『勇者』=『黒の魔女』
少女の名前はミツリ。
年は17歳で、元の世界では学生をしていたと彼女は言いました。
ミツリは、常に無表情で、寡黙な少女でした。
表情を動かしても、眉間にしわを寄せるだけです。
少女は魔王を倒す『勇者』という扱いをされていました。
城の上級の部屋を用意され、専属の護衛騎士と侍女をそれぞれ二人ずつ付けられました。
身分を保証するために、王家の指輪を与えられました。
誰もが羨む最上の待遇です。
しかし、実際はミツリは城の人々から疎まれていました。
魔を象徴する黒い髪と眼、そして常にある無表情が、どうしても人々に忌避感を抱かせたからでした。
加えて、ミツリは彼女が持っていた能力の故に、もはや畏れられていました。
魔王を倒せる存在として召喚されたミツリ。
彼女は【首斬り】の力を持っていました。
元の世界ではただの学生だった少女です。
戦う方法など知らず、魔力のない彼女は魔術を使う事もできません。
そんな彼女が唯一持っていたーー正確には召喚された時に得た力ーーそれが【首斬り】の能力でした。
それはとても単純で、そして絶対的な力でした。
【首斬り】の力の練習には、生け捕りにされた魔物が使われました。
檻に入っている魔物をミツリは見つめます。
そして、ただ呟くのです。
"死すべき者に憐れみを
仇なす者に死を"
言葉が終わった瞬間、魔物の首がコロリと落ちます。
まるでギロチンにかけられたように、真っ平らな切断面をさらしながら、魔物の首が斬れるのです。
しかも、対象が視認できていれば、何匹だろうと、またどんな物理的、魔術的な壁も無視するのです。
そんな異質な力と、魔物の首を落とす時にも平然とした彼女を、人々は『黒の魔女』と呼んで畏れていたのでした。




