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パーティはゴブリン

今回はキリがいいので少し短めです。

 俺は現在ゴブリン達に正座をさせている。反省と俺の憂さ晴らしのためだ。それにこうでもしないとコイツらとは落ち着いて話しが出来ないからだ。


 目の前にはまさに辛そうな表情で、ちょこんと座る三匹。最初は「何だこれ? 人間って変な座り方するんだな」と軽口を叩いていた三匹だが、開始十分で恐ろしさを感じたらしい。


『なあ、そろそろいいか?』


『何かこの座り方すごくつらいんだけど』


『……あ、なんか足の感覚が』


「駄目だ」


『この鬼!』


『悪魔!』


『ホブゴブリン!』


 一匹が俺に罵声を浴びせると、ここぞとばかりに二匹も続く。何かこの皆で言えば怖くないみたいなところが凄く人間らしい。


 それにしてもまだ俺の事をホブゴブリンと呼ぶか!


 俺は三匹に対して刑を執行する。ほれ、ちくり、ちくり。ちょんちょん。


『ひいっ!?』


『みぎゃあっ!?』


『足がああっ!?』


 瞬く間に床へと崩れ落ちる三匹。その際に足を変に動かしてしまい、さらにもだえ苦しむ。芋虫のようにうねうねと動き回る姿は何とも気持ち悪い。


 でも、楽しい。


『お前鬼か!』


『足の感覚が無えよ!?』


『なんだこれ!? 麻痺か!? 麻痺なのか!?』


 三匹は情けない声を上げ続ける。足が痺れたことがなかったのか? まあこの世界の人間ですら正座なんてものはしないらしいから当たり前か。


 それにしても、息を荒げるゴブリン達の女座りは見ていて美しいものじゃないな。


 俺の視界では、浜辺に打ち上げられた人魚のように足を投げ出した三匹のゴブリン。当然下半身は美しい鱗に覆われた尾ひれでは無く、骨に緑色の皮と少しの肉をのせた程度のほっそりとした足。肌の色も違うし、指も三本、爪は汚そうだしだし美しいとは思えない。


 そんな俺の蔑む視線に気付いたのか、四角い顔をしたゴブリンが足を組み替えてこう言った。


『なんだよ。俺の美脚に見惚れているの――うぎゃああ!』


 手で触れる事さえ汚らわしかったので、適当な木の棒を拾い、足を連続で突いていく。


『『ギギいいいいい!?』』


 そうか、この四角い顔をしたゴブリンの名前はギギというのか。まあ今はそんな事はどうでもいいのだがな。俺はひたすら無心に。緩急をつけて、足全体から指先、足の裏までも容赦なく突く。突く。突く突く。


『ガクガクブクブク』


『やめてあげて! ギギが! ギギが死んでしまう!?』


『ギギー!?』


 糸の切れた人形のように脱力し、びくびくと震えながらギギは泡を吹きだす。


 それを見て体の細いゴブリンが立ち上がろうと身を乗り出す。しかし、体重を足にかけた事により大きな痺れがそいつを襲った。


『ぐはあっ!?』


『ザブ大丈夫かあ!?』


『ちくしょう……足さえ……足さえ動けば』


 ザブとやらに反逆の意思があると判断し、気を失ったギギを放ってそいつの足を突く。


『みぎゃああああああああ!?』


『ザブうううっ!?』


『ま、参り……ました』


 そい言い残すとザブは意識を手放した。


 さて、残っているのは丸っこいゴブリンだけだ。


『ひいいいいいっ!? お助けーー!』


 足が痺れて後ずさるゴブリンを見下ろして俺は言ってやった。


「駄目だ」


 俺はこの世界に来て一番黒い笑みを浮かべた。これはちょっとジュリア姉さんの影響を受けたせいだ。そのせいに決まっている。決してゴブリンを苛めるのが楽しかったとか、そういう訳では無い。無いんだから!




 ×     ×      ×



「という訳で俺は動物や魔物と話せる人間な訳。決してホブゴブリンとかじゃ無いから。わかった?」


『『『わかりました』』』


 一通りのお仕置きをして、何とか説明をする事ができた。お仕置きの後は少しゴブリン達も落ち着いてくれたようだ。


『きっとアイツ、人間の友達いないぜ』


『ああ。あれだけ性格が悪いんだ。間違いない』


『動物しか友達いないんじゃねえの』


 こ、コイツら、俺が気にしている事をばっさりと言いやがった。俺だって友達の一人や二人。カン吉だろ、カープだろ、小鳥だろ。あれ、人間がいない。


 まあいいや。俺はいずれ冒険者になって世界を回るんだから。友達はその時に作ればいい。


「……何か言った?」


『『『何でもございません! ホブ……ジェド様!』』』


「今、ホブって聞こえた」


『『『気のせいであります』』』


 実に納得がいかないが、コイツらに付き合っていたら何日あっても足りない。本題へと話を移す。


「全く。で? 君達がどうしてこんな近くの森にまで来ているの? 普段はもっと奥に住んでいるんでしょ?」


『そうなんだよ。俺達の住処にオークが住み着いてきたんだよ』


「オーク? あの豚みたいな顔をした巨体の?」


『そうそう。突然襲ってきやがった』


『あそこらへんは餌が多かったのに』


 困った様子で耳をしょんぼりとさせる。何かお前ら犬みたいだな。


 そうか。そのオークに住処を追い出され、新たな餌や住む場所を求めてここまで来たってわけか。肝心のオークとやらの魔物が気になる。村を襲うつもりとかだと困ったことになる。開拓も順調だからこの辺りの木も、少し切り倒す事もあるだろう。


 そうなればオークたちは村人達を襲う事になる。


「そのオークはどこに住んでいるの?」


『森の中央の洞窟』


「ここからわりと近い?」


『寄り道しなければ遠くない』


「じゃあ案内してよ」


『『『ええええええっ』』』


 そう頼むとゴブリン達は見るからに嫌そうな顔をする。その顔やめて。すごくムカつくから。


「魔法で快適な住処を作るし、食料も報酬としてあげるから」


『『『任せろ!』』』


『森の探究者たあ、ギギ様の事よ』


『ああ、俺達に任せな! ここら辺は俺達の庭よ!』


『美味い物食わしてやるよ』


 さすがゴブリン達、欲望に忠実だな。


 ところでザブ。お前達は庭どころか住処を追い出されているんだぞ? 少し不安だな。


「それじゃあ、お願い」


『おう。俺達の快適な住処を頼むぜ!』


 そう言うと、ゴブリン達は元気に丸太を振り回して進みだす。


 こうして俺はゴブリンと行動を共にする事になった。



さあ、冒険だ!

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