星の降る日(作:奈月ねこ)
地球上の人々は、ドーム型のバリアを張られた中で生活していた。遥か彼方の宇宙で大きな星が爆発し、その影響で地球の周りの星の欠片が地球上に落下してくるようになったのだ。ほんの小さな欠片でも、地球上に落ちれば周囲へ及ぼす影響は大きい。そうして星の欠片が落下しても跳ね返せるだけの科学技術が開発され、ドーム型のバリアを作ったのである。
勿論ドーム型のバリアは世界各地に点在している。それらの場所とは通信は出来るものの、出掛けていくのは危険だった。世界は今やひとつとなり、星落下の対策を考えていた。世界それぞれのトップとの会談は勿論ドームの中の会議室で行う。各国のトップは決められた国のドームへと機械で意識を飛ばし、その会議室では3D映像のように各国のトップが集う。
会談で話し合われることは、これからのこと。このまま星の落下が続けば、地球は一つの星として保てないだろうというのが科学者たちの見解だった。各国のトップの中には地球を捨てて他の星への移住をとの意見が多かった。
詩織は光輝と付き合っている会社員だ。詩織は祖母から聞いていた。昔は星が流れると、その星へ願い事をしたのだそうだ。今ではドームの中から毎日のように星が流れていくのが見える。そんな光景を見ても祖母は、その星たちへ手を合わせているのだった。
『星に願いを』
今となっては大昔の曲を、詩織は祖母の影響からよく聴いていた。
そんなとき、世界会議で別の星への移住が決定した。以前から目ぼしい星へコロニーを建設していたのだ。
世界中の人々はこの決定を粛々と受け止めた。しかし、地球への想いがないわけではない。どうしても地球を捨てなければならないのか。世界中の人々は、心で自分たちの故郷である美しかった地球を想いながらも、地球の寿命が永くないことを悟っていた。
そして、そのコロニーがある星が発表された。全員が同じコロニーに行ける訳ではない。コロニーの大きさから分散して行かなければいけないのだ。
もちろん詩織と光輝は同じコロニーを希望した。しかしまだ結婚もしていない二人は、別のコロニーへと振り分けられてしまった。
大急ぎでのコロニーへの移転が始まる。二人は結婚どころではなくなってしまった。
そしてコロニーへの出発の日。光輝は詩織へ小さな箱を渡した。
「詩織、コロニー間での行き来が出来ない訳じゃない。必ず迎えに行くから」
「……うん、待ってる」
コロニーに到着して、荷物整理も終わり、詩織は人心地ついた。
そうだ!光輝からもらった箱は?
詩織は引き出しにしまった箱を取り出した。箱を開けてみると、また箱が現れた。綺麗な銀色の四角い箱。蓋を開けても何も入っていない。詩織は祖母にその箱のことを尋ねてみた。
「ああ、オルゴールだね。懐かしいねえ」
これがオルゴール。音楽を聴く器械だと知識としては知っていたが、初めて見るものだった。
「裏のゼンマイを巻いてから蓋を開けて聴くんだよ」
祖母が教えてくれた通り、ゼンマイを巻いてから蓋を開けた。そこからは音楽がぎこちなく流れてきた。
『星に願いを』
詩織の頬を涙が伝った。