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黄金の木の実を探しに!

 

「ごちそう様でした」


 ここは冒険者ギルドに併設された酒場。冒険者ならばボリュームのある食事を安く食べる事ができる新人の懐にも優しいところ。


 どうやら冒険者が倒した魔物の肉や納品した食材を使っているらしい。


 なので、ここには豊富な食材を使った料理が安く提供される。


 しかし、宿で出される料理も美味いのだ。


 それゆえに冒険者達は飯を宿で食べるか、ギルドで食べるか迷う人が多い。交互に食べる人も多いが、毎日ギルドで食べる人もいる。


 やれどこのおばちゃんの飯は美味いだの、あそこの宿の飯はいまいちなどと話し合う冒険者も。ここでは有益な情報がより多く耳に入るために俺はギルドの酒場で食べる事にしている。


 情報収集は冒険者の基本だ。


 どこにどんな魔物がいるのか何があったのかなどと、自分の身を守るためのものとなるのだ。常にアンテナは張っておかないとな。


 ふむふむ、どうやら今日のオススメ食材は蛙肉らしい。今日のクエストが終わったら絶対に食べよう。


 そう決めて、俺は空いた皿をウエイトレスの女性に渡して掲示板へと向かった。


 俺は掲示板へと張られたクエストを眺める。


 すると、中年の冒険者が俺に声をかけてきた。


「おっ、新入り早速クエストを受けるのか?」


「ああ、そうだよ。何がオススメなのかな?」


 遠出する依頼は受けるつもりはない。一応の考えはあるのだが、ここは先輩冒険者の意見を聞いてみよう。


 すると、世話好きな性格なのか丁寧に教えてくれる中年冒険者。


「お前この街に来たばかりなんだろ? なら、近場の採集クエストや雑用をこなして、土地勘をつけるのがオススメだぜ。採集はこの緑色の印が付いた奴な? ちなみに雑用依頼は何も印が付いていない奴だからな」


 と言って笑いながらどっかに行く冒険者。俺はそいつに礼を言って、教えられた緑色のハンコ物が押された紙だけを眺める。




【ポーションを作るために薬草をできるだけ採集してきて欲しい――薬草一つにつき三十ノイズで買い取ります】


【珍味と言われる黄金の木の実を採ってきて欲しい――報酬は木の実一つにつき金貨一枚払う】


【鎮痛剤を作るためにオドの角が必要だ。取って来てくれ。毛皮もあれば買い取る】


【最近めっきりとゴブリンを見かけなくなった。誰か偵察に赴いて欲しい――ギルド長】


 娘が病気で倒れた、癒しの葉を取って来てくれ――などと沢山の採集クエストがある。


 黄金の木の実の採集クエストなんかはとても報酬が高い。ということはそれだけ見つけるのが困難か、周りに危険な魔物がいるという事なのだろう。


 この街の近くにには魔物が少ないとはいえ、森に入るとそれなりに出会うはず。採集依頼だからといって魔物や凶暴な動物と遭遇しないわけはない。


 そりゃ、浅いところなら少ないとは思うが、変な奴には会いたくないなあ。


 隅々まで採集クエストの内容をあらかた頭に入れておく。


 どうやら採集クエストは後で素材をギルドに持ってきても報酬が貰えるらしいからだ。


「……よし、採集に行くか!」


 俺は一枚の貼り紙をはがして受付へと持って行った。




 ×      ×       ×




「ねえ、ちょっと黄金の木の実を探しているんだ。案内してくれない?」


 俺が丁寧に頭を下げる中、鳥は答えた。


『ああ!? またお前かよ? 俺は今忙しいんだ。気安く話かけるな』


 どこが忙しいんだよ! どう見ても木の枝に止まって羽を休めているだけじゃないか!


 俺はちらりと鳥の様子を窺ったが、ただただ遠くを眺めているだけであった。


 なぜ俺がこの鳥に対して丁寧に頼み事をしているかというと、黄金の果実はこの黄色い鳥、ハニーバードが好物としているからである。


 それならこの鳥が、黄金の木の実の成る木の場所を知っているのは当然のこと。


 なので、俺が頭を下げて頼んでいるのだが……この通りだ。


 ここの鳥に通用するかは分からないが、切り札の一つを切ってみるか。


「おっと、こんなところにモチモチの白パンが」


『すぐにそれを床に置いて、両手を上げろ! 後ろを向け!』


 俺の高々と掲げた白パンを見て血相を変える鳥。黄色い羽を大きく広げて大声でまくしたてる。


 なんで俺が両手を上げなきゃいかんのだ。


 と心の中で思いつつも、素直に従っておく。


 すると道を歩く人々から俺へと奇異の視線が突き刺さる。


 そりゃそうだ、道の端とはいえ、急に両手を上げている男がいるのだ。おかしくも思う。


 ゆっくりと羽ばたいて下りてきた鳥は、慎重に床に置かれた白パンへと近寄る。


『……よし、動くなよ? ……ふむ、この柔らかさ、モチモチとした弾力。口の中に入れた瞬間に広がる小麦の香り……! 確かに白パンだ。東にある『女神の恵み』とかいう店が撒いている屑パンとは比べ物にならない。どこのお店だ?』


 鳥のそこまでの味覚があったとは知らなかった。


 よっぽど白パンが好きらしいな。


「西の高級商店街にあるパン屋。『黄金の大地』にて販売している白パンさ」


『くっ、あそこは高級商店街であって迂闊に近寄れんのだ。頻繁に店主や衛兵が我々を入れまいと妨害してくるのだ』


 余裕の笑みを浮かべる俺とは反対に、悔しげな声を出す鳥。


 そりゃ、高級商店街に鳥なんかが寄って来たら困るから、皆が追い払うよな。食品を取り扱うところなんだから。


「俺と契約すると毎回白パンが食べられるぞ?」


『いいだろう! 黄金の木の実なんぞはもう食い飽きたのだ。あんな物のどこがいいのやら。白パンの方が旨いではないか』


「じゃあ今から案内してくれる?」


『構わん。それにしてもこの俺が人間と会話し、協力することになるとは』


 何を言っているんだ。お前はそんな大物じゃないだろうが。ただの街にいるハニーバード。そんなに感慨深く呟くほどじゃないだろうに。


「じゃあ行くよ?」


『待ってくれ! せめてこの白パンを食べてからで!』





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