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旧作2-1  作者: 智枝 理子
Ⅴ.光の花と贈り物
32/53

02 王国暦六〇〇年 カプリコルヌ 二十九日

 放課後。完成したオルゴールを持ってアレクの部屋の前に立つ。

 居るかな。

『アレクなら部屋に居るぞ』

「他に誰も居ない?」

『一人だ』

「ありがとう」

 良かった。

 扉をノックしようとしたところで、扉が開く。

「そんなところで何をしているんだい」

 アレクも闇の精霊を連れてるんだから、俺が来てることぐらいわかるか。

 アレクに続いて部屋に入る。

 …すごい花の匂いだ。部屋中に花が飾られてる。

 これ、全部誕生日のプレゼント?

「コーヒーを淹れようか」

「要らないよ。出かけるんじゃないのか?」

「まだ出かけないよ」

 やっぱり、今日から城に戻る予定なんだ。

「これ」

 持っていた包みをアレクに渡す。

「少し早いけど。誕生日おめでとう、アレク」

 アレクが微笑む。

「ありがとう。可愛い包みだね」

 ラッピングは今日、ユリアがやってくれた。

「開けても良いかい」

 頷くと、アレクが包みを開く。

「バイオリンの…、オルゴール?」

 頷く。

「珍しい」

 アレクがオルゴールのねじを巻く。

 …綺麗な音。

 やっぱり、この曲にして正解。

「ベルスーズだね。私も好きな曲だよ」

 良かった。

「これ、開くと小物入れになってるんだ」

 って言っても、大したものは入らないだろうけど。

「それから、この台に乗せると飾っておくことも出来る」

 箱の中から丸い台を出して、バイオリンの形をしたオルゴールを乗せる。

 余ったパーツで作ったのだ。

「エルは器用だね」

 器用?

「俺が作ったってわかるのか?」

「もちろん」

 アレクが俺の頭を撫でる。

「ありがとう。大切にするよ」

 喜んでくれたみたいだ。

「エルに渡したいものがあったんだ。待っててくれるかい」

「渡したいもの?」

 アレクが窓際に行って何か持って来る。

 これは…。

「月の石?」

「そうだよ」

 砂漠の、月の渓谷にしかない石なのに。

「なんで、ここに?」

「砂漠に研修旅行に行った時に買って来たんだ」

 それって、一年以上前だ。

「月の力で満ちた月の石は淡く光るって聞いてね」

 満月の晩に月の渓谷で見た光景を思い出す。

 …あんな色になるのかな。

「ずっと月光浴を続けているのだけど、なかなか光ってくれないんだ。卒業して城に戻ると、忙しくなってしまうから。私の代わりに月光浴を続けてくれないかい」

「良いよ」

 アレクから月の石を受け取る。

「光ったら、教えれば良い?」

「そうしてくれると嬉しいかな。城にはいつ遊びに来ても良いからね」

「それ、本気で言ってるのか?」

「もちろん。エルが来てくれるなら、いつでも時間を作るよ」

 アレクは優しい。

 でも、そう簡単に会いになんていけないだろう。

「どうしても会いに行きたかったら、会いに行くよ」

「エルは可愛い弟だからね。待ってるよ」

 アレクは王子なのに…。

「今日から城に戻るんだろ?」

「そうだね。公務だから戻らなくちゃいけない」

 公務なのか。

 誕生日だからお祝いだと思うんだけど、アレクにとっては面倒な行事なのかもしれない。

「アレク。ヴェルソの三日、月が南中する深夜に養成所の方を見ていて」

「深夜に?」

「お願い」

「わかった。城から西の方角を眺めているよ」

 絶対に成功させよう。

 誕生日にお祝いしたいから。


 ※


 部屋に戻って窓辺に月の石を置く。

 一年以上、月光浴をさせても変化がないなら、この石が輝いてくれるかは分からない。

 砂漠で見た、奇跡のようなあの色に。

 あぁ、でも、あれは確か満月の日だった気がする。

 満月になったら光るのかな。

 次の満月。

 ヴェルソの十五日は、アレクの卒業式だ。


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