甘いぞ!』
『はあ? 木なんて舐めて何で甘いんだよ? 俺毒キノコ食べちまってから、母ちゃんに変なもん食べるなって言われてるんだけれど』
『いいから舐めてみろよこれ! めちゃくちゃ甘いから! 毒じゃねえって!』
『本当かよ? まあ、お前がそこまで言うなら仕方ねえな……甘え! 何じゃこりゃ!?』
『だろ? おいあんまり取るなよ。俺の分がなくなるだろ』
『ケチケチすんなよ。おっ、ここにある緑色の液体も甘いんじゃねえか? ちょっと舐めてみるか』
『あっ! おいそれは』
『あんぎゃああああああああ! な、ななな、何じゃこれ! 舌がピリッと! そ、それに体も動かねえ!』
『そっちは害虫を撃退するために流す樹液だって父ちゃんが言ってた』
『この俺様が害虫扱いだと!? ちくしょう! また毒かよ!』
なんて風に騒がしくする樹液を舐める、アリクイのような舌の長い動物または魔物。
『腹減ったなー、昆虫でも食うか?』
『あたしは嫌よ。あれドロッとしていて苦手なのよ』
『えー、焼いたらカリッとして美味いぞ?』
『今日は昆虫の気分じゃないのよ。あたし黄金の木の実が食べたい』
『なんて我儘な王女様!? 俺に死んで来いと!? あんな危険な魔物が多い所になんていけないよ』
『頼りないオスねえ……』
左側からも姿は確認できてはいないが、何かの声が。
森の奥にきたせいか、どこからともなく多くの声が聞こえている。
俺はその声の中から、俺達を補足して敵意を持っている奴がいないかだけ確認しておく。
今のところは誰にも補足されていないようだ。
多くの声が入り混じっているが、それだけはわかる。
ハニーが比較的安全な道を案内してくれているだけなのかもしれないが。
一本道の幅が狭くなり曲がりくねるようになってきたところで、ハニーが呟いた。
『そろそろだ。ここらへんにいくつか黄金の木の実が成る木が生えていたはずだ』
「わかったよハニー」
『…………はあ……』
「どうしたんだよ?」
『……何でもない』
変な奴だな。急に溜息なんかついちゃって。
何故か疲れた様子のハニーに構わず俺は茂みを掻き分けた。
そこには緑豊かな植物が沢山群生しており、色鮮やかな木の実をつけていた。
ここだけは日光を遮る高い木々が生えていないので、日当たりもよくポカポカしていて気持ちがいい。
その森のオアシスとも言える光景に軽い感動をしながら、俺は歩き出す。
「あれ? これ薬草に似ているな」
赤い木の実がなる木の下には、掲示板で見た薬草と似た姿形をしていた。
これは薬草ではないのだろうか?
腰を下ろして確認するも、何となく薬草とは違う気がする。
『冒険者の癖にそれも知らんのか。それは上薬草。薬草よりも効果が高いものだ』
そのままだな、おい。
「駆け出し冒険者だから……一応ギルドに持ち帰ったら報酬くれそうだし。摘んでいこう」
俺は辺りに生えている上薬草をポーチに詰める。
全部採ってしまうのは良くないと聞いたので、少しだけ残しておく。
これはいくらで売れるだろうか。
そんな風に上薬草を摘んでいると、後ろから呆れた声がした。
『目的は黄金の木の実なのだろう? これではいつまで立っても進まないぞ』
「はっ、すっかり忘れていた」
『目的の木の実はもう少し先だ。行くぞ』
早く行くぞという風に俺の先を飛んでいくハニー。
俺はそれを慌てて追いかけた。
そして同じような木が並ぶ先にあった、ひときわ大きな樹木。
そこには梨のような形をした黄金色に輝く木の実が成っていた。
黄金色の光が灯るそれは樹木を照らし、神秘的な輝きを放っていた。
そしてその樹木の前には……大きな熊がいた。
「…………」
『あっ……人間だ……』




