第66話『レベル200代の苦悩』
前回のあらすじ
王都を襲撃した影の組織。シャドウドラゴン五体との死闘の末、何とか撃退に成功するが、ゼクスの圧倒的な力を見せつけられたアキラ。マイナスレベルに到達するため、レベルを下げる旅に出る! 目指すは魔境の森――そこで待ち受けるのは、想像を絶する苦難だった――!
-----
魔境の森。
深い緑に覆われた、モンスターの巣窟だ。
「よし……」
アキラが木剣を構える。
「ここで、レベルを一気に下げるぞ!」
「でも、無理はしないでね」
リーナが心配そうに言う。
「大丈夫大丈夫! 俺、レベル300もあるし!」
「それがいつまで続くか……」
リーナが呟く。
その時――
ガサガサガサ……
茂みが揺れた。
「来た!」
アキラが身構える。
現れたのは、巨大な猪――ギガントボア。Bランク中位のモンスターだ。
「よっしゃ!」
アキラが突っ込む。
「せいやっ!」
木剣を振り下ろす――
ドゴォンッ!
ボアの頭に直撃。
「グエエエエ!」
ボアが悲鳴を上げて倒れた。
バキッ!
木剣も折れる。
「よし、一体!」
アキラがガッツポーズする。
「レベル、下がった?」
「たぶん……少しだけ」
リーナが呆れる。
「まだまだ先は長いわよ」
「わかってる! 次行こう!」
-----
三時間後。
「はあ……はあ……」
アキラは、息を切らしていた。
周囲には、倒したモンスターの死骸が転がっている。
ギガントボア×10体、マッドベア×8体、シャドウウルフ×5体――
「何体……倒したんだ……」
「相当よ」
リーナが水筒を渡す。
「でも、まだレベル250くらいじゃない?」
「マジで……」
アキラががっくりする。
「あと250も下げなきゃいけないのか……」
「頑張りましょう、アキラさん!」
エリンが励ます。
「ああ……」
アキラが立ち上がる。
「よし、続けるぞ!」
-----
さらに五時間後。
「うおおおお!」
アキラが木剣を振るう。
ダークウルフの群れに突っ込み、次々と薙ぎ払っていく。
バキッ、バキッ、バキッ――
木剣が折れる音が、連続で響く。
「また折れた!」
「もう何本目よ……」
リーナがため息をつく。
「えっと……」
アキラが腰の木剣入れを見る。
「あと……15本……」
「減りすぎでしょ!」
「仕方ないだろ!」
ガルドが笑う。
「ガハハ! まあ、アキラらしいな!」
「笑うな!」
-----
夕暮れ。
「ふう……」
アキラたちは、森の中で野営の準備をしていた。
「今日だけで、レベル200まで下がったわね」
リーナが焚き火を起こしながら言う。
「レベル300から200……頑張ったじゃない」
「でも……」
アキラが自分の手を見る。
「何か……力が弱くなってきた気がする」
「当たり前よ」
リーナが言う。
「レベルが下がれば、ステータスも下がる。あなたの全ステータスは、レベル×1000だから……今は20万ってことね」
「20万……」
アキラが呟く。
「前は51万5千あったのに……」
「まあ、それでもまだ強い方よ」
リーナが笑う。
「普通のAランク冒険者でも、全ステータス10万程度だから」
「そっか……」
アキラが安心する。
「なら、まだ大丈夫だな」
だが、リーナの表情は少し曇っていた。
「ええ……今は、ね」
-----
翌日。
「よし、今日も頑張るぞ!」
アキラが気合を入れる。
レベルは200。全ステータスは20万。
「次の敵は……」
森の奥から、巨大な影が現れた。
オーガキング。Bランク上位のモンスターだ。
「おお、でかいな!」
アキラが木剣を構える。
「行くぞ!」
突っ込む――
だが。
「せいやっ!」
木剣を振るう。
オーガキングの腕に当たる――
ガキィンッ!
「あれ?」
木剣が弾かれた。
「効いてない……?」
「グオオオオ!」
オーガキングの拳が振り下ろされる。
「うおっ!」
アキラが横に跳ぶ。
拳が地面を砕く。
「やべっ……避けるので精一杯……」
もう一度、木剣を振るう。
今度は何とかダメージが入った――が。
バキッ!
木剣が折れる。
だが、オーガキングはまだ倒れない。
「え……まだ……?」
「アキラ! 下がって!」
リーナが炎魔法を放つ。
「ファイアボルト!」
炎がオーガキングに命中する。
ガルドも斬りかかる。
「はあっ!」
大剣がオーガキングを斬り裂く。
「グガアアア!」
ようやく、オーガキングが倒れた。
「ふう……」
アキラが息をつく。
「何か……前より……きつい……」
「当たり前よ」
リーナが言う。
「あなた、もうレベル200なのよ? 全盛期の半分以下の力しかないの」
「そっか……」
アキラが自分の手を見つめる。
「俺……弱くなってるんだな……」
「でも、これが目的でしょ?」
ガルドが肩を叩く。
「レベルを下げて、マイナスになるんだ」
「……ああ」
アキラが頷く。
「そうだった。よし、続けるぞ!」
-----
それから、戦闘は続いた。
だが――
アキラの体感として、明らかに敵が強くなっていた。
いや、正確には――
自分が弱くなっていた。
「くっ……」
Bランクのモンスターとの戦闘で、息が上がる。
木剣を振るうが、一撃では倒せない。
二撃、三撃と叩き込んで、ようやく倒せる。
「はあ……はあ……」
「アキラ、大丈夫?」
エリンが心配そうに尋ねる。
「あ、ああ……大丈夫……」
だが、体は正直だった。
疲労が、確実に蓄積していく。
「ヒール」
エリンが回復魔法をかけてくれる。
傷は癒えるが、疲労は残る。
「ありがとう……エリン……」
「無理しないでくださいね」
「うん……」
-----
夕方。
「今日は……ここまでにしましょう」
セレスティアが提案する。
「アキラさん、かなり疲れていますわ」
「そうね……」
リーナも同意する。
「今日だけで、レベル150まで下がったわ。十分よ」
「でも……」
アキラが立ち上がろうとして――
ふらっ。
膝が崩れた。
「アキラ!」
リーナが支える。
「もう限界よ。今日は休みなさい」
「……わかった」
アキラが観念する。
焚き火の前に座り、エリンが作ったスープを飲む。
「美味しい……」
温かいスープが、疲れた体に染み渡る。
「レベル150か……」
アキラが呟く。
「全ステータス15万……もう、普通のAランク冒険者より少し強いくらいか……」
「ええ」
リーナが頷く。
「そして、これから先――もっと辛くなるわ」
「……わかってる」
アキラが拳を握る。
「でも、やるしかない」
-----
翌日。
レベル150のアキラは、Cランクのモンスターと戦っていた。
ジャイアントスパイダー。
「うおおお!」
木剣を振るう。
スパイダーの足に当たる――が。
「硬っ!」
ダメージは入ったが、致命傷には至らない。
「シャアアアア!」
スパイダーが糸を吐く。
「やべっ!」
アキラが横に跳ぶ。
糸が木に当たり、木がバキバキと音を立てる。
「あの糸、やばい……」
もう一度、木剣を振るう。
今度は頭部に命中――
バキッ!
木剣が折れる。
だが、スパイダーもようやく倒れた。
「はあ……はあ……」
アキラがその場に膝をつく。
「Cランクで……こんなに苦戦するなんて……」
「アキラ、後ろ!」
リーナの声が響く。
振り返ると――
さらに三体のジャイアントスパイダーが現れていた。
「嘘だろ……」
アキラが青ざめる。
「ファイアボルト!」
リーナが炎を放つ。
一体が燃え上がる。
ガルドも斬りかかる。
「アキラは下がってろ!」
「で、でも……」
「いいから!」
アキラは、仲間に守られる形で戦闘を見守った。
自分が……仲間の足を引っ張っている。
「くそっ……」
拳を握りしめる。
-----
その夜。
「今日で、レベル100まで下がったわ」
リーナが報告する。
「レベル100……」
アキラが呟く。
「全ステータス10万……これって……」
「普通のBランク冒険者と、同じくらいね」
リーナが言う。
「つまり、あなたはもう……特別強いわけじゃない」
「……そっか」
アキラが空を見上げる。
星が、静かに瞬いていた。
「俺……普通の冒険者になっちゃったんだな……」
「でも、これが必要なことよ」
リーナが隣に座る。
「マイナスレベルに到達するためには、レベル0を超えなきゃいけない」
「ああ……」
アキラが頷く。
「わかってる。でも……」
「怖い?」
リーナが優しく尋ねる。
「……少し」
アキラが正直に答える。
「弱くなるのって……怖いな」
リーナが、アキラの手を握った。
「大丈夫よ」
「リーナ……」
「私たちがいる。ガルドもエリンもセレスティアも、みんなあなたを守る」
「みんな……」
「だから、安心してレベルを下げなさい」
リーナが笑う。
「あなたは一人じゃない」
「……ありがとう」
アキラが笑顔を見せた。
「よし、明日も頑張るぞ!」
-----
翌日。
レベル100のアキラは、Dランクのモンスターと戦っていた。
ケイブベア。
「うおおお!」
木剣を振るう――が。
「あれ?」
ベアの体に当たったが、ほとんどダメージが入っていない。
「グルルル……」
ベアが反撃してくる。
「うわっ!」
アキラが必死に避ける。
だが、完全には避けきれず――
爪が肩をかすめた。
「痛っ!」
血が滲む。
「アキラ!」
エリンが駆け寄る。
「ヒール!」
傷が癒える。
「ありがとう……」
アキラが立ち上がる。
「もう一回……」
木剣を構え直す。
今度は、両手で力いっぱい振り下ろす。
ドゴッ!
ベアの頭に命中――
バキッ!
木剣が折れる。
ベアも、ようやく倒れた。
「やった……」
アキラがその場に座り込む。
「Dランクで……こんなに疲れるなんて……」
ガルドが笑う。
「ガハハ! お前も普通の冒険者になったな!」
「笑うなよ……」
アキラが苦笑する。
だが、その顔には――
どこか、安心したような表情があった。
仲間に守られている。
仲間と一緒に戦っている。
それが、嬉しかった。
「よし……」
アキラが立ち上がる。
「次行こう。まだまだレベル下げるぞ!」
「ええ!」
全員が頷いた。
こうして、レベル100のアキラは――
仲間に支えられながら、さらにレベルを下げる戦いを続けるのだった。
-----
## 次回予告
レベル100まで下がったアキラ! だが、ここからが本当の地獄だった……! レベル50以下になると、もはや普通の冒険者以下! ゴブリンにすら苦戦し、命の危険が――!?
**次回、第67話『レベル100代の恐怖』お楽しみに!**
-----
## アキラの現在ステータス
- **レベル**: 150(-150)
- **全ステータス**: 150,000
- **ギルドランク**: Aランク
- **パーティランク**: Aランク
- **所持金**: 金貨197枚、銀貨35枚
- **木剣**: 17本(-20本)
- **仲間**: リーナ(Aランク)、ガルド(Aランク上位)、エリン(Bランク)、セレスティア(Bランク)
-




