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外国語は難しい

よろしくお願いします。

 

 俺の名前は和藤明。


 大学三回生の二十歳だ。


 今俺は大学の夏休みを使って、外国へと旅行にきている。


 この日の為にバイトの労働時間、日数を増やしてお金を貯めてきた。


 旅は素晴らしい。


 旅をすると日本では見ることができない景色、人、体験、文化を知ることができる。そんな非日常的な体験をすればするほど自分の価値観を広げてくれる。旅は自分と向き合う時間を与え、考えを深め、己を強くしてくれる。


 小学生の頃に、一度両親に外国に連れて行ってもらった時の感動は今でも忘れなれない。


 残念ながら、英語などの外国語は本当に苦手だったのだが、友人が「何とかなる!」と言っていたので信じることにした。


 それでも多少は英語を勉強したのだが、心は不安でいっぱいである。発音はあっているのだろうか。この言い方で大丈夫なのだろうか。


 見知らぬ土地で、知り合いもいない。それでも俺は英語の会話の基本ノートやマップを手に歩きまくった。


 そして何とか日が傾くまでに、俺はホテルでチェックインをすることができた。


 日本とは異なる造りに軽い興奮を覚えながら、ベッドへと転がり込んだ。


「はあー、もう疲れた。ホテルにたどり着くだけでこんなにも疲れるとは」


 そのまま俺はぐったりとしてしまい寝てしまった。


「はっ!」


 目が覚めると既に時刻は二十時を回っていた。ガイドブックによると、ここのホテルは安い代わりに食事は美味しくないと載っている。


 そうだった、せっかくの外国だから外食すればいいと思ってここにしたのだった。


 幸いこの付近には、美味しい店があるとガイドにも載っているので、俺は手荷物を用意して外へと出かける。


 拙い英語を使って俺は、ホテルの人にガイドブックからおすすめの店を教えて貰った。


 何でもこの店はわかりにくい場所にあるのだが、とても料理が美味しく、名物料理もあるらしい。


 俺はその人の話を何回も聞いてから、その店を目指した。


 辺りは暗く、光は街灯と店の光のみ。日本とは全く異なる建物。窓やドア、置かれている植物、道の様子、上げればきりがないくらいだ。さらには背の高い黒人と白人が様々な服を着て颯爽と歩く。俺はその光景に感動しながらメモを片手に足を進める。


 ホテルの人に書いてもらったメモの通りに進む。階段を上り、角を曲がる。次第に人の姿も減ってきて不安になったのだが、それは事前に言われていたことなのでこのまま信じて進んでみた。


 するとガイドブックと同じ写真の店があった。ホテルの人のメモと看板の文字は同じだ。


「まったく、ガイドブックももう少し細かく書いてくれればいいのに。メモが無かったら絶対たどり着けなかったよ」


 俺は早速、期待を膨らませて店へと入った。



 ×     ×      ×



「うえー、飲みすぎた」


 夜が更ける中、俺は何とか吐き気をこらえながら夜道を歩く。


 お任せで頼んだら結構量が多かった。でも酒も料理も美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまった。


 だけど美味しくて、雰囲気も良かった。他の外国人の客も気さくに話しかけてくれたし。


 また行こう、と心に思い俺はゆっくりと歩き出した。




 帰り道。狭い路地で体格の良い男が二人並んで前を歩いていた。


 特にスキンヘッドの男の歩き方は意気消沈としたもので、下をむいておりどこかその後ろ姿は悲しいオーラを漂わせている。声を聞くともう一人の男が、すごく落ち込んでいるスキンヘッドを励ましているようだ。


 何か落ち込むようなことがあったのであろうか。


 全く知らない人なのだが、あまりにも悲壮なオーラを漂わせているので俺はその男に励ましの言葉を贈ることにした。


「fight!」


 俺は男の隣にかけより、ガッツポーズで「ファイト!」と言った。


 その瞬間、スキンヘッドの男は振り返り怒りの表情を浮かべて俺を殴りとばした。


 何で!?


 俺はスキンヘッドのパンチをもろに顔面へとくらい、吹っ飛んだ。


 元から体格の細い俺は面白いように吹き飛び、そして最後、何か硬いものに頭を強く打ち付けた。


 その瞬間、身体全体から何か大切な物が抜けていくような、そんな感じがした後に俺の視界は暗くなってゆく。


 あれ? ……俺、殴られた? 何で?


 突然の出来事に頭がついていかない。


 ああ、何か起き上がれないし、それに寒い。


 そして俺は考えることすらもできなくなった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ファイトって言っちゃったんですね。ドンマイ。
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