2対1=圧倒的不利
一方、広間に闇が落ちて、魔術師たち三人は動揺しました。
その中で、魔術師はいち早く気を立て直して、ミツリの【隷属の印】に返事をするよう命令しました。
しかし、魔力は流れず、魔術は発動しませんでした。
魔術師はひどく焦ります。
彼の肩を後ろから叩く者がいました。
振り向けば、近衛騎士団長が厳しい表情で立っています。
その斜め後ろには、眉をひそめた高位神官が、睨むように魔術師を見つめていました。
今のは何かと高位神官が問いかけます。
魔術師は、国王の懸念とミツリに施した【隷属の印】について話しました。
これは国王、宰相、魔術師の三人の極秘の事で、近衛騎士団長と高位神官には知らされていませんでした。
近衛騎士団長は、ミツリを畏れていたので、それは当然の事だと納得しました。
しかし、高位神官は激怒しました。
彼は、ミツリに『勇者』に対する敬意を持って、けれどもまだか弱い少女として接していたのです。
そんな彼女を奴隷と同等に貶める行為に、彼は全身が沸騰するような怒りを感じました。
けれどそれを押し込めて、高位神官はミツリがどこにいるのか尋ねました。
魔術が発動しないため、どこか離れた場所にいるのかもしれないと、魔術師は答えます。
近衛騎士団長も、自分たち三人以外の気配がない、と付け加えます。
三人は色々と話し合い、しばし暗闇を歩き回り、壁や何かにぶつかる事もない事から、異空間に閉じ込められたのかもしれない、と魔術師は仮定しました。
そして、おそらく魔王が死んだ時にかけた魔法だろうとも言い、対処のしようがないので、じっとしておこうという結論に落ち着きました。
魔術師も近衛騎士団長も、ミツリの事など忘れたように現状の解決を模索していて、彼女の身を案じていたのは、高位神官だけでした。