ミツリの希望的観測する未来
ミツリは、日々を過ごす中で、一つの事を決めていました。
それは、魔王を倒した後、絶対に人間の国には戻らない、という事でした。
人々の視線から、普通に暮らす事は無理だと早々に諦めていました。
自分の見た目も、力も忌避感しかもたらさないのです。
元の世界に戻る事も、無理だろうと見当をつけていました。
できるかできないか、ではなく、おそらく国王は彼女が魔王を倒した後の事を考えていないだろう、と推測したからでした。
できれば元の世界に帰れたらいいのですが、テンプレにおいては、大抵召喚された勇者は帰れないのです。
魔王を倒した後に、その召喚された国の姫と結婚するか、王様に始末されるかの結末が待ち受けています。
国王も宰相も、魔王を倒した後の褒美の話などしませんでした。
魔術師も、元の世界に帰すなどという話は一言も言いません。
それに、元の世界に帰るには、魔王を倒した後、魔王の玉座の裏にある秘密の通路から、異世界に繋がる魔法陣などを見つけないとならない、というのも異世界召喚のテンプレの一つです。
実際のところ、ミツリは楽観的でした。
魔王を倒せず、そこで死んでしまったらそれで終わりです。
魔王を倒せたら、とりあえずテンプレに従います。
秘密の通路も、異世界への魔法陣もなかったら、魔界とやらで生きれるだけ生きてみるのです。
幸い、【首斬り】の能力は高位の魔物にも通用すると分かっているので、身を守る事はできます。
また、魔界では必ず野宿になるからと、サバイバルの方法も学んでいるので、きっと大丈夫だろう、と考えていたのでした。