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旧作2-1  作者: 智枝 理子
Ⅰ.騎士と紅の瞳の新入生
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05 王国暦五九八年 コンセル 二十三日

 アレクと一緒に、フラーダリーの家に帰る。

「おかえり、アレク、エル」

 本当は、休日も養成所で過ごしても良いんだけど。

 用紙を見せる。

「あぁ、そうだね。後期から室内楽が始まるね。バイオリンをやりたいのかい」

 頷く。

「私もバイオリンをやっていたんだ。待っていて」

 フラーダリーがそう言って、バイオリンを取りに行く。

 アレクがバイオリンを選んだのも、フラーダリーの影響?

「私は小さいころからバイオリンをやっていたんだよ。姉上と同じなのは偶然かな」

 そっか。

「エル、何日か前に、テストを受けなかったかい」

 テスト?って、シャルロが持って来た奴か?

「覚えがあるようだね」

 頷く。

「全く。誰がこんな悪戯を…」

 シャルロが渡してきたんだけど。言わない方が良いだろう。

「あれはね、私が受けたテストと同じものなんだよ」

 同じ?何が?

「エルは優秀だ。もし、望めば私と同じクラスに入れるよ」

 どういう意味だ?

「休み明けに教師から言われるだろう。考えておくと良い」

 アレクと同じクラス?それって、中等部の一年?

 初等部をやらなくて良い?

「私は、勧めないけれどね」

 中等部に入るメリット。

 たぶん、今より高度な授業が受けられる。

 でも、ついていける自信がない。

 自分の持っている知識にむらがあるのは十分わかってる。

 アレクと同じレベルには到達できていないことぐらい。

「これが私のバイオリン」

 フラーダリーがバイオリンを持ってくる。

 この前、アレクが使ってたのと何が違うんだろう。

「エルのバイオリンも買いに行かないとね」

 バイオリンを、買う?

 楽器って、買わなくちゃいけないものなのか。

 確か、室内楽で使う楽器って、すごく高いはず。

 首を、横に振る。

「エル?」

 どうしよう。

「姉上、バイオリンを借りても?」

「いいよ」

 アレクが、俺にバイオリンを持たせる。

「音を鳴らしてみよう。バイオリンと弓を持って。…しっかり顎を乗せて、固定して」

 左手でバイオリンを、右手でバイオリンの弓を持つ。

 アレクがやっていたように、バイオリンの弦に弓を当てて…。

 酷い音だ。

 アレクが笑う。

「一緒にやってみよう」

 アレクが弓を持つ。

 すると、綺麗な音が出る。

 ん…。こうかな。

「良いね。その調子だよ」

「すごいね、エル」

 あ、楽しい。


「そろそろ休憩にして、お菓子でも食べたらどうだい」

 フラーダリーが、テーブルにお菓子とコーヒーを並べる。

 アレクと一緒に席について、サブレを食べる。

 美味しい。

「姉上、このバイオリンをエルに貸すことは出来ますか」

「あぁ、構わないよ」

「慣れた楽器の方が勉強しやすいでしょう。エルも、構わないね」

 頷く。

 良かった。買わせることにならなくて。

「何か欲しいものがあったら言うんだよ」

 欲しいものなんてない。

 十分、もらってる。

 サブレも美味しいし、ショコラだって美味しい。

「アレクは城に帰らなくて良いのかい」

「月に一度は顔を出していますよ」

「家の周りに陛下の近衛騎士が居るのは知っているかい?」

「これ以上、気を遣わなくても良いのに」

 やっぱり、一国の王子がふらふらしてるのってまずいんだろう。

「あまり陛下を心配させないようにね」

「それにはお答えしかねます」

「困った王子だね。皇太子になるかもしれないのだから、もう少し自覚を持つように」

 皇太子?

 アレクは第二王子なのに?

「エルは知らないのかな。ラングリオンの王位継承制度」

 知らない。

「この国に伝わる聖剣の存在は知っているかい」

 少しなら聞いたことがある。

 初代国王が持っていたという聖剣。

「聖剣、エイルリオン。その剣に選ばれた者が王位継承権を認められるんだ。私はその聖剣に挑む資格を持つ者。つまり、皇太子候補なんだよ」

 じゃあ、第一王子も皇太子ではなく、皇太子候補?

「この国の王子は成人すると聖剣の儀式を行うんだ。王子が聖剣を掲げて、聖剣がその王子を持ち主と認めた場合のみ、剣の先から花が咲くんだよ。…皇太子が不在の、今の聖剣の持ち主は陛下だ」

 不思議な剣だな。精霊でも宿っているんだろうか。

「皇太子が決まるまでずっと、この儀式は繰り返されるんだ。私の兄はどうなるかな」

 ラングリオンの第一王子はフェリックス。

 成人するのはまだ先じゃなかったかな。

 もしフェリックスが選ばれれば、アレクは儀式をしないのか。

「そういえば、エル。実験室で何をやっていたんだい」

 あ。

「実験室?錬金術の授業はまだ先なのに?」

 どうしよう。

 まずいことだったかな。

「あぁ、興味がある事ならいくらでもやったら良いよ。でも、危ないことはしないようにね」

 頷く。

 たぶん、大丈夫だろう。

「友人が出来たようですよ」

「良かった」

 友人?

「カミーユと一緒に居ただろう」

 あれが?

「カミーユ?どこの子かな」

「エグドラ家の二男です」

「あぁ、騎士の。…そうか。今度、連れておいで」

 家に?

 なんで?

「会ってみたい。エルの養成所の話しを聞きたいな」

 話すようなこと、ないと思うけど。

 フラーダリーが望むなら、連れて来よう。



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