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第8話「ギルドランク昇格試験」

前回のあらすじ


森の見回り依頼を受けたアキラたち。だが、またしても依頼書をちゃんと読まず三日間の泊まり込みと知って慌てることに。森ではBランク魔物オーガキングと遭遇するも、特訓の成果で見事撃破。依頼書を読まない男の冒険は、今日も予想外の方向へ――


-----


「はい、お疲れ様でした」


 森の見回りから帰還した俺たちは、ギルドの受付で報告をしていた。


「三日間、異常なしですね。あ、オーガキング討伐の記録も……って、オーガキング!?」


 マリアさんが目を見開いた。


「あ、はい。森で遭遇しちゃって」


「遭遇しちゃって、じゃないですよ! オーガキングはBランクの魔物ですよ!?」


「でも、なんとかなりました」


「なんとかって……」


 マリアさんが頭を抱える。


「まあ、ガルドさんがいたから大丈夫でしたね」


 リーナがフォローしてくれる。


「ほとんどアキラが倒したけどな」


「ガルド! 余計なこと言わないでください!」


 リーナが慌てる。


「いやいや、事実だろ」


「事実だけど……!」


 二人がやり取りしている間に、マリアさんがギルドカードを確認している。


「えっと、アキラさんのレベルは……971?」


「はい」


「前回が976でしたから、5減ってますね」


「オーガキング1体でそんなに減るんですか?」


 リーナが首を傾げる。


「そうみたいですね……」


 マリアさんも困惑している。


「ますます謎が深まるわね、この現象」


-----


「アキラ、ちょっといいか?」


 報告を終えて食堂に向かおうとしたとき、セリアさんに呼び止められた。


「はい、何ですか?」


「君のギルドランク、そろそろ上げてもいい頃だと思うんだが」


「ギルドランク?」


「ああ。今のままだとFランクのままだろ? 君の実力なら、少なくともDランクにはなれる」


「マジですか!?」


 俺は目を輝かせた。


「ああ。ただし、昇格試験に合格する必要がある」


「昇格試験……」


「FランクからEランクへの昇格は簡単だが、EランクからDランクは少し難しい。だが、君なら飛び級でDランクにいけるだろう」


「飛び級!?」


「待ってください!」


 リーナが慌てて割り込んできた。


「いくらアキラさんが強くても、飛び級は無理ですよ! ちゃんと段階を踏まないと!」


「リーナの言うことも分かるが、アキラの実力は明らかに規格外だ。Fランクの依頼では物足りないだろう?」


「それはそうですけど……」


 リーナが唇を噛む。


「アキラ、どうする? 受けてみるか?」


「うーん……」


 俺は少し考えた。


「やります!」


「アキラさん!?」


「だって、面白そうじゃん!」


「面白そうって……」


 リーナがため息をつく。


「よし、決まりだ。じゃあ、明日の朝、試験会場に来てくれ」


「了解です!」


-----


 その夜、宿舎。


「アキラさん、本当に大丈夫なんですか?」


 リーナが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫大丈夫! なんとかなるって!」


「なんとかなる、じゃないですよ。昇格試験は結構厳しいんですから」


「どんな試験なの?」


「えっと、確か筆記試験と実技試験があったはずです」


「筆記試験!?」


 俺は固まった。


「あ、今更気づいたんですか……」


 リーナがジト目で見てくる。


「いや、だって、戦うだけかと……」


「冒険者は戦うだけじゃないんです。魔物の知識、薬草の知識、依頼の受け方、パーティーの組み方、色々学ばないといけないんですよ」


「うわあ……」


 頭が痛くなってきた。


「大丈夫か、アキラ?」


 ガルドが心配そうに言う。


「俺、勉強苦手なんだよね……」


「マジか」


「マジです……」


 リーナが頭を抱えた。


「じゃあ、今から勉強しましょう!」


「今から!?」


「当たり前です! 明日試験なんですから!」


 こうして、俺の一夜漬け勉強が始まった。


-----


「まず、魔物の分類から。魔物は大きく分けて、獣型、爬虫類型、不定形型、魔法生物型の四つに――」


「ふぁああ……」


 俺は欠伸をした。


「聞いてます!?」


「聞いてる聞いてる! 四つに分かれるんだよね」


「それだけじゃないです! それぞれの特徴と弱点を覚えないと!」


「えー……」


「えーじゃないです! 獣型は物理攻撃に強いけど魔法に弱い。爬虫類型は防御力が高いけど氷属性に弱い。不定形型は物理攻撃が効きにくいけど――」


「ちょ、ちょっと待って! 早すぎる!」


「これくらい普通ですよ!」


 リーナが容赦ない。


「……アキラ、頑張れ」


 ガルドが遠くから応援してくれる。お前も手伝ってくれよ!


-----


 二時間後。


「次は薬草の知識です。この絵を見て、名前と効能を答えてください」


 リーナが絵を見せてくる。


「えっと……これは……緑色で……葉っぱが……」


「それだけじゃ分かりません!」


「うう……」


「これは『治癒草』です。傷を治す効果があります。覚えてください」


「治癒草……治癒草……」


「次! これは?」


「え、えっと……」


「『解毒草』です! 毒を消す効果があります!」


「解毒草……」


「次!」


「早い早い!」


 俺の脳みそが悲鳴を上げている。


-----


 さらに二時間後。


「最後に、依頼の受け方です。依頼書を受け取ったら、まず何をしますか?」


「えっと……」


 俺は必死に考える。


「……読む?」


「そうです! 依頼書を読むんです! これ、一番大事ですからね!?」


 リーナが強調する。


「う、うん……」


「本当に分かってます? アキラさん、今まで一度も依頼書をちゃんと読んだことないですよね?」


「……ごめん」


「ごめんじゃないです! 明日の試験では、依頼書を読んで内容を説明する問題が出るかもしれないんですよ!?」


「マジで!?」


「マジです! だから、ちゃんと覚えてください!」


「わ、分かった……」


-----


 深夜。


「……アキラさん?」


 リーナが呼びかける。


「……zzz」


 俺は机に突っ伏して寝ていた。


「寝ちゃってる……」


「まあ、仕方ないだろ。四時間も勉強したんだ」


 ガルドが苦笑する。


「でも、明日の試験……」


「大丈夫だろ。アキラは実技で取り返せる」


「そうですけど……」


 リーナが不安そうにため息をついた。


-----


 翌朝、試験会場。


「おはようございます!」


 俺は元気に挨拶した。


「……アキラさん、眠そうですね」


「大丈夫大丈夫! バッチリだよ!」


「本当ですか……?」


 リーナが疑いの目で見てくる。


「それでは、試験を始める」


 セリアさんが現れた。


「まずは筆記試験だ。制限時間は一時間。問題用紙を配る」


 試験官が問題用紙を配り始める。


「……うわ」


 問題用紙を見た瞬間、俺は固まった。


 問題が……全然分からない。


「それでは、始め」


-----


 一時間後。


「……できました」


 俺は問題用紙を提出した。


「お疲れ様です。手応えはどうでしたか?」


 リーナが心配そうに聞く。


「えっと……」


「……ダメだったんですね」


「ごめん……」


「まあ、実技で頑張りましょう」


 リーナが優しくフォローしてくれる。


-----


「それでは、次は実技試験だ」


 セリアさんが訓練場に案内してくれた。


「実技試験の内容は、模擬戦闘だ」


「模擬戦闘?」


「ああ。こちらが用意した相手と戦ってもらう。制限時間は十分。相手を戦闘不能にするか、ギブアップさせれば合格だ」


「分かりました!」


 俺は気合を入れる。


「それでは、相手を紹介しよう」


 セリアさんが手を挙げると、訓練場の入口から人影が現れた。


「よろしくな、新人」


 ――ダリウスだった。


「あんた!?」


「ああ。俺が試験官だ」


 ダリウスがニヤリと笑う。


「ちょ、ちょっと待ってください! ダリウスさんはDランクですよね!? Fランクの試験相手として強すぎませんか!?」


 リーナが抗議する。


「いいや、適切だ」


 セリアさんが冷静に答える。


「アキラはBランクのオーガキングを倒している。Dランク相手なら余裕だろう」


「そ、それはそうですけど……」


「問題ない。それに、飛び級を希望したのはアキラ自身だ」


「うっ……」


 リーナが言葉に詰まる。


「さあ、始めようぜ」


 ダリウスが剣を構える。


「……よし」


 俺も木剣を構えた。ガルドに教わった構えだ。


「それでは――試験開始!」


-----


 ダリウスが一気に距離を詰めてくる。


「遅い!」


 俺は横にステップ。ガルドの特訓で身につけた回避だ。


「ほう、やるな」


 ダリウスが追撃してくる。


「でも、まだまだ!」


 連続攻撃。一撃、二撃、三撃――


 俺は全部避ける。


「……っ!」


 ダリウスの顔が焦りの色を見せる。


「俺の番だ!」


 俺はカウンターで剣を振る。


「甘い!」


 ダリウスが剣で受け止める。


 ガキン!


 木剣がぶつかり合う音。


「……重い」


 ダリウスが驚いた顔をする。


「へへ、特訓したからね!」


 俺は連続で剣を振るう。


 一撃、二撃、三撃、四撃――


「くっ!」


 ダリウスが後退する。


「すごい……アキラさん、本当に強くなってる……」


 リーナが驚いている。


「まだだ!」


 俺は追撃する。


「舐めるなよ!」


 ダリウスが反撃してくる。だが――


「遅い!」


 俺の剣がダリウスの腹に命中。


「ぐはっ!」


 ダリウスが吹き飛ぶ。


「……勝負あり」


 セリアさんが試験終了を告げた。


-----


「やった! 合格!?」


「ああ。実技は文句なしの合格だ」


 セリアさんが頷く。


「ただし――」


「ただし?」


「筆記試験の点数が……ギリギリだな」


「えっ……」


「まあ、合格点は超えている。総合的に見て、君はEランクに昇格だ」


「Eランク!? 飛び級は?」


「筆記がもう少し良ければDランクだったんだがな。残念だ」


 セリアさんが苦笑する。


「うう……」


「でも、Eランクでも十分すごいですよ! 普通は何ヶ月もかかるんですから!」


 リーナが慰めてくれる。


「そうなのか?」


「そうです! アキラさんは冒険者になって、まだ二週間くらいですよね? それでEランクなんて異例中の異例です!」


「へへ、そっか」


 少し元気が出てきた。


-----


「おめでとう、アキラ」


 ガルドが肩を叩いてくれる。


「ありがとう、ガルド!」


「これからも頑張れよ」


「うん!」


「それにしても……」


 リーナが呟く。


「筆記試験、もう少し勉強してれば……」


「ご、ごめん……」


「次からはちゃんと勉強してくださいね?」


「う、うん……」


 俺は反省した。


-----


 その夜、ギルドの食堂。


「Eランク昇格、おめでとうございます!」


 マリアさんが祝福してくれた。


「ありがとうございます!」


「新しいギルドカードです。大切にしてくださいね」


 マリアさんが新しいカードを手渡してくれる。


 ――桜井アキラ、Eランク冒険者。


「おお、なんかカッコいい!」


「良かったですね、アキラさん」


 リーナが微笑む。


「うん! これからもっと頑張るぞ!」


「その意気だ!」


 ガルドが笑う。


「じゃあ、明日から新しい依頼を受けようぜ!」


「おう!」


-----


 翌日、ギルドの依頼掲示板。


「Eランクになったから、受けられる依頼が増えたな」


 俺は依頼掲示板を見上げる。


「そうですね。Eランクなら、もう少し難しい依頼も受けられます」


「どれにしようかな……」


 俺は依頼書を眺める。


「アキラさん、ちゃんと読んでくださいね?」


「分かってるって!」


 俺は一枚の依頼書を手に取った。


 ――『洞窟探索』Eランク、報酬:銀貨100枚


「洞窟探索か。面白そう!」


「ちょっと、内容は?」


「え? あ、えっと……」


 俺は依頼書を読む。


 ――『王都近郊の洞窟を探索し、奥にある宝箱を回収すること。ただし、洞窟内には魔物が生息している可能性あり』


「宝箱!? なにそれ、ワクワクする!」


「……本当に読みましたか?」


「読んだって! 宝箱を取ってくればいいんでしょ?」


「まあ、そうですけど……」


 リーナが不安そうな顔をする。


「大丈夫だろ。俺たちなら」


 ガルドが笑う。


「じゃあ、これで決まりだな!」


 俺は受付に向かった。


-----


 だが、この時の俺は知らなかった。


 その洞窟が、とんでもない場所だということを――


-----


## 次回予告


第9話「洞窟の奥に潜むもの」


Eランクに昇格したアキラは、新たな依頼「洞窟探索」を受ける。宝箱を取ってくるだけの簡単な依頼のはずが、洞窟の奥には予想外の魔物が待ち受けていて――!?


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