第61話『仲間との絆』
前回のあらすじ
地下牢からの脱出作戦は成功し、セレスティアの家族を含む三十人以上の囚人を救出! だが脱出直後、影の組織の真のボス・ゼクスが現れる。時間停止という圧倒的な力を見せつけられ、アキラは言いようのない恐怖を感じるのだった――。
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雪が、静かに降り続けていた。
北の山脈を後にして、アキラたちは街道を南へと歩いていた。救出した囚人たちは、最寄りの街で保護されることになり、セレスティアの家族も無事に王都へ帰ることができた。
長い戦いが、ようやく終わったのだ。
「ふう……」
アキラが大きく息を吐く。白い息が、冷たい空気に溶けていった。
「疲れたな……」
「当たり前でしょ」
リーナが呆れたように答える。
「あんた、あれだけ暴れたんだから」
「いやいや、でも楽しかったじゃん?」
「楽しくない」
即答だった。
「冷たっ!」
「冷たくない。事実よ」
リーナがツンとそっぽを向く。
アキラは苦笑しながら、空を見上げた。灰色の雲が空を覆い、雪がひらひらと舞い降りている。
「でも……」
彼の脳裏に、あの男の顔が浮かんだ。
ゼクス。
あの圧倒的な存在感。時間を止めるという、規格外の能力。
「お前が逆転者か。面白い……だが、まだまだ弱い」
あの言葉が、まだ耳に残っている。
「……」
アキラは無意識に拳を握りしめた。
「アキラ?」
リーナが不思議そうに顔を覗き込む。
「どうしたの? さっきから黙り込んで」
「あ、いや……」
アキラが慌てて笑顔を作る。
「何でもない、何でも」
「嘘つき」
リーナがじっと見つめる。
「……え?」
「あんた、何か隠してるでしょ」
「いやいやいや、隠してないって!」
「隠してる」
「隠してない!」
「隠してる」
「隠してないってば!」
二人の掛け合いに、後ろを歩いていたガルドが笑った。
「ガハハ! 相変わらず仲がいいな、お前ら」
「仲良くない!」
二人が声を揃えて否定する。
「それが仲良い証拠だろ」
ガルドがニヤニヤ笑う。
「ガルドさん、からかわないでください……」
エリンが困ったように笑った。
「アキラさんとリーナさんは、本当に息ぴったりですよね」
「だから違うって!」
アキラが真っ赤になって否定する。
「ふふっ」
セレスティアが上品に笑った。
「でも、素敵なことだと思いますわ。こうして仲間と笑い合えるって」
その言葉に、アキラの表情が少し和らいだ。
「……そうだな」
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夕暮れ時。
一行は、街道沿いの小さな宿屋に辿り着いた。
「やっと着いた……」
アキラが荷物を下ろす。
「今日はここで休もう。明日、王都に戻る」
ガルドが提案すると、全員が頷いた。
宿屋の主人は気さくな老人で、快く部屋を貸してくれた。食堂では温かいシチューと焼きたてのパンが振る舞われ、疲れた体に染み渡る。
「うまっ!」
アキラが目を輝かせる。
「久しぶりのちゃんとした食事だな」
「そうね……」
リーナも嬉しそうにスプーンを運ぶ。
「美味しいです……!」
エリンが幸せそうに微笑む。
「これは……家庭の味、ですわね」
セレスティアも穏やかな表情だ。
ガルドが豪快にパンを齧りながら言った。
「まあ、今回は本当に大変だったな」
「ああ……」
アキラが頷く。
「でも、セレスティアの家族を助けられて良かった」
「本当に……」
セレスティアが目を伏せる。
「皆さんのおかげです。私一人では、絶対に……」
「気にすんなって」
アキラがケラケラ笑う。
「俺たち、仲間だろ?」
その言葉に、セレスティアが微笑んだ。
「……はい」
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食事を終え、アキラは一人、宿屋の外に出た。
夜の冷気が頬を撫でる。星が、雲の切れ間から顔を覗かせていた。
「ふう……」
彼は空を見上げる。
あの時の感覚が、まだ体に残っていた。
時間が止まった、あの瞬間。
動くことも、声を出すことも、何もできなかった。
「まだまだ弱い、か……」
アキラが呟く。
自分は確かに強くなった。レベルは下がり続けているが、それでも戦闘能力は上がっている。仲間も増えた。
でも――
ゼクスの前では、まるで子供のようだった。
「くそっ……」
拳を握りしめる。
「アキラ」
背後から声がした。
振り返ると、リーナが立っていた。
「リーナ?」
「やっぱり、ここにいたのね」
彼女が隣に立つ。
「……何か、あったんでしょ?」
「え?」
「さっきから、様子がおかしいもの」
リーナがじっとアキラを見つめる。
「脱出した時、一瞬だけど……あんた、すごく怖い顔してた」
「……」
アキラは言葉に詰まる。
リーナは静かに続けた。
「無理に話さなくてもいい。でも……一人で抱え込まないで」
「リーナ……」
「私たち、仲間でしょ?」
その言葉に、アキラの胸が熱くなった。
しばらくの沈黙の後、彼はゆっくりと口を開いた。
「……実は、な」
アキラが、ゼクスのことを話し始める。
時間停止のこと。
あの圧倒的な力のこと。
「マイナスレベルに到達したら、全てを奪う」と言われたこと。
全てを話し終えると、リーナは深く息を吐いた。
「そう……そんなことが……」
「ごめん。黙ってて」
「謝らないで」
リーナが首を振る。
「あんたが話したくなかったのは、私たちを心配させたくなかったからでしょ?」
「……うん」
「バカね」
リーナが小さく笑った。
「私たちは仲間なのよ? 一緒に戦ってきたんだから、一緒に悩めばいいじゃない」
「でも……」
「でも、じゃない」
リーナがアキラの目を真っ直ぐ見つめる。
「確かに、そのゼクスって人は強いのかもしれない。でも」
彼女が力強く言った。
「あんたは一人じゃない。私たちがいる」
「リーナ……」
「ガルドもエリンもセレスティアも、みんなあんたの仲間よ。一緒に戦うわ」
その言葉が、アキラの心に温かく染み渡った。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
リーナがにっこり笑う。
「それに」
彼女が少し照れくさそうに付け加えた。
「あんたがいなくなったら……私、困るし」
「え?」
「な、何でもない!」
リーナが慌てて顔を背ける。
「今の聞こえた?」
「聞こえてない! 忘れなさい!」
「いやいや、めっちゃ気になるんだけど!」
「うるさい!」
リーナがアキラの足を踏んだ。
「いてっ!」
「バカ!」
顔を真っ赤にしたリーナが宿屋の中へと戻っていく。
アキラはその背中を見送りながら、ふっと笑った。
「……ありがとな、リーナ」
夜空の星が、優しく瞬いていた。
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翌朝。
「さて、出発するか」
ガルドが荷物を背負う。
「王都まで、あと二日ってとこだな」
「はい!」
エリンが元気よく答える。
「早く帰りたいですね」
「そうですわね」
セレスティアも笑顔だ。
アキラとリーナは、何となく気まずそうにしている。
「……おはよ」
「……おはよう」
二人とも目を合わせない。
「ん?」
ガルドが首を傾げる。
「お前ら、何かあったのか?」
「何もない!」
二人が同時に否定する。
「……怪しいな」
ガルドがニヤニヤする。
「怪しくない!」
「怪しくないです!」
「それが怪しい」
「ガルドさん、からかわないでください……」
エリンが困ったように笑った。
セレスティアも、上品に微笑んでいる。
「ふふっ。皆さん、本当に仲が良いんですのね」
「だから違うって!」
アキラとリーナが声を揃えて叫ぶ。
その様子に、全員が笑った。
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街道を歩きながら、アキラは思う。
確かに、ゼクスは強い。
圧倒的に強い。
でも――
自分には、仲間がいる。
リーナがいる。ガルドがいる。エリンがいる。セレスティアがいる。
一人じゃない。
「よし!」
アキラが拳を握る。
「俺、もっと強くなる!」
「急にどうしたの?」
リーナが不思議そうに尋ねる。
「いや、なんか……やる気出てきた!」
「はあ……」
リーナが呆れるが、その顔は笑っていた。
「まあ、いいけど。頑張りなさいよ」
「おう!」
アキラが笑顔で答える。
ガルドが豪快に笑った。
「ガハハ! それでこそアキラだ!」
「アキラさん、頑張ってください!」
エリンが応援する。
「私も、お力になりますわ」
セレスティアも微笑む。
アキラは、仲間たちの顔を見渡した。
ああ、俺は――
本当に、恵まれてるな。
「よっしゃ、王都に帰ったら、美味いもん食おうぜ!」
「賛成!」
「いいですね!」
「私もご一緒しますわ」
「ガハハ、いいな! 俺も腹減ってたんだ!」
五人の冒険者が、笑いながら街道を歩いていく。
冬の冷たい風が吹いているが、心は温かかった。
仲間と共に、前へ進む。
それが、アキラたちの道だった。
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数日後。
王都に戻ったアキラたちは、ギルドに報告を行った。
「なるほど……セレスティアの家族を救出し、さらに多くの囚人も助けたのか」
ギルドマスターが感心したように頷く。
「よくやった。これは……Aランク昇格に値する功績だな」
「え、マジで!?」
アキラが目を輝かせる。
「ああ。後日、正式に試験を行うが……まあ、形だけだろう」
「やった!」
アキラが喜ぶ。
リーナも嬉しそうだ。
「私たちも、ついにAランクね……」
「ガハハ! めでたいな!」
ガルドが肩を叩く。
「アキラさん、おめでとうございます!」
エリンが満面の笑みだ。
「本当に、素晴らしいですわ」
セレスティアも拍手する。
ギルドマスターが立ち上がった。
「さて、君たちにはしばらく休暇を取ってもらおう。ゆっくり休むといい」
「はい!」
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ギルドを出ると、夕日が王都を照らしていた。
「ふう……」
アキラが伸びをする。
「やっと終わったな」
「ええ……」
リーナも安堵の表情だ。
「さて、じゃあ……」
ガルドが提案する。
「飯、食いに行くか?」
「賛成!」
全員が笑顔で頷いた。
五人は、王都の賑やかな通りを歩いていく。
明日からまた、新しい冒険が始まる。
でも今日は――
仲間と共に、この平和を噛みしめよう。
アキラは、心からそう思った。
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だが、彼はまだ知らない。
影の組織が、次の計画を進めていることを。
ゼクスが、静かに動き出していることを。
そして――
アキラを待ち受ける、さらなる試練のことを。
物語は、まだ終わらない。
むしろ、これからが本番だった。
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次回予告
束の間の平和を楽しむアキラたち。だが、影の組織は次の計画を進めていた! そして、クロウから新たな試練の知らせが――!? 第三章、ついにクライマックスへ!
**次回、第62話『再会と警告』お楽しみに!**
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## アキラの現在ステータス
- **レベル**: 515(変動なし)
- **全ステータス**: 515,000
- **ギルドランク**: Bランク(Aランク昇格確定)
- **所持金**: 金貨197枚、銀貨35枚(報酬受領)
- **木剣**: 97本
- **仲間**: リーナ、ガルド、エリン、セレスティア




