たとえ手を伸ばしても 翼視点とその後
あけましておめでとうございます。
久しぶりに執筆する時間が取れましたので書いてみました!
前作「たとえ手を伸ばしても」の続きになります。
やっぱり続きを書いてみたくなりました。
私は気づけなかった。
心がどう思っていたのか。
私は思ってもみなかった。
心が私の隣からいなくなるなんて。
あの日からもうすぐ一年半がたとうとしている。
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私はあの日、心に大切なものをあげるつもりだった。
違う大学に進学することになった私達だけど、これから先もずっと一緒にいるものだと思っていた。
お互い知らないことなんてないし、大学では一緒にいられる時間が減ってしまうならこれを機に同棲するのも悪くないかななんて考えていた。
あの言葉を聞くまでは。
何を言われたか理解できなかった。
「…………………………ぇ?」
理解はできなかったけど涙は出てきた。
「………ごめん、翼。今までありがとう。」
彼はそう言って足早に立ち去った。
しばらく立ち尽くし、呆然としていた。
信じられなかった。
うまくいっていると信じていた。
このまま2人で歩んでいけると信じていた。
なんで?
どうして?
頭の中を埋め尽くす疑問。
とりあえず追いかけようと部屋を出ようとした時。
机の上に置かれていた小箱に気づいた。
開けてみると中には青い石でできた綺麗なブレスレットとただ一言
「相応しい人とのしあわせを願っている」
と心の字で書かれていた。
途端に認識してしまった現実。
心に別れを告げられた悲しみ。
理由を話してくれないわずかな怒り。
それでもとりあえずは話し合おうと涙でぐちゃぐちゃの顔を手で拭って私は家を出た。
結論から言うと彼と会うことはできなかった。
彼の家に行っても応答はなく、その日は諦めるしかなかった。
仕方なく家に戻り、ただひたすらに泣いた。
気づけば寝落ちしていて、次の日になっていた。
異様な様子に気づいてか、両親は声をかけてくれたもののそっとしてくれていた。
受験も終わっているため、卒業式までは自由登校となっている。
遅めの朝食を食べ、身支度を整え、今日も心の家に向かう。
一晩経って多少落ち着いたとはいえ、それでも彼と理由もなく別れるなんて考えられなかった。
インターホンを押すと、しばらく間をおいて
「………はい。」
いつもよりもずいぶん暗いが心の声だった。
「心!私!話し合おう!!」
そう必死に伝えると、
「…翼……待ってて、今開ける。」
そう応答があった。
扉から出てきた心はずいぶんと疲れた顔をしていた。
「上がって。先に部屋に行って待ってて。」
そうして彼の部屋に入る。
久しぶりに入った彼の部屋は以前入った時よりもずいぶんと様変わりしていた。
机の上には教科書や問題集が置かれ、受験生らしくなっていた。
そしていつも机の上に置かれていた私と心の2人が写っていた写真はなくなっていた。
彼は本当に私と別れるつもりなのだと感じていると、
彼が戻ってきた。
とりあえず向かい合って座る。
いつもは隣り合って座っていたはずの部屋で向かい合って座る。
その変わってしまった距離間が、感じられない温もりがとてつもなく悲しく、寂しく感じる。
お互いが感じることのなかった気まずい空気感。
いつもは居心地の良かった無言の時間がなんともいたたまれない。
「………どうしてなの………」
それでも私は切り出した。
聞かなければならない。
彼が別れを切り出した理由を。
「…………疲れてしまったんだ。」
どれくらい時間がたったのか。答えを聞くまでのとてつもなく長く感じた時間はそれでも数秒だったのかもしれない。
ぽつぽつと語られる理由。この3年間彼が感じていたこと。
私がこれ以上ない充実した学校生活を送っていた裏で、それを陰ながら支えてくれていた彼は苦しんでいた。
必死にもがいていた。
「だから、ごめんね。」
そう語り終えた彼は散々悩んだのだろう。
苦しんだのだろう。
悲しんだのだろう。
その目はまだ私のことが好きだと語っている。
それでも別れることに後悔はないすっきりとした顔をしている。
「………なんで相談してくれなかったの…
なんで話してくれなかったの。
なんで一言言ってくれなかったの!
そうすれば、そうすれば私は………!」
そうすれば私はどうしたのだろう?
苦しめていた張本人の私に何か出来たのだろうか。
苦しめていたとも知らずに彼に甘えきっていたわたしに何ができるというのだろうか。
「…そうだね。相談すれば何かが変わったのかもしれない。でも僕はね、出来れば君にだけは知られたくなかったんだ。こんな僕でも、こんな僕だからこそ、ちょっとでもかっこよくみられたかったのさ。他の誰でもない君に。みんなの中心で頑張っている君を支えられるように、隣に立てるようになろうとね。」
彼の隠されていた想い。私のために、私にだけ告げられなかった想い。
私が気づけなかった想い。
だから私は悟ってしまった。別れるしかないことに。
お互いの好きの想いだけではダメだったと言うことに。
彼と一緒にいられればそれで良かったのに。
好きとはお互いに支え合うこと。
けれど支え合うとはお互いが対等になって初めてできること。
彼は私を支えようとしてくれた。
そのために対等になろうと頑張ってくれていた。
私も彼を支えたかった。
最初から彼を対等に扱っていた。
けれどそれが重荷になってしまっていた。
対等になろうとしてくれている彼に気づかず対等に扱っていたために彼に負担をしいてしまった。
私は彼がどんな困難にあっても支えるつもりだった。
けれど支え合う関係になる困難を彼は私のために支えさせてくれなかった。
気づいていたかどうかなどは関係なかった。
釣り合っていない。
何度も言われたことがあった。
私はその度に否定した。
彼と一緒にいたかったから。彼しかいないと思っていたから。他の人が言うことなど関係ないと思っていた。
だから
彼がどれだけ凄い人かを説いた。
結果、それが彼を苦しめてしまった。
袋小路。堂々巡り。どうしようもなかった。最初から破綻してしまっていた。別れることは必然だった。
「………………そっか………」
彼と一緒にいたい。けれど一緒にいれば彼を苦しめてしまう。
なら彼のためにも別れるしかない。私の好きな人には心から幸せになってほしい。
別れることだけが私が彼のためにできることだ。
「でも絶対に別れない!!!!!」
「…えっ!?」
彼がびっくりしているが当たり前である。
逆になんで私が別れるというと思ったのか。
「何をびっくりしてるの?」
「…いや、この流れは納得してくれるものだと…」
「納得はしたわ。でも別れるわけないじゃない。
それにお互い好き同士なのに別れる必要なんてないじゃない!」
「それはそうだけど…けど僕は疲れてしまったんだ。」
「それは本当にごめんなさい。私が気づけなかったせいで心に負担をかけてしまって………
でも!これからは私が支えるわ!!心が胸を張って釣り合えるようになったと感じるまで!
だから…だから、お願い!2人で頑張ろう!!
私は心とこれからもずっと2人でいたいもの!!」
「………心、もしかして怒ってる?」
「全然!心が1人で悩んでたことに気づかなかった私にとか!ずっと一緒にいたのに相談してくれなかったことにとか!別れるとか言い出した心にとか!全然怒ってないですけど!!」
「めっちゃ怒ってるじゃん!!………でもそうだよね…
こんな不甲斐ない男なんて…やっぱり翼にふさわしくないしわかれって何!?なんでのしかかってくるの!?力強っ!!??」
「今別れるとか言おうとした?許さないから!!私がどれだけあなたのこと好きか体に教えこんであげる!!」
暴走した私は心を襲ってしまった。
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「ただいまー」
「おかえりー」
奥から心の声がした。
そう、心と同棲中である。
あの日、心を襲ってしまった後、心にこれでもかと私の愛を刻んだ後のことだ。
寝てしまった心をおいて私は部屋を出ると、心の両親と遭遇した。
「「「あっ。」」」
うすうす何があったのか察した心の両親に向かって私はというと、
「心を私にください!」
心を逃さないために外堀を埋めることにした。
婚約者になればそう簡単に別れられなくなる。
あくまで念のための保険である。
ご両親は諸手をあげて歓迎。ついでに同棲の許可まで勝ち取った。(色々約束はさせられたが)
そうして大学に進学したのだが。
高校の頃は心に近寄る女どもに目を光らせていたので良かったのだが。
別々の大学となるとそうもいかず。
その代わりお互い隠し事はしないようにと約束をし、高校の時の反省を活かしてサークルにも入らず、できるだけ心と一緒にいる時間を作った。
それに大学が別だったのが良かったのか、比較されない環境にいたことで心の自尊心も回復、自信を持てるようになっていった。
そして今日は私の20歳の誕生日。
扉を開けると誕生日の飾り付けと豪華な料理、そして、
「翼、結婚しよう。」
今日は今までで1番幸せな日になりそうです。
お読みいただきありがとうございました。
忙しくてなかなか執筆の時間が取れず、書くと言ってから気づけば1年が経ってました…
社会人の忙しさ舐めてました…
仕事納めの次の日にも仕事あるとは…(白目)
徐々に仕事にも慣れてき始めましたので書く時間が取れるよう頑張ります!
ご感想や高評価いただきますと励みなりますのでぜひお願いします!!
転職した方がいいのかな…




