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梅田は時間泥棒か!

 朝、御殿場を出てから、片手じゃ足りないくらいの乗りかえを経て、はるばる関西までやってきたわけだが、まだまだ今日の旅は終わらない。今宵の宿は、兵庫の姫路。今日中に関西の西の端まで一気に行ってしまおうという魂胆だ。


 東京もそうだが、大都市圏ってやつは、通り抜けようとすると何かと時間がかかる。大阪の場合、在来線でも東海道線だったらスムーズにパスできる一方、関西本線ルートで大阪を抜けようとすると、前に立ちはだかるのが大阪環状線。

 今、加茂で乗りかえた快速電車なら、そのまま環状線に乗り入れて、乗りかえなしで大阪駅まで行ってくれはするのだが、駅の細かい環状線のこと、距離のわりにどうにも時間がかかる。そうなると、浮かんでくる次なる課題。

 晩飯、どうしようかなあ……。


 もうすでに日暮れ時分。姫路に着くのは相当遅くなるだろう。時間的にも、乗りかえ的にも、大阪駅あたりがちょうどよさそうだ。

 じゃあ、駅の近くの安手な店に入って済ますかな……なんて考えるのだが、大阪駅周辺に広がる、いわゆる梅田界隈、いまいち土地勘がなくて、駅のどこから出てどっちのほうに進めばどんなエリアに出られるのか、どうもピンとこないのだ。なんかやたらと移動時間ばっかり食いそうに思えて気が進まない。その先に続く姫路までの道のりを思うと、ロスはなるべく抑えたいところだ。


 それならいっそ、弁当を買って電車の中で食べるかなあ……幸い、電車は通勤電車スタイルの長椅子のヤツじゃないし……。

 ひとたび旅に出ると、昼飯はほとんど弁当。夜もだと2食続けて弁当になるので、できれば避けたいのだが、弁当を持ち込んで電車に乗りながら食べれば、タイムロスは最小限で済む。今日みたいに時間が惜しいときにはありがたい。

 しょうがない、今日はそれで済ますか……そんなわけで、梅田で弁当を買って車内で食べることに決定。


 そうすると次の問題は、梅田のどこで弁当を買うか?だ。探すものが食事処から弁当を買える店に変わっただけで、梅田の土地勘がないことに変わりはない。コンビニだったら、駅の構内も含めていくらでもあるのを知っているのだが……当方、コンビニ弁当はどうも嫌いで……。

 そういえば、初日に親子丼を仕入れたのはコンビニだったが、どうにも割高だし、野菜分のカケラもなかったりする。だからいつも、可能な限りスーパーを探して、どうしても、どうしてもない時だけ、仕方なくコンビニで妥協……っていうスタイルを貫いているのだ。


 ただ、こと大都市中心部の駅の近くには、スーパーってものがとんと見当たらない。いちばん苦手なパターンだ。さあ、梅田の駅の近くに、安手の弁当を売っていそうな手ごろなスーパーはあるかな?

 もう外は暮色濃厚、眺めを楽しむべくもない。大阪までのひとときを、食糧補給スポット探しに費やそう。


「大阪駅 スーパー」で検索!

 うーん……。

 なんかいろいろ出てはくるのだが、どれもこれも聞いたことないような名前ばかりで、どんな店なのかピンとこない。場所が場所だけに、そんなに安い店はなさそうだが、それっぽいところをいくつか回って、比較的マシなところで決めるしかないか。


 で、この店たちは、いったいどのへんにあるんだろうか。検索結果に出てくる地図上のマークは、大阪駅のすぐ近くに点々とあるのだが、あの駅のあたりは、とにかくめっぽう複雑怪奇なイメージだ。ビルあり、地下街あり、空中通路ありで、導線もスペースも重なり合って入り乱れている。

 地図はそれを上から見て、店のありかにぶっきらぼうに点を打って、とにかくそのへんに行きゃ分かるからと言わんばかりにすましているが、地方都市の駅前ならともかく、梅田みたいなところへそういうノリで突入すると、とんでもない目にあうこと請け合いだ。

 だが、そう言ってみても、それがネット検索の限界なのか、自分のリテラシーの低さなのか、この不安に応える情報は与えてくれない。しょうがない、あとは現場勝負だな……。そんなことを考えるうち、電車は、すっかり夜の顔になった大阪の町をめぐって、大阪駅に着いた。


 んー、やっぱりもういい時間だ。腹も減ってきた。とっとと買ってありつきたい。まずは改札口に近いところから回っていくか。

 1つ目は改札を出てすぐらしい。そんなところにスーパーなんぞあったかな……ああ、ここか。たしかにスーパーなんだろうけど……イメージしているものとはだいぶ違うなあ……とはいえ、入ってちょっと見てみるか……おおー、高い……きっと、全国あちこちで見かける某有名高級スーパー的なヤツなんだろうな……これはないな……失礼しやした……。


 2つ目は、北口の地下にあるらしい。それらしいエスカレーターを下りて、それらしい方向へ進む。

 こういう地下街とかビルの地下フロアってやつは、人は多いわ、通路の幅は狭いわ、わざわざヘンに曲がりくねっているわで、こういうところを歩きつけない人間からすると、用水路に迷い込んだイルカ並みのストレスだ。通行人をかわしたり抜いたりしながら、ひたすら奥へ奥へと進んで、ようやく2つ目のスポットに着いた。

 が……ここも高い。さすが梅田、なんともこじゃれた品ばかり。いや、そういうことじゃなくて、もっとこう、ふつうのスーパーを求めているんだけど……。

 でも、よく考えてみれば、ここはいわゆるデパ地下みたいなもんだろう。これがふさわしいのかもしれない。時間が惜しい中、せっかく用水路をたどって延々やってきたが、次に期待しよう。


 次なる候補は、駅から道路を渡った向かいにあるらしい。私みたいな田舎者の感覚からすると、地上に出て道路を渡っていくのが手っ取り早く感じるのだが……。たしか、かつてここから高速バスに乗るとき、同じことをしようとして、渡れるところがなくて右往左往した気がする。大都会だけに、そういうこともあるかもしれない。

 だったら、立体的にできている街のこと、今地下にいるわけだし、このままそっちのほうに進んでいけば行けるんじゃないか? そう思って、用水路をそっちのほうへ泳ぎはじめた。


 細長い地下フロアを、頭の中の磁石が指すほうへひたすら進む。そうすると、先に見えてきたのは、地下鉄の入り口だった。いやいやいや、違うんだよね明智君。私はなにも地下鉄なんぞに乗りたいわけじゃないんだよ。これはつまり、地下からじゃ行けないってことか?

(梅田に詳しい読者への著者注:実はこのルートこそが、まさに目指すビルへのベストルートではないかと、今の私は薄々勘づいているのだが、このときの私はそれどころじゃなかったということで、そこはノータッチでお願いしたい)


 さあどうする。あー時間が惜しい時間が惜しい。こんなとき田舎者のやることはひとつ。上へ上へと登っていき、地上に出た。

 目の前には、記憶のとおり道路がある。そして記憶のとおり、横断歩道はない。すぐその向こうには、目指すべきビルが、ここまでおいでと言いながらふんぞり返っている。

 地下がダメなら上しかない。たしか、このへんから阪急の駅へ行くデッキがあったよなあ。そこへ上がる道を見つけるのもひと苦労だが、なんとか上がって、歩いてみると……雨。

 ここまで雨かよ!

 これだけ導線だらけの大都会梅田で、すぐそこのビルまで行くのに、こともあろうか雨に濡れるとは!


 理不尽はいたく腹立たしいが、無事渡り廊下を見つけ、ようやっと敵城に乗りこんだ。そこからまた地下へと降り、店に到着。ここも十分高いのだが、他と比べるとまだスーパーのイメージに近い。いいかげん時間も食ったし、腹も減ったし、ここで折り合いをつけるしかないだろう。

 弁当を買って、もと来た道を戻って駅に着いた頃には、もう小一時間くらいたっていただろうか。これなら、いっそ食べに行ったほうが早かったかもしれない。


 まったく、梅田ってやつは時間泥棒かよ!

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