第58話『潜入!影の組織の拠点』
前回のあらすじ
セレスティアの秘密が明らかになった。彼女の家族は影の組織に囚われており、人質に取られていたのだ。アキラは迷わず「助けに行こう」と言い、全員が賛成する。レイヴンから受け取った地図を頼りに、転移門を使って北の山脈へ。そして今、影の組織の巨大な拠点が、五人の目の前にそびえ立っていた――。
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雪が、静かに舞い降りていた。
白い結晶が風に乗って舞い、冷たい空気が肺を刺す。北の山脈特有の凍てつく寒さが、容赦なく冒険者たちの体温を奪っていく。
「さ、さむっ……」
アキラが思わず身を縮める。息が白く凍りつき、視界の先には巨大な廃墟の城が黒々とそびえ立っていた。
「これが……組織の拠点……」
セレスティアが震える声で呟く。その瞳には恐怖と決意が入り混じっていた。
城は古代の建築様式で造られており、黒い石材が威圧的な雰囲気を醸し出している。所々が崩れ落ち、蔦が這い、長い年月を経た痕跡が見て取れる。だが、窓からは微かに光が漏れており――まだ使用されていることは明白だった。
「でかいな……」
ガルドが大剣を背負い直しながら唸る。
「あの中に、セレスティアさんの家族が……」
エリンが不安そうに呟いた。
リーナが地図を広げ、焚き火の灯りで確認する――いや、この雪の中では焚き火など焚けない。彼女は小さな光魔法を灯して、地図を照らし出した。
「城の構造は……正面玄関、東西の塔、中央の大広間、そして地下牢……」
「家族がいるのは?」
アキラが身を乗り出す。
「おそらく……地下牢だと思います」
セレスティアが地図を指差した。その指先が、小刻みに震えている。
「なら、そこを目指せばいいわけだな」
ガルドが力強く頷く。
「でも……」
リーナが眉をひそめた。
「正面から突っ込んで、全員で地下まで行くのは無理がある。敵の数も戦力も未知数よ」
「そうだな……」
アキラが顎に手を当てて考え込む。
しばらくの沈黙の後、ガルドが提案した。
「なら、囮と救出で分かれるか?」
「囮……?」
エリンが首を傾げる。
「ああ。俺とアキラが正面から派手に暴れる。その隙に、お前たちが裏から回って地下牢へ向かうんだ」
「なるほど……」
リーナが頷く。
「敵の注意を引きつけている間に、私たちがセレスティアの家族を救出する、ってわけね」
「その作戦、いいじゃん!」
アキラが目を輝かせた。
「俺、派手に暴れるの得意だし!」
「喜ぶな」
リーナが即座にツッコむ。
「でも……アキラさんとガルドさんだけで大丈夫ですか?」
エリンが心配そうに尋ねる。
「ガハハ! 心配するな、嬢ちゃん!」
ガルドが豪快に笑った。
「このアキラがいれば、どんな敵だって――」
「木剣が粉々になるだけだけどな」
「いやいやいや、それ言うなよ!」
アキラが慌てて反論する。
少しだけ、場の空気が和んだ。
セレスティアが深く頭を下げる。
「皆さん……本当に、ありがとうございます……」
「気にすんな」
アキラがいつもの笑顔を浮かべた。
「仲間だろ?」
その言葉に、セレスティアの目に涙が浮かぶ。
「さて、じゃあ作戦開始だ!」
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城の正面門。
巨大な鉄の扉が、不気味に口を開けている。
「うわ……思ったよりボロいな」
アキラが呟く。
門の両脇には、松明が燃えていた。その炎が雪の中で揺れ、周囲を薄暗く照らし出している。
「見張りは……いないのか?」
ガルドが警戒しながら周囲を見回す。
だが、人の気配はない。
「妙だな……」
「罠、かな?」
「かもな」
二人が慎重に門へと近づいたとき――
ゴゴゴゴゴ……
地面が揺れた。
「うおっ!?」
アキラが慌てて後ろに飛び退く。
門の前の地面が盛り上がり――そこから、三体の異形が姿を現した。
「これは……!」
ガルドが大剣を抜く。
それは、人間の形をした石の魔物だった。全身が灰色の岩石で覆われており、目の部分だけが赤く光っている。高さは二メートルほど。ゴーレムの小型版といったところか。
「ストーンガーディアンね……」
リーナたちも物陰から様子を窺っていた。
「Cランクくらいの魔物だけど……三体同時は厄介よ」
「よっしゃ! いい囮になるじゃん!」
アキラが木剣を抜く。
ストーンガーディアンたちが、ゆっくりとアキラたちに向かって歩み始めた。その足音が、ドスン、ドスンと重く響く。
「ガルド、左右から挟むぞ!」
「おう!」
二人が左右に散る。
一体目のガーディアンがアキラに向かってくる。巨大な石の拳が、鈍い音を立てながら振り下ろされた。
「遅っ!」
アキラが身をかわす。拳が地面を叩き、雪が舞い上がった。
「おらっ!」
木剣を振るう――が、石の体に当たった瞬間、
パキィンッ!
木剣が真っ二つに折れた。
「あっ」
アキラが呆然とする。
「また折れた……」
「今更驚くな!」
ガルドが別のガーディアンに斬りかかる。大剣が石の腕を砕き、破片が飛び散った。
「流石だな、ガルド!」
「お前も早く次の剣出せ!」
「はいはい!」
アキラが新しい木剣を取り出す。
――残り114本。
二体目のガーディアンが、アキラに突進してくる。
「よし、来い!」
アキラが踏み込み、木剣を真横に薙ぐ。
高いステータスから繰り出される一撃は、石の胴体を真っ二つに――
バキィッ!
――したが、同時に木剣も粉々に砕け散った。
「うおっ、また!?」
ガーディアンの上半身が地面に落ち、赤い光が消える。
「一体撃破……」
「木剣も撃破な」
ガルドがツッコミながら、三体目のガーディアンと対峙する。
その巨体が、ガルドに向かって拳を振り下ろす――が、ガルドは大剣で受け止めた。
「ぐっ……重いな!」
火花が散る。
「ガルド!」
アキラが新しい木剣を構え、背後から突っ込む。
「せいやっ!」
木剣が、ガーディアンの背中に突き刺さる――いや、刺さると同時に折れる。
「あっ」
だが、その衝撃でガーディアンのバランスが崩れた。
「今だ!」
ガルドが大剣を振り上げ、真上から叩き落とす。
ズガァンッ!
ガーディアンの頭部が砕け、赤い光が消えた。
「ふう……」
二人が息を整える。
雪の上に、砕けた石の破片が散らばっていた。
「やった……のか?」
「ああ、とりあえずな」
ガルドが頷く。
アキラは木剣をしまいながら、ふと気づく。
「あれ……俺、レベル下がった感じする」
「そりゃ、Cランクを三体倒したからな」
「やった!」
アキラが喜ぶ。
「喜ぶな」
ガルドが呆れたように笑った。
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物陰から、リーナたちが様子を窺っていた。
「アキラたち、うまくやってるわね」
「はい……」
エリンが安心したように頷く。
「なら、私たちも動きましょう」
セレスティアが杖を握りしめる。その表情には、強い決意が浮かんでいた。
「城の裏口は……こっちね」
リーナが地図を確認しながら、三人を導く。
雪を踏みしめながら、彼女たちは静かに城の影を進んでいく。
風が、冷たく頬を撫でていった。
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一方、正面門では――
「よし、これで入れるな!」
アキラが門を押し開ける。
ギィィィ……と重い音を立てて、扉が開いていく。
中は薄暗く、松明の光だけが廊下を照らしていた。石造りの壁には、苔が生え、湿った空気が漂っている。
「さて……どこまで派手に暴れるか」
ガルドが大剣を構える。
「派手に行こうぜ!」
アキラが木剣を抜く。
二人が廊下を進み始めたとき――
「侵入者だ!」
遠くから声が響いた。
「来たな」
ガルドが笑う。
廊下の奥から、黒い服を着た組織の戦闘員たちが現れる。その数、十人以上。
「おお、結構いるじゃん!」
「アキラ、お前はこういう時だけ嬉しそうだな」
「だって、レベル下がるチャンスじゃん!」
「そういう問題か!?」
ガルドがツッコミながらも、大剣を構えた。
戦闘員たちが一斉に襲いかかってくる。
「せいやああああ!」
アキラが木剣を振るう。
一人、また一人と吹き飛ばされていく戦闘員たち。
――だが、木剣はその度に折れていく。
「また折れた!」
「知ってた!」
ガルドが隣で敵を斬り伏せながらツッコむ。
廊下に、倒れた戦闘員たちが転がっていく。
「よっしゃ、この調子だ!」
アキラが新しい木剣を取り出す。
――残り111本。
城の中に、激しい戦闘の音が響き渡った。
そして、その喧騒が――リーナたちの侵入を、完璧に隠していた。
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裏口の扉。
リーナが小さな魔法で鍵を開ける。
「……開いたわ」
三人が静かに中へと滑り込む。
薄暗い廊下が、地下へと続いていた。
「この先に……地下牢が……」
セレスティアの声が震える。
リーナが優しく肩を叩いた。
「大丈夫。必ず助けるから」
「……はい」
エリンが杖を握りしめる。
「頑張りましょう、セレスティアさん」
三人の魔法使いが、地下への階段を降り始めた。
遠くから、アキラたちの戦闘音が聞こえてくる。
作戦は、順調に進んでいた――今のところは。
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## 次回予告
アキラとガルドの囮作戦が功を奏し、リーナたちは無事に城内へ侵入成功! だが、地下牢へと続く道には、さらなる試練が待ち受けていて――!? そして、セレスティアの家族は本当に無事なのか!?
**次回、第59話『地下牢の家族』お楽しみに!**
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## アキラの現在ステータス
- **レベル**: 578(-9)
- **全ステータス**: 578,000
- **ギルドランク**: Bランク
- **所持金**: 金貨167枚、銀貨15枚
- **木剣**: 112本(-3本)
- **仲間**: リーナ、ガルド、エリン、セレスティア




