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第4話 ケルベロス


 

 

 

 

 森の奥を進むにつれ、木々が少しずつ間隔を開け始めた。

 カイトは足を止め、息を整えた。

 さっきの四本腕のドラゴンとの戦いで高揚がまだ胸に残っている。剣を握る手が、微かに震えるほどの興奮。

 でも、ここは異世界。油断はできない。

 

 

 

 

 さらに森の奥地へ進んでいった。

 

 


 そこに一人の女性がいた。



 ──たなびく赤いマント。

 そして頭に付けられた騎士の兜。





「え????」





 思わず声をあげてしまった。


 彼女の服装——いや、鎧が、常識を完全に破壊していた。

 深紅と緋色の豪華な装飾が施された騎士甲冑。

 


 

 

 ──その鎧の露出が半端なかった。




 

 驚くほど大きく開かれた胸元。

 上半身の装甲は極端に短く、クロップトップのように胸の下で切られていて、深い谷間と豊満な巨乳のほとんどが丸見え。



 

 柔らかく張りのある膨らみが、重力に逆らって高く持ち上がり、わずかな動きでゆさゆさと揺れる。

 お腹から腰までが完全に露わで、細く引き締まった腰、柔らかそうな肌、わずかに見えるへそ——すべてが大胆に晒されている。

 

 

 そして、何よりも——下半身。

 腰に巻かれた茶色の革ベルトから、極端に低ウエストで留められたプリーツ状の超ミニスカートアーマー。

 

 ミニすぎる。

 とんでもなくミニすぎる。

 

 丈が短いなんてもんじゃない。ちょっと動けば、鼠径部がはっきり見えそうなほど下げられており、プリーツが揺れるたびに、純白のパンツが危うくチラチラと覗く。

 

 

 しかも、脚——。


 長い。

 細く、しなやかで、引き締まった太ももは完璧な曲線を描き、膝から下はスラリと伸びて、まるでモデルのように魅惑的。

 肌は白く滑らかで、筋肉の微かな動きが、艶めかしく光を反射する。

 ブーツの縁とスカートの隙間——そこに広がる絶対領域が、視線を釘付けにする。

 赤いマントで見え隠れするのが逆にそそられる。



 ——エロすぎる。


 

 巨乳が揺れ、深い谷間が強調され、長い脚が魅惑的に動き、白いパンツがチラチラ——戦場でこんな格好なんて、反則だ。

 

 カイトの視線が、どうしても胸と脚に吸い寄せられる。

 

 彼女は、明らかにこの格好を強く恥ずかしがっていた.

 戦う姿勢のたびに、巨乳がゆさりと揺れて谷間が深く強調され、スカートを無意識に手で押さえそうになり、慌てて剣を握り直す。

 

 

 

 

 

 相手は、――ケルベロスだった。

 

 三つの巨大な頭を持ち、黒い毛並みが魔力を帯びて鋼のように硬く輝いている。口から冥界の炎を吐き出し、鋭い爪が地面を薙ぎ払うたび、土が飛び散る。

 サラの斬撃が漆黒の毛並みに弾かれる。火花が散り、三つの頭が同時に咆哮して森を震わせる。

 

「……っ、硬い……! この毛並み、冥界の加護か……!」

 

 凛とした声が、騎士の鎧兜の下からこもって聞こえる。


 ケルベロスが炎を吐き、彼女が剣で弾こうとするが、熱風でスカートがめくれ上がり——白いパンツがはっきりチラリと見えてしまう。

 

「ああっ……!?」

 

 彼女は悲鳴のような声を上げ、片手で必死にスカートを押さえ、もう片方で胸の谷間を隠そうとし、剣を握り直す。

 その隙に、左右の首が牙を剥いて迫る。

 

 俺は、もう我慢できなかった。

 黒いパーカーとジーパンのまま、草原に足を踏み込む。






 

「——待て」

 

 声をかけた。

 彼女が振り向き、ルビー色の瞳を大きく見開く。

 

「誰!? そこ、危ない! 早く下がって!」

「俺がやる」

「!? 来ちゃだめ! この魔獣は——」




 

 その時、背後の茂みから一人の男たちが転がり出るように現れた。

 白銀の甲冑。だが、泥にまみれ、剣は刃こぼれしている。さっきケルベロスに怯えて逃げ出したはずの聖騎士団の生き残りだ。




 

「おい、どけ! その魔獣は我ら騎士団の獲物だ!」

 

 男が、震える手で剣を構えながらカイトを怒鳴りつけた。

 

「あなたは……どうしてここに!?」

 

 少女は驚愕の表情を浮かべる。

 そして、瞳はどこか怯えているように揺れていた。

 

()()殿()! 何をしている、無様ではないか! アイゼンガルドの名を冠しておきながら、そんな破廉恥な格好で平民のガキに助けを乞うとは!」

「……っ!?ち、違います!私は……!」

「……ふん……没落貴族の娘が……」

 

 騎士団の生き残りの男は、カイトのパーカーとジーンズを汚いものでも見るかのように睨みつけた。

 

「さっきはなにかの間違いだ! ここで俺の力を証明してみせる! ヴォルドガムはまだしも……エリートである俺が本気を出せば、あんな犬ころなど一瞬で……!」

 

 男の言葉が終わる前に、ケルベロスが嘲笑うかのように口を開けた。三つの頭が同時に天を仰ぎ、中央の首の前に、どろりと空間が歪んだ「黒い穴」のような魔力の渦が浮かび上がる。

 サラと呼ばれた露出の多い女性騎士が目を見開いて驚く。

 

「あれは……《冥界の門》!? あれは冥界とつながってて、恐ろしい魔法を放つ魔法……あなた……危ない!」

 

 次の瞬間、一転して猛烈な黒い火炎へと変貌し、咆哮と共に放たれた。

 

「ひ,、ひぃぃぃっ!」

 

 生き残りの男は剣を投げ捨てて、再び地面を這いつくばった。

 だが、カイトの動きはそれを嘲笑うかのように静かだった。

 踏み出す一歩に、重力も慣性も存在しない。

 

 

 剣を無造作に、まるで散歩の途中で邪魔な枝でも払うかのように、横一文字に薙いだ。

 

「――剣技《水平円舞(ホライゾン・アーク)》」

 

 世界がスローモーションに書き換えられ、絶対的なカイトの支配域へと変貌する。放たれた《冥界の門》の黒炎が、カイトの剣筋に触れた瞬間、パリンとガラスが割れるような音を立てて霧散した。

 

 熱風すら届かない。

 カイトの剣が描いた軌跡の上では、冥界の法則すらガラクタ同然に破棄される。

 

 サラは、息を荒げて立ち尽くす。

 信じられない顔で、俺を見る。

 

「ば、ばけもの……剣技と魔力を両方扱うなんて……あり得ない!」

 

 生き残りの男の声が震えている。

 


 

 

 そして俺は、もう動いていた。

 二重回路が全力で回転し、胸の奥が熱くなる。

 

 魔力をつかさどる回路と、剣技をつかさどる回路の交差。

 これはまさに、あの頭上にある土星の環のような、赤と青のリングを表しているようだった。

 

 次に、《領域同期》が静かに発動した。

 草原全体が、カイトの意志に呼応するように変わった。

 風の流れが俺を優しく押し、ケルベロスの巨体をわずかに引きずる。音が一拍遅れ、熱風の勢いが弱まる。

 魔獣の動きが、決定的に——鈍くなる.

 

 逆に、彼女の足取りが軽くなり、彼女自身がそれに気づいて目を丸くした。

 

「……っ!? なに……これ……!? 私の身体が……軽い……!?」

 

 彼女の声が震える。

 膝が笑わない。

 世界の“抵抗”が、消えている。

 

 

 ケルベロスが俺に向かって突進してくる。

 ケルベロスが咆哮し、左右の頭が同時に噛みつこうとする。

 俺は軽く横に跳び、着地と同時に右手を掲げた。

 

 ——二重回路により、魔法を並列稼働。

 無詠唱で風を呼ぶ。

 

 風魔法——《疾風の矢(エア・アロー)》。

 

 魔獣の顔に直撃し、ケルベロスを吹き飛ばす。

 

 

 

 ドォォォォン!!!

 

 

 

 巨体が大木をなぎ倒しがら、地に伏せる。

 3つの顔が呻いている。

 

 そして、すぐケルベロスが立ち直り、地面を踏みしめ、黒い魔力の障壁を全身に張り巡らせた。

 サラの剣筋をすべて無効化した、魔法的な絶対防御。



 ──そして俺の意識は「加速」の極致へと至る。

 

「……ふっ!」

 

 地面を爆ぜさせるような踏み込み。俺の体は重力を置き去りにし、一瞬で宙へと躍り出た。

 向かう先は、天を突くような巨木が並ぶ大樹の迷宮。

 

 ――トォォン!

 

 一歩、巨木の幹を垂直に蹴りつける。

 その反動を利用し、斜め向かいの枝へと弾丸のように飛び移る。

 視界が超高速で後ろへと流れ、風が刃となって頬をなでた。

 

「ガアァァッ!?」

 

 ケルベロスの三つの頭が、右へ左へと忙しなく振られる。

 しかし、俺の軌跡は直線ではない。

 木から木へ、枝から幹へ。森を縦横無尽に駆け巡る。

 

 俺がいたはずの場所をケルベロスの鋭い爪が切り裂くが、そこにはすでに残像すら残っていない。

 

「な……ッ、なんて速いの……!」

 

 背後で状況を見守るサラの、震えるような感嘆の声が耳に届く。

 

 ケルベロスは、その六つの眼を限界まで見開き、俺を捉えようと必死に追従していた。だが、あまりに多方向から繰り出される超高速の移動に、三つの頭の連携が乱れ始める。

 

「追いつけないだろ? ――こっちだ!」



 女神様から貰った『略式模倣』──相手のスキルや特徴を模倣する能力──によって、俺は先ほどの四本腕のドラゴン、ヴォルドガムからあるスキルを奪った。


 それは『第三の目』である。

 これは相手の動きを完璧に見通し、最適な行動が分かるスキルである。

 『第三の目』によってケルベロスの動きを完璧に把握。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その代償として、瞬きをするたびに()()()()のようなものが見えるが、それは許容範囲だ。 



 俺はさらに加速する。

 巨大な樹木の影に潜み、次の瞬間にはケルベロスの真下にいた。

 かく乱は完了した。 巨獣の六つの眼に、もはや俺の正確な位置を判別する術はない。

 


 場所はケルベロスの喉元。

 


 俺はかつて屠った敵の情報を魂から引き出し、そのことわりを剣へと転写した。

 

「——《略式模倣》」

 

 熱い。

 

 バトルが、最高に熱い。

 

 モブだった人生では味わえなかった、この昂り。

 

 強さが、賢さが、暴力すらリソースとして扱う支配の感覚。

 

 ケルベロスが暴れ、尻尾を振り回すが、《領域同期》で動きが遅くなり、カイトの身体は軽々と避ける。

 最後に、俺は踏み込んだ。

 

 

 剣を逆手に持ち、ケルベロスの喉元——魔力の核に、刃を突き立てる。

 《略式模倣》により、四本腕のドラゴン、ヴォルドガムのエネルギーを核へと直接流し込む。

 魔獣のすべての術式が、内側から爆ぜるように崩壊した。

 

「……終わりだ」

 

 俺は静かに呟くと、右腕を真っ直ぐに突き出した。

 

獄炎槍(プロミネンス・ランス)

 

 俺の指先から放たれたのは、白銀に近い輝きを放つ、超高熱の奔流だ。

 

 獄炎槍(プロミネンス・ランス)が空間を削り取りながら一直線にケルベロスの胸元へと突き刺さる.

 次の瞬間、視界のすべてが白光に塗りつぶされる。

 

 

「ギャオオォォォォンッ!!」

 

 

 魔獣の絶叫は、凄まじい爆発音にかき消された。

 猛烈な爆炎がキノコ雲となって天を突き、衝撃波が周囲の木々を木端微塵に粉砕する。

 



 サラと呼ばれた少女が、口を開く。






「……あ…………。……一撃……? 嘘……。冥界の加護を受けたあの魔獣を、そんな……まるで、子供の遊びみたいに……っ」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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