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『逆転勇者の下剋上!~マイナスレベルから始まる最弱最強冒険譚~』  作者: たくわん。


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第50話『ユイの選択』


前回のあらすじ


影の組織との戦闘中、ユイが駆けつけアキラたちを助ける。封印の鎖で捕らえられるも、クロウの助けで解放される。しかしユイは「あなたたちが危ない」と言い、森の奥へと消えていった。「いつか必ず、また会いましょう」――その言葉を残して。


-----


 森の奥。


 月明かりだけが、木々の隙間から差し込んでいる。


「ハァ…………ハァ…………」


 ユイは一人、木に寄りかかって息を整えていた。


「アキラ…………ごめんなさい」


 呟く。


「本当のこと…………言えなくて」


 ユイは自分の手を見つめる。


 その手は、微かに震えていた。


「もう…………時間がない」


-----


 突然――


**ゴホッ、ゴホッ!**


 激しい咳が込み上げる。


「くっ…………また…………」


 手で口を押さえると、手のひらに血が付いていた。


「やっぱり…………進行してる」


 ユイが俯く。


「実験体は…………失敗作」


「副作用で…………いつか死ぬ」


 組織の研究員が言っていた言葉が、脳裏に蘇る。


『実験体No.7、お前の余命は…………あと半年だ』


-----


「半年…………」


 ユイが空を見上げる。


「私に残された時間は…………もう少しだけ」


「でも…………」


 アキラの顔が浮かぶ。


「あなただけは…………助けたい」


 ユイが拳を握る。


「組織は、あなたを狙ってる」


「実験体No.8として…………私と同じ目に遭わせようとしてる」


「それだけは…………絶対に阻止する」


-----


 ユイが立ち上がる。


「ならば…………やることは一つ」


 決意を込めて呟く。


「組織のアジトに戻る」


「そして…………情報を盗み出す」


「組織の目的、計画、全てを」


「それを…………いつかアキラに渡す」


 ユイが歩き出す。


「私の残された時間で…………できることをする」


-----


## ***


 数時間後。


 ユイは、とある廃墟の前に立っていた。


 表向きは廃墟だが、地下に影の組織のアジトがある。


「…………久しぶり」


 ユイが呟く。


 かつて、自分が囚われていた場所。


 三年間、実験体として過ごした場所。


「行くしかない」


 ユイが廃墟の中へと入っていく。


-----


 地下への階段を降りると、そこには巨大な空間が広がっていた。


 黒いローブを着た組織の連中が、数十人も行き交っている。


「…………」


 ユイは物陰に隠れながら、奥へと進む。


「実験体の資料室は…………確か、あの奥」


 三年間ここにいたユイは、アジトの構造を覚えていた。


「見つからないように…………」


 慎重に進む。


-----


「おい、実験体No.7を見なかったか?」


 突然、近くで声がする。


「いや、見てないぞ」


「逃げたらしいな」


「ああ。リーダーが激怒してた」


「まあ、どうせすぐ死ぬだろ。失敗作だからな」


「ハハハ、そうだな」


 連中が笑いながら通り過ぎる。


「…………」


 ユイは表情を変えずに、さらに奥へと進む。


-----


 やがて、一つの扉の前に辿り着く。


「ここ…………」


 扉には『実験体資料室』と書かれている。


「鍵は…………」


 ユイが扉の取っ手を回すと――


**ガチャ**


 鍵がかかっていない。


「…………ラッキー」


 ユイが中に入る。


-----


 資料室の中は、無数の書類と本が積まれていた。


「これ全部…………実験体の記録?」


 ユイが書類を手に取る。


『実験体No.1――失敗。副作用により死亡』


『実験体No.2――失敗。暴走により処分』


『実験体No.3――失敗。副作用により死亡』


「やっぱり…………全員失敗してる」


 ユイが呟く。


「そして…………私も」


-----


『実験体No.7――ユイ。マイナスレベル-50達成。しかし副作用により、余命半年』


 自分の資料を見つける。


「やっぱり…………」


 ユイが資料を握りしめる。


「でも、諦めない」


「アキラのために…………情報を集める」


 ユイが他の資料を探し始める。


-----


 そして――


 一冊の分厚いファイルを見つける。


『逆転者計画――最終報告書』


「これは…………!」


 ユイがファイルを開く。


-----


『目的:逆転者の力を人工的に作り出し、兵器として利用する』


『現状:実験体は全て失敗。副作用により長期生存不可能』


『今後の方針:真の逆転者――桜井アキラを捕獲し、完全なサンプルを入手する』


『計画責任者:ゼクス』


「ゼクス…………!」


 ユイが驚く。


「この名前…………どこかで…………」


 記憶を辿る。


「確か…………元Sランク冒険者の…………」


-----


 さらにページをめくると――


『逆転者の力の源泉:古代逆転の紋章』


『紋章を全て集めることで、真の逆転者となる』


『現在、アキラは紋章を二つ所持』


『残りの紋章を先に入手し、アキラを無力化する』


「紋章…………」


 ユイが眉をひそめる。


「アキラが持ってる…………あれのこと?」


-----


 さらに読み進めると――


『最終目標:逆転者の力を利用し、世界を支配する』


『そのためには、レベル-999の真の逆転者が必要』


『アキラを実験体No.8とし、強制的にレベル-999まで引き下げる』


「世界を…………支配…………!?」


 ユイが愕然とする。


「そんなことのために…………!」


-----


「これは…………絶対にアキラに伝えないと」


 ユイがファイルを持とうとした、その時――


**ガチャ**


 扉が開く音がする。


「!」


 ユイが振り返る。


「おや、実験体No.7じゃないか」


 黒いローブの男が立っていた。


「何をしてるんだ? ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」


「…………」


 ユイが無言でファイルを握りしめる。


-----


「まさか…………資料を盗もうとしてるのか?」


 男が不敵に笑う。


「そうはさせないぞ」


 男が手を上げる。


「警備! 実験体No.7を捕らえろ!」


**ザッ、ザッ、ザッ!**


 複数の黒いローブの連中が現れる。


「くっ…………!」


 ユイがファイルを抱えて後ずさる。


「逃がすか!」


 連中が一斉に襲いかかる。


-----


「させない…………!」


 ユイが目を閉じる。


 次の瞬間――


**ドガァァン!!**


 ユイの周囲から、強烈な衝撃波が放たれる。


「うわああ!?」


 連中が吹き飛ばされる。


「マイナスレベルの力…………!」


 男が驚く。


「でも、お前はもう長くないんだろ? 無理するなよ」


「…………黙れ」


 ユイが睨む。


-----


**ゴホッ、ゴホッ!**


 しかし、その瞬間、激しい咳が込み上げる。


「くっ…………」


「ハハハ! やっぱり限界か!」


 男が笑う。


「大人しく捕まれ!」


「…………嫌だ」


 ユイが拳を握る。


「私は…………アキラを守る」


「だから…………」


 ユイが再び力を解放する。


**ドガガガガッ!!**


「うわああ!?」


-----


 その隙に、ユイは窓から飛び出す。


「待て!」


 男が叫ぶが、ユイはそのまま森の中へと消えていく。


「くそっ…………逃がしたか」


 男が舌打ちする。


「まあいい。どうせすぐ死ぬ。放っておけ」


-----


## ***


 森の中。


「ハァ…………ハァ…………」


 ユイは木に寄りかかり、息を整える。


**ゴホッ、ゴホッ!**


 再び咳が込み上げる。


「くっ…………もう限界…………」


 手のひらには、また血が付いていた。


「でも…………間に合った」


 ユイが抱えていたファイルを見つめる。


『逆転者計画――最終報告書』


「これを…………いつかアキラに渡す」


-----


 ユイが月を見上げる。


「アキラ…………」


「私の残された時間は…………少ない」


「でも…………それまでに、できることをする」


「組織の計画を…………止める」


「そして…………あなたを守る」


 ユイが決意を込めて呟く。


「だから…………待っていて」


-----


 ユイはファイルを服の中に隠し、再び歩き出す。


「いつか…………必ず会いに行く」


「その時は…………全てを話す」


「私の運命も…………組織の計画も」


「だから…………それまで生きていて、アキラ」


 ユイの目から、一筋の涙が流れる。


「お願い…………」


-----


 月明かりの中、ユイの姿が森の奥へと消えていく。


 その手には、組織の秘密が詰まったファイル。


 そして心には、アキラへの想い。


「私は…………あなたの味方だから」


 最後にそう呟き、ユイは闇の中へと消えた。


-----


**次回予告**

ユイが命をかけて盗み出した情報。影の組織の真の目的とは? そしてゼクスとは何者なのか? 一方、アキラたちはついに第三の試練の場所へと辿り着く。そこで待ち受ける試練とは――?


**次回、第51話『魔物の森の最深部へ』**

新たな試練が、今始まる!


-----


## 【桜井アキラ・現在のステータス】


- **レベル**: 680

- **全ステータス**: 680,000

- **ギルドランク**: Bランク

- **所持金**: 金貨237枚、銀貨20枚

- **所持アイテム**:

- 謎の水晶(逆転者の証)

- セレスティアの祖父の日記(写し)

- 通信石

- 木剣×161本

- 制御の石板

- Bランクギルドカード

- 逆転者の紋章(第一の証)

- 逆転者の紋章(第二の証)

- 回復薬×20

- 解毒薬×10

- 食料(一週間分)


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