第50話『ユイの選択』
前回のあらすじ
影の組織との戦闘中、ユイが駆けつけアキラたちを助ける。封印の鎖で捕らえられるも、クロウの助けで解放される。しかしユイは「あなたたちが危ない」と言い、森の奥へと消えていった。「いつか必ず、また会いましょう」――その言葉を残して。
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森の奥。
月明かりだけが、木々の隙間から差し込んでいる。
「ハァ…………ハァ…………」
ユイは一人、木に寄りかかって息を整えていた。
「アキラ…………ごめんなさい」
呟く。
「本当のこと…………言えなくて」
ユイは自分の手を見つめる。
その手は、微かに震えていた。
「もう…………時間がない」
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突然――
**ゴホッ、ゴホッ!**
激しい咳が込み上げる。
「くっ…………また…………」
手で口を押さえると、手のひらに血が付いていた。
「やっぱり…………進行してる」
ユイが俯く。
「実験体は…………失敗作」
「副作用で…………いつか死ぬ」
組織の研究員が言っていた言葉が、脳裏に蘇る。
『実験体No.7、お前の余命は…………あと半年だ』
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「半年…………」
ユイが空を見上げる。
「私に残された時間は…………もう少しだけ」
「でも…………」
アキラの顔が浮かぶ。
「あなただけは…………助けたい」
ユイが拳を握る。
「組織は、あなたを狙ってる」
「実験体No.8として…………私と同じ目に遭わせようとしてる」
「それだけは…………絶対に阻止する」
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ユイが立ち上がる。
「ならば…………やることは一つ」
決意を込めて呟く。
「組織のアジトに戻る」
「そして…………情報を盗み出す」
「組織の目的、計画、全てを」
「それを…………いつかアキラに渡す」
ユイが歩き出す。
「私の残された時間で…………できることをする」
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数時間後。
ユイは、とある廃墟の前に立っていた。
表向きは廃墟だが、地下に影の組織のアジトがある。
「…………久しぶり」
ユイが呟く。
かつて、自分が囚われていた場所。
三年間、実験体として過ごした場所。
「行くしかない」
ユイが廃墟の中へと入っていく。
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地下への階段を降りると、そこには巨大な空間が広がっていた。
黒いローブを着た組織の連中が、数十人も行き交っている。
「…………」
ユイは物陰に隠れながら、奥へと進む。
「実験体の資料室は…………確か、あの奥」
三年間ここにいたユイは、アジトの構造を覚えていた。
「見つからないように…………」
慎重に進む。
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「おい、実験体No.7を見なかったか?」
突然、近くで声がする。
「いや、見てないぞ」
「逃げたらしいな」
「ああ。リーダーが激怒してた」
「まあ、どうせすぐ死ぬだろ。失敗作だからな」
「ハハハ、そうだな」
連中が笑いながら通り過ぎる。
「…………」
ユイは表情を変えずに、さらに奥へと進む。
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やがて、一つの扉の前に辿り着く。
「ここ…………」
扉には『実験体資料室』と書かれている。
「鍵は…………」
ユイが扉の取っ手を回すと――
**ガチャ**
鍵がかかっていない。
「…………ラッキー」
ユイが中に入る。
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資料室の中は、無数の書類と本が積まれていた。
「これ全部…………実験体の記録?」
ユイが書類を手に取る。
『実験体No.1――失敗。副作用により死亡』
『実験体No.2――失敗。暴走により処分』
『実験体No.3――失敗。副作用により死亡』
「やっぱり…………全員失敗してる」
ユイが呟く。
「そして…………私も」
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『実験体No.7――ユイ。マイナスレベル-50達成。しかし副作用により、余命半年』
自分の資料を見つける。
「やっぱり…………」
ユイが資料を握りしめる。
「でも、諦めない」
「アキラのために…………情報を集める」
ユイが他の資料を探し始める。
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そして――
一冊の分厚いファイルを見つける。
『逆転者計画――最終報告書』
「これは…………!」
ユイがファイルを開く。
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『目的:逆転者の力を人工的に作り出し、兵器として利用する』
『現状:実験体は全て失敗。副作用により長期生存不可能』
『今後の方針:真の逆転者――桜井アキラを捕獲し、完全なサンプルを入手する』
『計画責任者:ゼクス』
「ゼクス…………!」
ユイが驚く。
「この名前…………どこかで…………」
記憶を辿る。
「確か…………元Sランク冒険者の…………」
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さらにページをめくると――
『逆転者の力の源泉:古代逆転の紋章』
『紋章を全て集めることで、真の逆転者となる』
『現在、アキラは紋章を二つ所持』
『残りの紋章を先に入手し、アキラを無力化する』
「紋章…………」
ユイが眉をひそめる。
「アキラが持ってる…………あれのこと?」
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さらに読み進めると――
『最終目標:逆転者の力を利用し、世界を支配する』
『そのためには、レベル-999の真の逆転者が必要』
『アキラを実験体No.8とし、強制的にレベル-999まで引き下げる』
「世界を…………支配…………!?」
ユイが愕然とする。
「そんなことのために…………!」
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「これは…………絶対にアキラに伝えないと」
ユイがファイルを持とうとした、その時――
**ガチャ**
扉が開く音がする。
「!」
ユイが振り返る。
「おや、実験体No.7じゃないか」
黒いローブの男が立っていた。
「何をしてるんだ? ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「…………」
ユイが無言でファイルを握りしめる。
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「まさか…………資料を盗もうとしてるのか?」
男が不敵に笑う。
「そうはさせないぞ」
男が手を上げる。
「警備! 実験体No.7を捕らえろ!」
**ザッ、ザッ、ザッ!**
複数の黒いローブの連中が現れる。
「くっ…………!」
ユイがファイルを抱えて後ずさる。
「逃がすか!」
連中が一斉に襲いかかる。
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「させない…………!」
ユイが目を閉じる。
次の瞬間――
**ドガァァン!!**
ユイの周囲から、強烈な衝撃波が放たれる。
「うわああ!?」
連中が吹き飛ばされる。
「マイナスレベルの力…………!」
男が驚く。
「でも、お前はもう長くないんだろ? 無理するなよ」
「…………黙れ」
ユイが睨む。
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**ゴホッ、ゴホッ!**
しかし、その瞬間、激しい咳が込み上げる。
「くっ…………」
「ハハハ! やっぱり限界か!」
男が笑う。
「大人しく捕まれ!」
「…………嫌だ」
ユイが拳を握る。
「私は…………アキラを守る」
「だから…………」
ユイが再び力を解放する。
**ドガガガガッ!!**
「うわああ!?」
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その隙に、ユイは窓から飛び出す。
「待て!」
男が叫ぶが、ユイはそのまま森の中へと消えていく。
「くそっ…………逃がしたか」
男が舌打ちする。
「まあいい。どうせすぐ死ぬ。放っておけ」
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## ***
森の中。
「ハァ…………ハァ…………」
ユイは木に寄りかかり、息を整える。
**ゴホッ、ゴホッ!**
再び咳が込み上げる。
「くっ…………もう限界…………」
手のひらには、また血が付いていた。
「でも…………間に合った」
ユイが抱えていたファイルを見つめる。
『逆転者計画――最終報告書』
「これを…………いつかアキラに渡す」
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ユイが月を見上げる。
「アキラ…………」
「私の残された時間は…………少ない」
「でも…………それまでに、できることをする」
「組織の計画を…………止める」
「そして…………あなたを守る」
ユイが決意を込めて呟く。
「だから…………待っていて」
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ユイはファイルを服の中に隠し、再び歩き出す。
「いつか…………必ず会いに行く」
「その時は…………全てを話す」
「私の運命も…………組織の計画も」
「だから…………それまで生きていて、アキラ」
ユイの目から、一筋の涙が流れる。
「お願い…………」
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月明かりの中、ユイの姿が森の奥へと消えていく。
その手には、組織の秘密が詰まったファイル。
そして心には、アキラへの想い。
「私は…………あなたの味方だから」
最後にそう呟き、ユイは闇の中へと消えた。
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**次回予告**
ユイが命をかけて盗み出した情報。影の組織の真の目的とは? そしてゼクスとは何者なのか? 一方、アキラたちはついに第三の試練の場所へと辿り着く。そこで待ち受ける試練とは――?
**次回、第51話『魔物の森の最深部へ』**
新たな試練が、今始まる!
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## 【桜井アキラ・現在のステータス】
- **レベル**: 680
- **全ステータス**: 680,000
- **ギルドランク**: Bランク
- **所持金**: 金貨237枚、銀貨20枚
- **所持アイテム**:
- 謎の水晶(逆転者の証)
- セレスティアの祖父の日記(写し)
- 通信石
- 木剣×161本
- 制御の石板
- Bランクギルドカード
- 逆転者の紋章(第一の証)
- 逆転者の紋章(第二の証)
- 回復薬×20
- 解毒薬×10
- 食料(一週間分)
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