表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作2-1  作者: 智枝 理子
Ⅰ.騎士と紅の瞳の新入生
PR
9/53

07 王国暦五九八年 コンセル 二十五日

 朝のホームルームに。

 会長が来た。

「おはよう、諸君」

 本当に、次の日に来るなんて。

「私の問題を解いてくれるという話しだったな。今日はこの問題が解けるまで、教室からの出入りを禁止する。もちろん、テストを拒否しても構わないが、一度教室から出た者の再入室は禁じる。あぁ。この教室にあるものは、何を使っても構わない。昼を過ぎるようなら、食事は教室でとれるように準備しよう。説明は以上。…テストに参加しない者は?」

 誰も、何も言わない。

「そうか。では、はじめよう」

 会長が、黒板に向かって。

 テストの問題を、書く。

 …え?

 あれは、古代語。

 すぐに、ノートに翻訳を書く。

 だめだ。わからない。この言葉の意味。

 わからないものはそのまま書いて、翻訳を続ける。

 周りに皆が集まってくる。

「これ。人の名前じゃないかなぁ」

 人の名前?

「歴史上の人ぉ。教科書に載ってるかもぉ」

「おい、最初の問題消されるぞ。誰か写しておけ!」

「こっちで写してるわ」

 これ。

 まさか。

「…そういうことか」

 シャルロが呟く。

 これ。訳すのに手間取るから、俺は全然、問題を解けない。

 だって、古代語、俺以外は誰もわからないんだろ?

「どうしたの?シャルロ」

「ユリア、一問目解けるか?」

「んー…。この人誰だっけなぁ。イエイツ?」

「それ、騎士じゃないか?」

「じゃ、カミーユ。手伝ってぇ」

「まじかよ」

「次は?」

 まだ訳し終わってないのに。

 一問目を途中にして、二問目を訳す。

 たぶん、数学だ。

「数学か」

「数学なら任せろ」

「俺も手伝うぜ」

 これは全部訳せそうだ。


「全員、手を止めろ!」

 先生の大声に、顔を上げる。

「いいか。ランチの時間は手を休めろ。作業は禁止だ」

「えー」

「食事はきちんととるように!」

「はーい」

 頭を机の上に落とす。

 疲れた…。

 まだ、終わってない訳があるのに。

「大丈夫か?エルロック」

「わぁ、ケーキまであるわ」

「やった。午後も捗るわね」

「あの会長、本気出し過ぎだろ」

「一問目はどうなった?」

「あぁ?あんなもん、とっくの昔に終わらせたよ。要は現在の騎士の階級制度についてまとめたのは誰で、その制度を詳しく述べよって問題だ。これ間違えたら、親父に何言われるかわからないからな」

 エグドラは騎士の家系だから…。

「そっちはどうなんだよ」

「法律の問題なら、もうすぐ終わる。終わったら、錬金術の問題に取り掛かるぞ」

 シュヴァインは法律系に詳しい家系。

「アレクシス様が選んだ本、借りといて良かったな」

「エルロック。いつまでも死んでないで、ちゃんと食べろ」

 体を起こす。

 あ。ケーキ。

「なんで、それから食うんだよ」

 頭を使ったら、甘いものが欲しくなる。

 ん。美味い。


 午後。

 最後の一問を残して、全部訳し終わった。

 最後の一問は、長文の翻訳。

 サンドリヨンの物語。

 ラングリオンの東を砂漠に変えた魔女。

 聞いたことがある気がする。

 ラングリオンの東に広がる砂漠は、もともと緑豊かな大地だったけれど、炎の大精霊が七日七晩かけて焼き尽くして砂漠になったって。

 砂漠には、その大精霊を祀った祭壇がある。

 あれ?大精霊が入ってる棺だったかな。

 この物語。

 この魔女。

 最後、どうなるんだろう。


「終わったー!」

「こっちも、なんとか…」

「自信ないな。もう一度確認しておこう」

「私のも見てー」

 できた。

「お。終わったか」

 頷く。

 シャルロがみんなの解答をまとめて、先生に提出する。

「おー。ご苦労さん。会長に提出してくるから、お前らはこのまま解散して良いぞ」

 そういえば、先生、ずっと教室に居たんだな。

 疲れた…。

 左手が釣りそうだ。

「お疲れ様。本当に古代語得意なのね」

 マリアンヌ。

「今度図書館のあれ、翻訳してもらおうかなぁ」

「あぁ、あの本。ちょっと読みたいよね」

 ええと…。

 ノートの新しいページに、名前を書き出す。

 全部で二十人。

「何やってるの?エルロック」

 名前はわかるけど、顔がわからない。

 そう書くと、目の前の三人組が笑う。

「私はセリーヌよ」

 セリーヌが、自分の名前の横に、よろしくね、と書く。

「あ、あたしもぉ」

 ユリアがセリーヌのペンをとって、文字を書く。

 よろしくねぇ。その横に、ハート。

「はい」

「何書こうかしら」

 マリアンヌが名前の横に、書く。

 マリーって呼んでね。

 そしてペンを別の誰かに渡す。

 一人一人。名前と顔が一致して行く。

「あ、一人足りないぜ、これ」

 あれ?全部で二十人だろ?

 カミーユが、もう一人名前を書く。

 あ。

 エルロック・クラニス。

「ほら、お前も何か書けよ」

 カミーユからペンを受け取る。

 何を書こう。

「悩むことか?エルロック」

 それにしよう。

 名前の横に、文字を書く。


 呼び方。エルで良いよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ