第59話『地下牢の家族』
前回のあらすじ
影の組織の拠点に侵入したアキラたち。囮班と救出班に分かれ、アキラとガルドが正面から派手に暴れている間に、リーナ、エリン、セレスティアの三人が裏口から侵入成功! 地下牢を目指して階段を降り始めるが、果たしてセレスティアの家族は無事なのか――!?
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地下への階段は、果てしなく続いているように思えた。
石造りの壁からは湿気が滲み、松明の炎が不気味に揺れている。空気は冷たく澱んでおり、カビ臭い匂いが鼻をついた。
「こんなに深いなんて……」
エリンが不安そうに呟く。
リーナが先頭を歩きながら、警戒を怠らない。杖を構え、いつでも魔法を放てる体勢を維持している。
「気をつけて。罠があるかもしれないわ」
「はい……」
セレスティアが震える声で答える。その手は杖を強く握りしめ、顔は緊張で強張っていた。
階段を降りること数分――ようやく、底が見えてきた。
「着いた……」
リーナが立ち止まる。
目の前には、重厚な鉄の扉があった。錆びついた表面には、古代文字が刻まれている。
「これが……地下牢の入口……」
セレスティアが息を呑む。
エリンが扉に手を触れようとしたとき――
ガチャリ。
扉が、内側から開いた。
「!」
三人が咄嗟に身を引く。
扉の向こうから現れたのは――黒い服を着た組織の戦闘員。
「なっ……侵入者!?」
戦闘員が驚きの声を上げる。
「まずい!」
リーナが即座に杖を振るう。
「ファイアボルト!」
炎の塊が放たれ、戦闘員に直撃した。
「ぐああっ!」
悲鳴を上げて倒れる戦闘員。
「今のうちに!」
三人が地下牢へと飛び込む。
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地下牢は、想像以上に広かった。
石の柱が並び、その間に無数の檻が配置されている。松明の光が床に影を落とし、どこか異様な雰囲気を醸し出していた。
「これは……」
リーナが息を呑む。
檻の中には、人々が囚われていた。
老人、若者、子供――様々な人々が、絶望的な表情で座り込んでいる。
「こんなに……たくさん……」
エリンが目を見開く。
「父さん! 母さん! レオン!」
セレスティアが叫びながら駆け出した。
奥の檻の前で、彼女が立ち止まる。
そこには――中年の男性と女性、そして十歳くらいの少年が囚われていた。
「セレスティア……!?」
男性――父親が驚きで声を上げる。
「なぜ、ここに……!」
「お父様!」
セレスティアが檻に駆け寄る。
「無事だったんですね……! 良かった……本当に……!」
涙が溢れ出す。
母親も少年も、セレスティアを見て目を見開いた。
「お姉ちゃん……」
レオンが小さく呟く。
「待って、今助けるから!」
セレスティアが檻の鍵を調べようとしたとき――
「そう簡単に、逃がすと思うか?」
低い声が、地下牢に響いた。
三人が振り返る。
そこには、黒いローブを纏った男が立っていた。フードの奥から、冷たい視線が三人を見下ろしている。
「誰……!?」
リーナが警戒する。
「俺か? 俺はこの地下牢の管理者だ。名前は……まあ、どうでもいいだろう」
男が手を振ると、周囲の影が蠢き始めた。
そこから現れたのは――四体の魔物。
狼に似た形状だが、全身が黒い霧のような物質で覆われている。目だけが赤く光り、低い唸り声を上げていた。
「シャドウウルフ……!」
リーナが叫ぶ。
「Bランクの魔物よ……四体同時なんて……!」
「ククク……せいぜい楽しませてもらうぞ」
男が指を鳴らすと、シャドウウルフたちが一斉に飛びかかってきた。
「きゃあ!」
エリンが悲鳴を上げる。
「サンダーボルト!」
リーナが雷魔法を放つ。電撃が一体のウルフに直撃し、その体が痙攣した――が、すぐに立ち上がる。
「効いてない!?」
「影の魔物は、物理攻撃も魔法攻撃も半減するんですわ!」
セレスティアが叫ぶ。
「そんな……!」
二体のウルフがリーナに襲いかかる。
「くっ!」
リーナが杖で防御の魔法陣を展開するが、ウルフの爪が魔法陣を突き破り――
「きゃっ!」
リーナが吹き飛ばされた。
「リーナさん!」
エリンが慌てて駆け寄る。
「大丈夫……でも、これは……」
リーナが血の滲む腕を押さえながら立ち上がる。
三体目と四体目のウルフが、セレスティアに向かっていく。
「アイスウォール!」
セレスティアが氷の壁を作り出すが、ウルフはそれを難なく突き破った。
「そんな……!」
「お姉ちゃん!」
レオンが檻の中から叫ぶ。
「くっ……!」
セレスティアが後ろに飛び退くが、背中が壁にぶつかる。
逃げ場はない。
ウルフの牙が、彼女に向かって――
「させるか!」
エリンが割って入り、光の魔法陣を展開した。
「ホーリーシールド!」
光の盾がウルフを弾き飛ばす。
「エリン……!」
「大丈夫です、セレスティアさん!」
だが、四体のシャドウウルフは容赦なく襲いかかってくる。
「ぐっ……!」
リーナが炎の魔法を連発するが、ダメージは限定的だ。
「このままじゃ……!」
三人が窮地に追い込まれたとき――
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一方、城の上層では。
「うおおおおお!」
アキラが木剣を振り回していた。
戦闘員たちが次々と吹き飛ばされ、廊下に転がっていく。
「やっべえ、めっちゃ強いな俺!」
「今更気づくな!」
ガルドがツッコミながら、大剣で敵を薙ぎ払う。
バキッ。
「あっ」
アキラの木剣が、また折れた。
「……何本目だ?」
「えっと……」
アキラが指を折って数える。
「わかんなくなった」
「わかんなくなるな!」
ガルドが呆れる。
「まあいいや、次!」
アキラが新しい木剣を取り出す。
その時――
ドゴォンッ!
遠くで、大きな爆発音が響いた。
「ん?」
アキラが動きを止める。
「今の音……地下の方か?」
ガルドも眉をひそめる。
「まずいな……リーナたちが……!」
「やべっ!」
アキラが走り出す。
「おい、待て!」
ガルドが慌てて追いかけるが――
「うおっ!?」
アキラが廊下の角で滑って転んだ。
ズザザザーッ!
「いってえ……」
「大丈夫か!?」
ガルドが駆け寄る。
「大丈夫大丈夫……って、あれ?」
アキラが立ち上がると、目の前に階段があった。
「おお、ラッキー! 地下への階段見っけ!」
「……転んで正解だったのか?」
「結果オーライ!」
アキラが階段を駆け降りていく。
「おい、待てって!」
ガルドが慌てて追いかける。
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地下牢。
三人の魔法使いは、もはや限界だった。
「はあっ……はあっ……」
リーナが息を切らす。魔力もほぼ底を尽きかけていた。
エリンもセレスティアも、満身創痍だ。
シャドウウルフたちが、じわじわと距離を詰めてくる。
「くっ……」
リーナが杖を構えるが、もう魔法を放つ力は残っていない。
「ククク……諦めろ。お前たちに勝ち目はない」
黒ローブの男が嘲笑う。
その時――
「リーナああああああ!」
扉が勢いよく開いた。
「!」
全員が振り返る。
そこには――
「うおおおおお!」
全力疾走してくるアキラの姿があった。
「アキラ!?」
リーナが驚きで目を見開く。
アキラは勢いそのままに――
シャドウウルフの一体に体当たりした。
ドゴォンッ!
「ぎゃんっ!」
ウルフが壁に激突し、霧のように消えていく。
「……え?」
全員が呆然とする。
アキラが立ち上がる。
「よっしゃ、間に合った……って、あれ?」
彼は自分の手を見る。
「木剣持ってくるの忘れた」
「忘れんなああああ!」
リーナの怒号が響き渡った。
「いやいや、急いでたから!」
「そういう問題じゃない!」
「まあまあ」
アキラが笑いながら、腰の木剣入れから新しい木剣を取り出す。
「ほら、ちゃんとあるし」
「最初から出せ!」
リーナのツッコミが炸裂する。
黒ローブの男が舌打ちした。
「逆転者……!」
「お、俺のこと知ってんの? 有名人だな俺」
「有名になるな」
後ろからガルドが到着し、即座にツッコんだ。
「残りのシャドウウルフ、三体か」
ガルドが大剣を構える。
「よっしゃ、やるか!」
アキラが木剣を構えた。
三体のウルフが一斉に飛びかかってくる。
「せいやっ!」
アキラが一体目に木剣を叩き込む。
バキッ!
木剣が折れると同時に、ウルフが霧散した。
「よし、一体!」
「木剣も一本な」
ガルドがツッコミながら、二体目を大剣で斬り裂く。
残る一体――
「ファイアボルト!」
リーナが最後の魔力を振り絞って炎を放つ。
アキラの攻撃で弱っていたウルフは、その炎を受けて消滅した。
「やった……」
リーナがその場に座り込む。
「お疲れ、リーナ」
アキラが笑いかける。
「疲れたのはあんたのせいよ……」
「ええっ!?」
「まあまあ」
ガルドが苦笑する。
黒ローブの男が後ずさる。
「く、くそ……!」
「逃がすか!」
アキラが追いかけようとして――
ズルッ。
滑って転んだ。
「うおっ!?」
ズザザザーッ!
「……」
「……」
「……さっきから滑りすぎだろ」
ガルドが呆れる。
「だって、床が濡れてるんだもん!」
「言い訳するな」
その隙に、黒ローブの男は影に溶けて消えていった。
「あっ、逃げられた」
「お前のせいだぞ」
「えええ!?」
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檻の前。
「お父様! お母様! レオン!」
セレスティアが駆け寄る。
リーナが魔法で鍵を開けると、檻の扉が開いた。
「セレスティア……!」
父親が娘を抱きしめる。
母親も、レオンも、涙を流しながら抱き合った。
「良かった……本当に……」
セレスティアの頬を、涙が伝う。
「無事で……本当に良かった……」
アキラはその光景を見て、にこりと笑った。
「良かったな、セレスティア」
「アキラさん……皆さん……」
セレスティアが振り返る。
「本当に……ありがとうございます……!」
深々と頭を下げる家族たち。
「気にすんなって」
アキラがケラケラ笑う。
「仲間だろ?」
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だが、周囲にはまだ多くの檻があった。
「この人たちも……助けないと……」
エリンが呟く。
「ああ、全員助けよう」
ガルドが頷く。
「でも、その前に――」
リーナが立ち上がる。
「脱出経路を確保しないと。この人数を連れて逃げるのは……」
「大丈夫だ」
アキラが親指を立てる。
「俺たちがいれば、なんとかなる!」
「根拠のない自信ね……」
リーナが呆れるが、その顔には微かな笑みが浮かんでいた。
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## 次回予告
セレスティアの家族救出成功! だが、地下牢にはまだ多くの囚人が! 全員を連れて脱出できるのか!? そして、組織の真の目的とは――!?
**次回、第60話『脱出作戦』お楽しみに!**
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## アキラの現在ステータス
- **レベル**: 538(-40)
- **全ステータス**: 538,000
- **ギルドランク**: Bランク
- **所持金**: 金貨167枚、銀貨15枚
- **木剣**: 107本(-5本)
- **仲間**: リーナ、ガルド、エリン、セレスティア




