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長旅の前にゴミぐらい捨てさせろ!

 春の旅を前にした旅人の、ワクワク感を期待する読者諸氏には誠に恐縮ではありますが、この旅、ゴミの話から始まります……。

 長旅を前にして、いつも心を悩ませるのが、「燃えるゴミをどうするか?」問題。

 楽しい旅を前にして、何もそんなことで心を悩ませなくても……と思うかもしれないが、楽しみな旅だからこそ、うまくケリをつけて気持ちよく発ちたいのだ。しかも長旅だし。


 当然、旅立ちの朝にゴミステーションに出してそのまま出発!というのがベスト。ぜひともそれを目指したい。でもそうすると、週2回のゴミの日に合わせて旅に出なきゃいけないことになる。


 そりゃあ、どんなタイミングでもいいからとにかく旅に行けさえすれば満足……なんていう旅人なら、何の悩みもなくゴミの日に合わせて出発できるだろう。一方こちらは、桜の見頃・薬師寺の行事・曜日の並びから週間予報に至るまで、まあ種々雑多なモロモロに振り回されながら、スケジュールのパズルに頭を抱えている。それだけの条件があれば、旅の日程を1日単位で縛るには十分だ。

 その上さらに、ゴミの日にまで振り回された日には、そのパズルが破綻をきたして、旅そのものになんらかの妥協を迫られることにすらなりかねない。


 ああ、なんで燃えるゴミごときに旅を狂わされなきゃいけないんだ!

 え? そんなこと言うくらいなら、いっそゴミを置いて行きゃいいんじゃないかって?

 はい。おっしゃる通りです……。


 実際、かつてはそうしていた気がする。旅立ちの日程を決めるのに、こんなに窮屈な思いをしていなかった気がする。でも、でも……出したい。なんとしてもゴミを出してから行きたい!


 そんなわけで、ゴミの日の中から旅立ちの日を選んで、それを起点に他のモロモロの要件を満たすスケジュールを描いていく……という、はなはだ本末転倒なプランを組み上げることになった。

 そうして決まった旅立ちは、奇しくも春分の日。

 祝日。

 そう、祝日……。


 そのゴミだが、ちょっとした訳あって、いつも2キロ離れた役所の施設まで出しに行っている。バイクの荷台にゴミ袋をゴムひもでくくり付け、田舎道を飛ばしていくのだ。


 で、その施設の傍らに、コミュニティバスのバス停が立っている。長旅のときは、駅にバイクを置きっぱなしにするのも心もとないので、バス停まで歩いてバスに乗って駅に向かうのだが、このコミュニティバスで旅立ったことも少なくない。

 そのときは、旅行用のバックパックを背負ったうえで、ゴミ袋を手にぶら下げて家を出て、いつもバイクで行く2キロの道を、ゴミ袋をブラブラさせて歩いていく。ご想像通り、なかなか煩わしい道のりだが、ゴミを出してそのまま旅をスタートできる方法は他にないだろう。


 でも今回は、別のバスで駅に向かうことにした。ここは山梨のはずれの片田舎なのに、駅へ出られるバスがいくつかある。そのうちの1つが、土休日には全線100円で乗れるのだ。500円が100円。旅立ちが土休日のとき限定。こりゃ乗るっきゃない。


 ところが、そのバスのバス停は、よりによってゴミ捨て場と正反対のほうにある。「ゴミぶらプラン」は実現のしようがない。

 仕方ない。旅立ちの朝、いつもどおりバイクでゴミ捨てに行って一旦帰り、あらためて出直すしかないか。どう考えてもこのほうがスマートなんだが、時間は余分にかかる。少しの時間も惜しい旅立ちの朝にあって、このロスは痛いが、他に方法はない。


 そうして迎えた当日の朝。

 ただでさえ早起きを強いられる旅の朝、バイクでゴミ捨てに行く時間を見て余分に早く起き、気忙しさに背中を押されながら朝飯等々済ませ、さあ、ゴミ捨てに行ってこよう。いつもどおり、バイクを暖起しつつゴミ袋を荷台にくくり付け、ゴミ捨て場へ出発。


 春の早朝の風を切っていつもの道を走り、ゴミ捨て場に到着する。いつもと同じようにゴミ置き場の物置の戸に手をかけるが……開かない。

 開かない。

 カギが閉まっている。

 え?

 身体中にダークグレーなものが駆け巡る。この戸は、ゴミの日以外はカギがかかっているのだ。でも今日はゴミの日なはず。まさかと思って、戸に貼ってあるゴミカレンダーを見てみると……今日の枠に「燃えるゴミ」の字がない!


 なぜだ……祝日だからか!!!!!


 そもそも燃えるゴミの曜日と祝日が重なることなんか、年に2回くらいしかない。あれだけ日程のパズルに頭を悩ませて、針の穴を通すように設定した旅立ちの日が、よりによってそのうちの1日と重なったということか!

 結局、この長旅の前に燃えるゴミを出せないということか!


 こちらのそんな思いや苦心など知らぬというように、戸はあいかわらず冷たく閉じて開かない。いつまでもここに呆然とつっ立ってたって、カギが開いてくれるわけじゃない。

 仕方ない。帰ろう。


 旅立ちの朝の慌ただしい中、ゴミ袋をバイクに付けて、ゴミ捨て場から家へと走る1人の旅人がいた。

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