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福山でスーパーを探すことの難しさ

 関西から西へ、山陽路を貫いて山口は下関まで続く、山陽線。

 その車窓、姫路までは、明るい平野に町とか田園が続いていたのが、姫路あたりから山が近づいてきて、相生を過ぎると、一気に山あいの農村風の眺めになる。電車から眺める景色もいろいろだが、やっぱり町中よりは自然豊かな眺めを楽しみたいもんだ。そういう者にとって、山陽線でこのあたりまで来ると、さあいよいよ、とテンションが上がる。


 電車は、川の流れる明るい農村をおおらかにカーブしながら走り、そのうち低いながらも深みのある峠を越えて、岡山県に入った。

 岡山でも、まずは山あいののどかな眺めが続く。それがにわかに都市っぽくなってくると、やがて県都岡山に到着。町も立派なら、駅も堂々としたもんだ。でも、さらに進んで、ひとたびこの都市エリアを出ると、わりとすぐにのどかな眺めが戻ってくる。


 倉敷のあたりは都市然としているが、あとは旅人好みの車窓が続く。そのうち、川を渡るでもなくトンネルをくぐるでもなく、どこにあるのかよく分からない県境を越えて、いつの間にか広島県に突入。そして町に入って都会っぽく高架線になると、福山駅に着いた。


 福山は、広島東部の中心都市。

 城下町だが、その城は、駅のすぐ隣にある。ほんとに、駅を出て1分で登り口だ。全国に城下町数あれど、こんなに駅から近いところは他にあるだろうか。鉄道旅行者にとって、これほどありがたい観光名所もない。


 そんな福山で途中下車して、さあぼちぼち昼飯時分。弁当でも買いますか。

 ――鉄旅の道すがらで、主要駅に降り立って弁当って言ったら、駅弁でも買うんだろうと思うところか。だが、私がそんな旅人じゃないことは、読者諸賢にはもうお分かりだろう。昨日の梅田の話じゃないが、ここで探すのは、例によって、スーパーだ。鉄旅だろうが何だろうが、弁当といえばスーパー。これっきゃない。

 さあ、福山駅前にスーパーはあるかな?


 そこでまず探すのは、駅によく立っている周辺地図。ふつうはここでスマホを取り出して、昨日みたいに検索するもんなんだろうけど、当方、それ以外の、言わば「従来型の調べ方」があるときは、できるだけそっちで行きたいと思うところがある。

 ポケットのスマホに手をやることもなく、駅に貼ってある地図に目をやると……駅前すぐに天満屋があるなあ……あとは……この地図でそれと見て取れるようなものはないなあ……。


「天満屋」と聞いて、何をイメージするだろうか?

 私見だが、それは人によって大きく2つに分かれるんじゃないかという気がする。

 1つは、デパート。いま1つは、女子陸上クラブだ。


 この違いはそのまま、岡山とかその周辺についてどれくらい知っているか?の違いなんだろう。地元民はもちろん、旅行で来るなどしてよく知っている人は、すぐデパートをイメージするだろうけど、そうでもなければ、「ああ、なんかこの前テレビでマラソン見てたら出てたなあ」っていうことになるかもしれない。たしかに、女子マラソンとか駅伝なんか見ていると、天満屋の選手をよく見かける気がする。

 だが、天満屋は、岡山発のれっきとした地場デパートチェーンだ。福山は岡山県ではないのだが、その天満屋が、駅前すぐの所に建っている。


 デパート。そう、デパートだ。スーパーではない。

 今探しているのはスーパーだから、言ってみれば対象外なのだが、駅の地図を見る限り、駅の近くにそれらしいものは他にない。しょうがない。とりあえず行って冷やかしてみるか。


 そんなわけで、駅を出て、駅前ロータリーの向かいにそびえ立っているそれまで歩いていく。着くと、建物の入り口のほかに、地下へ降りる階段がある。デパートで食料品といえば地下だ。迷わず階段を下りて地下へ。

 その先には、いかにもデパートの地下フロアという、想像したとおりの世界が広がっていた。イチ庶民が普段暮らしていくのにまず縁のなさそうな、あれだ。

 気の利いた洋菓子だとか、贈答品だとか、こぎれいなフルーツだとか、そんなものが、お前何しに来たと言わんばかりに並んでいる。そこをぬって、弁当がありそうなほうへ進んでいくと、あるにはあった。でも、それは、まぎれもなくデパートのそれだ。

 はい、ナシ!

 そうだ。ここはデパ地下だ。デパ地下に安手の弁当なんかあるはずはない。でも、デパートによっては、比較的手頃なものを置いているテナントがあったりするから、一応来てみたのだが、どうもお呼びでなかったらしい。

 こともなげに、また地上へ。


 さあどうするか。あたりを見回しても、気取った主要都市中心の繁華街といった趣で、スーパーがありそうな雰囲気を感じない。

 そこで脳裏に浮かぶのは、駅を出てすぐのところにあるコンビニだ。ほんとうに出てすぐのド真ん前に、さあ手ごろなお買い物ならここですよ、と言いながら鎮座している。

 やっぱり、あそこしかないのだろうか。コンビニ弁当は苦手だが、デパートがあるような大都市の駅前で弁当を調達するには、やっぱりコンビニしかないのだろうか。

 うん、仕方ない。今日はコンビニ弁当にしよう。


 駅に戻り、コンビニに入り、並んでいる中から比較的マシなやつを選んで、購入。それをぶら下げて、駅の反対側のお城へてくてく登っていって、気に入ったベンチに陣取って、いくらか旅の道すがららしいランチタイムを楽しんだ。


 食べてのんびりした後、駅に戻りながら、まだちょっと電車まで時間があるので、またフラフラとさっきのロータリーまで歩いていった。今度はデパートと反対のほうに進んでみると、こっちにも、どうも地下に食料品売り場がありそうなビルがある。ちょっと下りてみるか。

 すると、そこには、まさに私が探し求めていた、イメージ通りの「スーパー」の入り口が現れた。

 なんだ、あるじゃん。


 もう用は済んだはずだが、いまさらながら、入ってみる。すると……あるある。特別安いということもないが、これぞまさにスーパーの弁当!っていう、手ごろな弁当が並んでいた。

 そうか、ここだったのか……。

 きっと、このときの私は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたことだろう。今さら弁当に用はないが、せっかく来たんだからと、苦し紛れに菓子パンを1つ買って、店を後にした。


 駅に戻って、入る前、ロータリーのほうを振りかえる。

 うーん、知らない町で弁当を探すのは難しい!

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