第47話『マイナスレベルの力』
前回のあらすじ
魔物の森でAランクモンスター・フェンリルに苦戦していたアキラたち。その時、謎の少女ユイが現れ、一撃でフェンリルを撃破。彼女のレベルは-50――マイナスレベルだった。「私はもう、あなたと同じ側じゃない」。そう言い残し、ユイは森の奥へ消えていった――
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「あれから一晩経ったけど…………全然眠れなかったな」
森の中を歩きながら、俺は大きなあくびをする。
「当たり前でしょ。マイナスレベルの人間に会ったのよ? しかもレベル-50…………」
リーナが疲れた顔で呟く。
「でも、不思議だったな。ユイって子、すごく強かったけど…………目が悲しそうだった」
エリンがポツリと言う。
「ああ。俺も気になってる。『もう同じ側じゃない』って、どういう意味だ?」
「さあな。だが、あの力は本物だった。Aランクのフェンリルを一撃で倒すとは…………」
ガルドが大剣を担ぎ直しながら言う。
「とにかく、今日は第三の試練に集中しましょう。魔物の森の最深部まで、あと少しのはずよ」
「おーう!」
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それから1時間ほど歩いた頃。
「…………ん? なんか、音がする」
俺が立ち止まる。
「音?」
リーナも耳を澄ます。
**ガアアアッ!!**
「うわ、めっちゃうるさい! 何だ今の!?」
「モンスターの咆哮ね。しかも複数…………かなり強い」
リーナが杖を構える。
「まずいな。音の方向は…………あっちか」
ガルドが指差す。
「行ってみるか?」
「え、アキラ、また突っ込む気!?」
「いやいや、今回は違うぞ! ちゃんと様子を見に行くだけだって!」
「…………本当に?」
リーナが疑いの目を向けてくる。
「マジだって! 信じてくれよ!」
「まあ、気になるのは確かだな。行ってみるか」
ガルドが頷く。
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音の方向に近づくと――
「あれは…………!」
リーナが叫ぶ。
目の前には、**3体のAランクモンスター**がいた。
「**シャドウドラゴン(Aランク)**が2体に…………**ブラッドベア(Aランク)**が1体!?」
「うわあ、ヤバいやつばっかりじゃん!」
シャドウドラゴンは全長10メートルの黒い龍。ブラッドベアは全長5メートルの赤い熊だ。
「どっちもAランクの上位種…………こいつら、何でこんなに集まってるんだ?」
ガルドが警戒する。
そして、そのモンスターたちの中心に――
「…………ユイ!?」
俺が叫ぶ。
そこには、昨日会ったユイが立っていた。
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「…………邪魔」
ユイが無表情でそう言った瞬間。
**ガアアアッ!!**
シャドウドラゴンが炎のブレスを吐く。
「ユイ、危ない!」
俺が叫ぶ。
しかし――
**ドガァァン!!**
炎がユイに直撃する。
「ユイ!」
エリンが悲鳴を上げる。
だが、次の瞬間――
ユイの体が**淡く光り始めた**。
「え…………?」
俺たちは全員、呆然とその光景を見つめる。
ユイは無傷だった。
いや、無傷どころか――
「…………+10%」
ユイが淡々と呟く。
そして、シャドウドラゴンに向かって軽く手を振る。
**ドガァァァン!!**
シャドウドラゴンが吹き飛び、地面に激突する。
「な、何が…………?」
リーナが震える声で呟く。
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「あれは…………攻撃を受けて強くなってる…………!?」
ガルドが信じられないという顔で言う。
「待って…………あれって…………」
俺の頭に、ある記憶がフラッシュバックする。
**第一の試練――力の試練**。
あの時、俺は一時的にマイナスレベルの疑似体験をした。
攻撃を受けると体が光り、受けるたびに強化される。
「これ…………俺が第一の試練で体験したやつと同じだ…………!」
「え?」
リーナが俺を見る。
「第一の試練で、俺は攻撃を受けると強くなる力を体験したんだ! 攻撃を受けるたびに+10%、+20%って強化されて――」
「そう…………あれは疑似体験だったのよ」
リーナが青い顔で呟く。
「疑似体験…………?」
「ええ。第一の試練は、マイナスレベルの力を『一時的に』体験させるもの。でも、ユイは…………」
リーナがユイを見つめる。
「本物のマイナスレベル…………常時、その状態なのよ」
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その瞬間、ブラッドベアがユイに飛びかかる。
「危ない!」
俺が叫ぶ。
だが、ユイは避けない。
ブラッドベアの巨大な爪がユイに直撃する。
**ドガッ!!**
しかし――
ユイの体が再び光る。
そして、今度は光が**さらに強くなった**。
「+20%…………」
ユイが淡々と呟く。
「え?」
「最初の攻撃で+10%。二度目で+20%。累積していく」
ユイがブラッドベアを見つめる。
次の瞬間――
**バキィィン!!**
ユイが軽く手を振るだけで、ブラッドベアが真っ二つになる。
「うわああ!?」
俺たちは全員、息を呑む。
そして――ブラッドベアが倒れた瞬間、ユイの体から**+20%の光が消えた**。
「あれ…………光が消えた?」
「そう…………倒したモンスターからの強化は消える」
ユイが淡々と答える。
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残ったシャドウドラゴン2体が、同時にユイに襲いかかる。
炎のブレスと氷のブレス――両方が同時にユイに直撃する。
**ドガガガガガッ!!**
巨大な爆発が起こり、煙が立ち込める。
「ユイ…………!」
エリンが叫ぶ。
しかし、煙が晴れると――
ユイは無傷で立っていた。
そして、体が**2つの色で光っている**。
「1体目のシャドウドラゴンから+10%…………2体目のシャドウドラゴンから+10%」
ユイが両手を広げる。
「合計+20%…………十分ね」
次の瞬間――
**ドガァァァァン!!**
ユイが片手を振るだけで、1体目のシャドウドラゴンが地面に叩きつけられ、動かなくなる。
そして、1体目の光が消える。
「残りは…………+10%」
ユイがもう一度手を振る。
**ドガァン!!**
2体目のシャドウドラゴンも地面に叩きつけられる。
そして――全ての光が消えた。
「…………終わり」
ユイが無表情で呟く。
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「一瞬で…………Aランクのモンスター3体を…………」
ガルドが呆然と呟く。
「でも、モンスターを倒したら、そのモンスターからの強化は消えるのね…………」
リーナが震えながら言う。
「ええ。これがマイナスレベルのルール」
ユイがゆっくりとこちらを向く。
「攻撃を受ければ受けるほど強くなる。でも、そのモンスターを倒せば、その分の強化は消える」
「じゃあ…………複数のモンスターから攻撃を受ければ?」
俺が尋ねる。
「それぞれのモンスターごとに強化が累積する」
ユイが淡々と答える。
「今みたいに、3体から攻撃を受ければ…………+10%、+20%、+10%で合計+40%」
「で、1体倒せば、その1体分の強化だけ消える…………」
「そう」
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「これが…………マイナスレベルの力」
ユイが俺を見つめる。
「アキラ…………あなたも、第一の試練で体験したのね」
「ああ…………でも、あれは一時的だった。モンスターが死ねば全部リセットされたし…………」
「そう。でも、本物は違う」
ユイが一歩、俺に近づく。
「本物は…………もっと複雑で、もっと強力」
「もっと…………?」
「ええ。今見せたのは、ほんの一部」
ユイがゆっくりと手を上げる。
すると――
**ザッ**
突然、周囲の景色が一瞬、巻き戻った。
「え…………?」
「時間の逆転…………これもマイナスレベルの力の一つ」
ユイが呟く。
「時間を一瞬だけ巻き戻せる。だから、どんな攻撃も避けられる」
「そんな…………反則すぎるだろ…………」
俺が呆然と呟く。
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「反則…………ね」
ユイが悲しそうに微笑む。
「でも、これが現実。マイナスレベルになれば…………こんな力が手に入る」
「ユイ…………」
「アキラ。あなたも、いずれこうなる」
ユイが俺を見つめる。
「でもね…………この力は素晴らしいけど、孤独よ」
「孤独…………?」
エリンが小さく呟く。
「ええ。この力を持つと…………みんなが怖がる」
ユイが空を見上げる。
「私は、もう誰も信じられない。誰も、私を理解してくれない」
「そんなことない! 俺たちは――」
「優しいのね」
ユイが俺を見つめる。
「でも、あなたたちも…………いずれ私を怖がる」
「怖がらない! だって――」
「いいの」
ユイが手を上げる。
「私は…………もう、人間じゃない」
「ユイ…………」
「さようなら」
ユイがそう言い、再び森の奥へと消えていく。
「待って!」
俺が追いかけようとするが――
「アキラ、待って!」
リーナが俺を止める。
「でも――」
「今は…………追わない方がいい」
リーナが深刻な顔で言う。
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俺たちは、ユイが消えた方向を見つめる。
「あれが…………マイナスレベルの力…………」
ガルドが呟く。
「攻撃を受けるたびに強くなり、モンスターを倒せばその分だけ強化が消える…………そして、時間まで巻き戻せる」
リーナが震えながら言う。
「俺も…………いずれああなるのか?」
「…………分からない。でも、ユイは言ってた。『無理やりマイナスレベルにされた』って」
リーナが俺を見つめる。
「あなたは違う。自分の意志でマイナスレベルになる」
「自分の意志…………か」
俺は拳を握る。
「でも…………ユイは孤独だって言ってた」
「ええ。きっと、彼女は誰も信じられなくなってるのよ」
「…………俺は、そうならないようにしないとな」
「そうね」
リーナが頷く。
「だからこそ、私たちがいる」
「ありがとう、リーナ」
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「さて、と。気を取り直して…………第三の試練に行くか」
俺が立ち上がる。
「ええ。でも、アキラ」
「ん?」
「マイナスレベルは…………本当に危険よ。覚悟はできてる?」
リーナが真剣な目で尋ねる。
「…………正直、怖いよ」
俺は素直に答える。
「でも、逃げたくない。俺は…………自分の力で、マイナスレベルを目指す」
「…………そう」
リーナが微笑む。
「なら、私たちも一緒に行く」
「当たり前だろ、相棒」
ガルドが肩を叩く。
「アキラさん、信じてます」
エリンが笑顔を見せる。
「みんな…………ありがとう」
俺は涙が出そうになるのを堪える。
「よし、行くぞ! 第三の試練!」
「おーう!」
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俺たちは再び、魔物の森の最深部を目指して歩き出す。
ユイの姿が、頭から離れない。
孤独で、虚ろで…………でも、どこか悲しそうだった。
「俺は…………ユイとは違う道を進む」
心の中で呟く。
「仲間と一緒に…………自分の意志で、マイナスレベルになる」
そして、いつかユイを救えるくらい…………強くなる。
「待ってろよ、ユイ」
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**次回予告**
ユイの圧倒的な力を目の当たりにしたアキラたち。マイナスレベルの恐ろしさと孤独を知り、決意を新たにする。そして、ついに第三の試練の場所へと辿り着く――
**次回、第48話『ユイの過去』**
彼女は、なぜマイナスレベルになったのか――?
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現在のステータス
- **レベル**: 680
- **全ステータス**: 680,000
- **ギルドランク**: Bランク
- **所持金**: 金貨237枚、銀貨20枚
- **所持アイテム**:
- 謎の水晶(逆転者の証)
- セレスティアの祖父の日記(写し)
- 通信石
- 木剣×161本
- 制御の石板
- Bランクギルドカード
- 逆転者の紋章(第一の証)
- 逆転者の紋章(第二の証)
- 回復薬×20
- 解毒薬×10
- 食料(一週間分)




