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第10話 天使登場【イラスト付き】



「「――え?」」

 

 荒涼とした戦場の風景が、一瞬にして消え失せる。音も、風も、熱気さえも遮断された。

 気付けば、俺たちは上下左右の区別もない、無限に続く真っ白な空間に立っていた。

 

 女子生徒たちの姿はない。俺とサラだけだ。

 

 この空間、見たことがある……。

 

「な、なによここ!?敵の幻術!?」

「いや……殺気がない。むしろ――」

 

 この温かさはなんだ?まるでふわふわの羽毛布団に包まれているような、絶対的な安心感。そこにいるのは、俺と、警戒態勢をとるサラ。

 

 そして上空から、

 

 ――女神、ではなく……。




 

「やっほー! カイト君、すごかったねー!」

 

 鈴を鳴らしたような、聞いているだけで心がぴょんぴょん跳ねるような可愛らしい声が、頭上から降ってきた。空中の何もない一点から、真っ白な羽が舞い散り、一人の女の子の姿を形作っていく。

 

「っ……」

 

 息を呑んだ。可愛い、という言葉がこれほど似合う存在がいるだろうか。ぴょこんと跳ねた元気な金髪のショートカットが、光を浴びてキラキラと輝いている。透き通るような白い肌は、マシュマロみたいに柔らかそうだ。

 

 そして何より目を奪うのは、その愛らしい顔立ちとは裏腹な、暴力的なまでに豊満すぎる肢体だ。

 

「う、わぁ……」

 

 身にまとっているのは、白いレースをふんだんに使った、ひらひらしたミニスカートと、チューブトップのような短いトップスだけ。

 露出度が尋常じゃない。

 彼女が空中で足をバタつかせるたびに、短いスカートの中が見えそうになるし、何よりトップスの布面積が足りていない巨大な双丘が、ぷるんっ!ぽよんっ!と、とんでもない弾力を持って跳ね回る。

 

 

 挿絵(By みてみん)

 


「て、天使……様……なのか?」

「そだよー!あたしは天使!魔族の幹部を一人でやっつけちゃって、みんなを助けたカイト君を褒めにきたんだー!」

 

 天使がふわりと音もなく舞い降り、俺の目の前に立つ。

 甘い。

 お日様の匂いと、焼きたてのお菓子みたいな甘い匂いが混じったような、幸せな香りが鼻腔をくすぐる。

 

「す、すげぇ可愛い……それに、でか……」

「ちょっ、カイト!どこ見てんのよ!デレデレしない!」

 

 バシッ!とサラが俺の脇腹をつねりあげる。

 

「いっ、てぇ!」

「何鼻の下伸ばしてんのよバカ! 相手が誰だか分からないの!? たぶん、天使様よ!」

 

 サラは頬をリスのように膨らませ、明らかに不機嫌そうに天使を睨みつけている。

 完全に嫉妬だ。

 その反応すら可愛いと思ってしまうが、今の相手は正真正銘の天使様だぞ。

 

「あははっ、元気なお姉さんだね!もしかしてヤキモチ? 可愛いなー」

「はあ!? し、嫉妬なんてしてませんけど!?」

「にひひ、まーまー。今はカイト君へのご褒美タイムだから、ちょっと待っててね?」

 

 天使はサラの抗議をまったく気にせず、にひひっと悪戯っぽく笑うと、ぴょんっと俺の目の前に顔を寄せた。

 

「ご、ご褒美……?」

「うん!頑張った男の子には、とくべつなご褒美が必要でしょ?」

 

 近い。

 くりくりした大きな瞳に、俺の顔が映っている。

 彼女の甘い吐息が俺の唇にかかり、背筋がゾクゾクと震える。

 

「カイト君にはね、新しい力をあげちゃう!あたしのお気に入りだよって証拠!」

「証拠……?」

「そ! 拒否権なんてないからねー? んじゃ、いくよー!」

 

 天使の小さな手が、俺の肩をガシッと掴む。

 逃げ場はない。

 いや、こんな可愛い子に迫られて、逃げたい男なんていないだろう。

 彼女のキラキラした瞳が、俺を捕らえて離さない。




 

 そして――

 

 ちゅっ。




 

 柔らかく、とてつもなく温かくて甘い感触が、俺の唇に押し当てられた。

 

「んっ……!?」

 

 一瞬の戸惑いの後、脳髄が痺れるような感覚が全身を駆け巡る。

 ただの接触じゃない。唇を通して、膨大な魔力と情報の奔流が、熱いシロップみたいにドロドロと俺の魂へ直接注ぎ込まれていく感覚。

 甘く、溶けるような、天使との口づけ。

 思考が真っ白に染まる。

 

「ん……っぷぁ……」

 

 やがて唇が離れると、銀色の糸が一本、俺と天使の間に艶かしく引かれた。

 

「な、なななななっ!?」

「う、嘘でしょ……!?」

 

 サラが顔を真っ赤にして絶叫する。

 俺も腰が抜けそうだ。心臓が早鐘を打って痛い。

 

「こ、これは……一体……?」

「えへへ、ごちそーさまでしたっ!」

 

 天使はペロッと自分の唇を舐めると、とんでもないことを明るく告げた。

 

「今ね、カイト君の魂に《幸運の印》を刻んじゃった! で、超重要スキル、《大結界》の称号もあげるね!」

「しゅ、幸福の印? 大結界?」

「うん! この印はね、あたしの加護を他の人にも分けてあげられる、すっごい便利なスキルなんだよ! その加護だと、幸運度が上昇するんだ!」

 

 天使は一拍置いて、さらにニマニマと笑った。

 

「でもねー、加護をあげるには条件があるんだー」

「条件?」

「粘膜接触――つまり、ちゅーして契約しなきゃダメなの!」

 

「「……は?」」

 

 俺とサラの声が重なった。

 とんでもない条件を、まるで今日のランチの話題のようにさらっと言った。

 

「契約した子とカイトはね、幸運値……つまり運がめっちゃ良くなるんだよ! カイト君、守りたいって思う大事な子と、たーくさんちゅーして契約してね!」

「き、キスで契約って……ええええ!?」

「そゆこと! 簡単でしょ?」

 

 天使が楽しそうにウィンクをする。

 なんて破廉恥な天使様なんだ。だが、その瞳の奥にある力は本物だ。

 その効果は絶大だろう。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 サラが俺の腕を掴み、天使に詰め寄る。

 

「それってつまり、幸運値を上げるには、その……カイトと……しなきゃいけないってこと!?」

「そうだよ! 契約した『お姉さん』も強くなれるんだから!……にひひ、頑張ってね?」

 

 天使の意味深な視線がサラを射抜く。

 サラは「あわわ……」と口をパクパクさせ、茹でダコのように真っ赤になって黙り込んだ。

 

 

 

 

「さてさてー、カイト君!お楽しみはこれから……なんだけど、ちょっとマジメなお話もしよっか?」

 

 天使の纏う空気が、ふっと変わった。

 先ほどまでの脳を蕩かすような甘い色香の中に、絶対的な存在としての、凛とした輝きが混じる。

 

「それじゃ、本題ね!カイト君の使命についてだよ」

 

 彼女の表情が、いたずらっ子のような笑顔から、真剣な眼差しに変わる。

 宝石みたいな黄金の瞳が、俺の魂の底まで見透かすように、じっと向けられた。

 

「カイト君。君にはね」

 

 天使は一拍置いて、俺をまっすぐ見た。

 

 

 

 

 

 

 

「――魔王を倒してほしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 心臓が、ドクンと跳ねた。


「……は?」




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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【イラスト】

ビキニ姿の天使様のイラストをツイッターで公開しています。

https://x.com/MASTER_COCOA_/status/2012463173039972662?s=20

ピクシブも

https://www.pixiv.net/artworks/140047505

また、一言でも感想やコメントをいただけると、ありがたいです! 

次回の更新もどうぞよろしくお願いします!


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