遠いロマンチック
5畳のこの部屋であなたと暮らし始めた。
今日もあなたがフラフラしながら帰ってくる。
本当は飲まないで欲しい、酒癖が悪い訳じゃないし、無理に歩かずに、タクシーにも乗って怪我しないように帰ってくる。
けれども、服はヨレヨレでシワだらけになってしまっているし、顔が酷く赤くまるで、トマトのようになってしまっている。
おそらく私の旦那さんは、お酒に弱いから体質的に飲むべきではない…
けれども止めても聞いてくれないから、水を用意して渡して、二日酔いを防ぐためにも薬を飲ませたり、素直に聞いてくれる所は素敵だけれど、なんだか死に急いでいるようで心配だ。
「いつもー…ごめんなあ…迷惑…ひっく…かけてぇ…」
ふいに酔っ払って真っ赤になったあなたがそう言うから、思わず「迷惑だと思うなら飲まずに自分を大切にして!」と言いそうだったが、今言ってもきっとあなたは忘れて、この言葉は今のあなたには届かないから、私は介抱しながらこう言う
「そんな事より愛してるとか可愛らしい事言ったらどうですか?迷惑だなんて思ってたらお世話なんかしません」
もっと可愛く言えたらいいのに説教臭い…相変わらず不器用な私だ、週末に同じ会話をよくしてる気がする。
そういえば…あなたと出会って付き合った真夏の帰り道なんか名前を知らない虫の声を聞きながら
「顔が赤いですね?どうしましたか?」
って聞いちゃったし、それに対してあなたが言った言葉は
「夏は夜もじっとりしてて嫌だよなあ、暑いもんなあ…」
ってロマンチックも何もない会話、後々考えてみれば彼きっと照れてたのね、手を繋ぎながら暑いとか言うから離しちゃった過去…私達夫婦にロマンチックは遠いのかと、ふと思う…真っ赤になって、ついに床に寝始めたあなたを見て呆れながらそう思う、だけれど、あなたじゃないときっと、こんな気持ちになれなかっただろうと、愛しく思える日々は幸せだ。




