第36話『荒野の遺跡と逆転者の真実』
前回のあらすじ
アキラはBランク昇格試験に挑戦。筆記試験は60点ギリギリだったが、実技試験でオーガを見事撃破しBランクへの昇格を果たした。試験用モンスターだったため経験値は得られなかったが、新たな依頼「西の荒野の古代遺跡調査」を受けることに。報酬は金貨100枚、そしてSランク冒険者セリアも同行するという大規模な依頼だ。三日後、アキラたちは遺跡へと向かう――。
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「よっしゃ!準備完璧!」
出発当日の朝、俺は意気揚々とギルドの前に立っていた。
背負った荷物には木剣が20本。これで安心だ。
「アキラ、木剣多すぎない?」
リーナが呆れた顔で言う。
「大丈夫大丈夫!前回17本折ったから、今回は20本持ってきた!」
「学習してないわよそれ!普通は折らない方法を考えるでしょ!?」
「えー、でも折れちゃうんだもん」
「折れちゃうんだもんじゃない!」
リーナの鋭いツッコミが朝の空気に響く。
「アキラさん、おはようございます!」
エリンが元気よく駆け寄ってくる。
「おう、エリン!準備できたか?」
「はい!リーナさんに教わった魔法、いっぱい練習しました!」
「おお、成長してるな!」
「相変わらず朝から賑やかだな、相棒たち」
ガルドが苦笑しながら近づいてきた。
「ガルドさん、おはようございます!」
「おう。今日は大規模な依頼だ。気を引き締めていこうぜ」
「了解!」
「アキラ以外はね」
「え、なんで俺だけ!?」
リーナが即座にツッコむ。
そこへ、凛とした雰囲気を纏った女性が現れた。
「お待たせしました。準備はよろしいですか?」
セリア・ヴァルトハイムだ。Sランク冒険者にして、元勇者パーティーのメンバー。
「セリアさん!よろしくお願いします!」
「ええ。今回の遺跡調査、全力でサポートさせていただきます」
セリアの言葉に、俺たちは頷いた。
「それでは、出発しましょう」
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西の荒野への道のりは、思った以上に険しかった。
王都を出て半日、景色は徐々に荒涼としたものに変わっていく。
「うわー、何もないなここ」
「西の荒野って呼ばれるだけあるわね」
リーナが周囲を見回す。
岩と砂ばかりの大地が続いている。
「この先に古代遺跡があるんですよね?」
エリンが不安そうに尋ねる。
「ああ。かつては栄えた文明があったと言われているが、今は廃墟となっている」
ガルドが説明する。
「へー、どんな文明だったんだろ?」
「それを調査するのが今回の依頼よ、アキラ」
「おお、そうだった!」
「依頼内容くらい覚えておきなさいよ!」
リーナのツッコミが炸裂する。
セリアがクスッと笑った。
「アキラさんは本当に面白い方ですね」
「え、褒められてる?」
「微妙なところね」
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さらに進むこと数時間、ついに遺跡が見えてきた。
「おお!あれか!」
巨大な石造りの建造物が、荒野の中にそびえ立っている。
風化が進んでいるが、かつての威容を感じさせる立派な遺跡だ。
「すごい……」
エリンが目を輝かせる。
「これが古代の遺跡か。壮観だな」
ガルドも感心した様子だ。
「では、入口を探しましょう」
セリアの指示で、俺たちは遺跡の周囲を調べ始めた。
「あ、こっちに階段がある!」
エリンが見つけた階段を降りていくと、大きな石の扉があった。
「開くかな?」
俺が扉を押すと――
ゴゴゴゴゴゴ……
重々しい音を立てて、扉が開いた。
「よっしゃ!開いた!」
「アキラ、慎重に。罠があるかもしれない」
セリアが警告する。
「大丈夫大丈夫!」
「その大丈夫が一番危ないのよ……」
リーナが額に手を当てる。
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遺跡の中は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。
「暗いな。リーナ、光魔法頼む」
「はいはい。【ライト】」
リーナの魔法で、周囲が明るく照らされる。
「おお、見えるようになった!」
「当たり前でしょ、光魔法なんだから」
通路の壁には、古代文字らしきものが刻まれている。
「なんて書いてあるんだろ?」
「古代語ね。解読には時間がかかるわ」
セリアが壁を調べながら言う。
「ふーん、昔の人って頭いいんだな」
「アキラ、それ当たり前よ」
「え、そうなの?」
「そうなのって……文明を築いた人たちが頭良くないわけないでしょ!」
リーナのツッコミが遺跡内に響く。
その時――
ガシャン!
突然、通路の先から物音が聞こえた。
「何か来るぞ!」
ガルドが剣を構える。
「おお、早速バトルか!」
俺も木剣を抜いた。
現れたのは――
「ストーンゴーレム、Cランク!」
石でできた人型のモンスターが、ゆっくりとこちらに向かってくる。
「よし、行くぜ!」
「アキラ、待っ――」
リーナの制止も聞かず、俺は突っ込んだ。
「くらえっ!」
木剣を振り下ろす。
バキッ!
――と同時に、木剣が真っ二つに折れた。
「あ」
「だから言ったでしょ!!」
リーナの絶叫が響く。
ストーンゴーレムは、俺の攻撃など意にも介さず、大きな拳を振り下ろしてきた。
「うおっ!」
慌てて避ける。
「アキラ、石のモンスターに木剣は効かないわよ!」
「今気づいた!」
「遅い!」
「リーナ、魔法で援護を。エリン、火魔法でゴーレムの動きを封じろ」
セリアが的確に指示を出す。
「はい!【ファイアボール】!」
エリンの火魔法がゴーレムに命中する。
「【アイスランス】!」
リーナの氷魔法も続く。
「よし、俺も――」
「アキラは素手で戦いなさい!木剣は無駄よ!」
「え、素手!?」
「そうよ!あなたのステータスなら素手で十分でしょ!」
「まあ、そうだけど……」
俺は木剣を脇に置き、拳を構えた。
「よっしゃ、久しぶりの素手バトルだ!」
ゴーレムに向かって走る。
そして――
ドカッ!
全力のパンチを叩き込んだ。
ゴーレムの体に大きなヒビが入る。
「おお、効いてる!」
「当たり前よ、あなたのステータス見なさいよ!」
続けてもう一発。
ドガッ!
ゴーレムが崩れ落ちる。
「やった!」
【ストーンゴーレム(Cランク)を撃破しました】
【レベルが4下がりました】
【レベル867→863】
「よっしゃ!レベル下がった!強くなってる!」
「その発想が間違ってるのよ!」
リーナのツッコミが止まらない。
「しかし、さすがだな、アキラ。素手でCランクを一撃か」
ガルドが感心する。
「えへへ、まあね!」
「調子に乗らないの」
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さらに奥へ進むと、広いホールのような空間に出た。
「ここは……」
セリアが周囲を見回す。
「何か重要な場所っぽいな」
中央には、大きな石碑が立っている。
「この石碑、何か書いてある」
リーナが近づいて調べる。
「古代語……解読できるかしら」
「セリアさん、読めますか?」
エリンが尋ねる。
「少し時間をください」
セリアが石碑を注意深く見つめる。
その間、俺たちは周囲を警戒していた。
「……なるほど」
しばらくして、セリアが顔を上げた。
「何て書いてあったんですか?」
「『逆転者よ、汝の運命はここに刻まれたり』……と」
「逆転者!?」
俺は驚いて石碑を見た。
「やっぱり、この遺跡は逆転者に関係があるのか」
ガルドが呟く。
「他にも何か書いてあるわ。『三つの試練を越えし時、真実は明らかになる』……」
リーナが続きを読む。
「三つの試練……クロウさんが言ってたやつだ!」
「ええ。そして、この遺跡がその手がかりになるかもしれません」
セリアが真剣な表情で言う。
「でも、真実って何だ?」
「それは……まだわからないわ」
リーナが首を振る。
「うーん、難しいな」
俺が頭を掻いていると――
ゴゴゴゴゴゴ……
突然、遺跡全体が揺れ始めた。
「な、何だ!?」
「まさか、罠!?」
ガルドが警戒する。
「いえ、これは……」
セリアが石碑を見つめる。
石碑から、淡い光が放たれ始めた。
「光ってる!」
エリンが驚く。
光が徐々に強くなり、ホール全体を照らす。
そして――
バァァァン!
光が弾けた。
「うわっ!」
目を閉じる。
光が収まると、そこには――
「何もない……?」
「いや、待て。これを見ろ」
ガルドが床を指差す。
床に、複雑な魔法陣のようなものが浮かび上がっていた。
「これは……転移魔法陣?」
リーナが驚く。
「恐らく。この先に、さらなる試練が待っているのかもしれません」
セリアが言う。
「じゃあ、行ってみるか!」
「アキラ、ちょっと待ちなさい!危険かもしれないでしょ!」
リーナが俺を止める。
「でも、調査するのが依頼だろ?」
「そうだけど……」
「大丈夫だ、リーナ。俺たちがついている」
ガルドが励ます。
「……わかったわ。でも、慎重にね」
「了解!」
俺たちは魔法陣の上に立った。
光が再び俺たちを包む。
そして――
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気がつくと、全く違う場所にいた。
「ここは……」
広大な地下空間。
天井は高く、壁には無数の古代文字が刻まれている。
「転移したみたいね」
リーナが周囲を見回す。
「すごい場所だな……」
ガルドが呟く。
「あ、あそこ!」
エリンが指差す先には、大きな扉があった。
「あの扉の向こうに、何かあるのかも」
「行ってみよう」
俺たちは扉に近づいた。
扉には、複雑な模様が刻まれている。
「これ、どうやって開けるんだ?」
「恐らく、何かの条件があるはず」
セリアが扉を調べる。
その時――
「来たか、逆転者よ」
突然、声が響いた。
「誰だ!?」
「我は、この遺跡の守護者」
声の主が姿を現した。
巨大な鎧を纏った騎士のような姿。
「エンシェントナイト、Bランク!」
ガルドが叫ぶ。
「逆転者よ、汝の力、見せてみよ」
エンシェントナイトが剣を構える。
「よっしゃ、やってやる!」
俺は拳を構えた。
「アキラ、一人で突っ込まないで!」
「わかってる!今回は作戦を立てよう!」
「本当に学習したのね……」
リーナが驚く。
「ガルドさん、正面から。リーナとエリンは魔法で援護。俺はガルドさんのサポートで回り込む」
「おお、ちゃんと考えてるじゃないか」
ガルドが嬉しそうに笑う。
「当たり前だろ!前回死にかけたし!」
「いい判断ですわ、アキラさん」
セリアも微笑む。
「じゃあ、行くぞ!」
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バトルが始まった。
ガルドが正面から剣を振るう。
エンシェントナイトはそれを受け止め、反撃する。
「【ファイアボール】!」
エリンの火魔法が命中。
「【ウィンドカッター】!」
リーナの風魔法も続く。
「よし、今だ!」
俺は回り込み、エンシェントナイトの背後に回った。
「くらえ!」
全力のパンチを叩き込む。
ドガァン!
エンシェントナイトがよろめく。
「やった!」
「油断するな、まだだ!」
ガルドの言葉通り、エンシェントナイトは体勢を立て直した。
「やるな、逆転者よ」
「まだまだ!」
俺たちの連携攻撃が続く。
ガルドの剣、リーナとエリンの魔法、そして俺のパンチ。
「トドメだ!」
最後の一撃を叩き込む。
ドゴォォォン!
エンシェントナイトが崩れ落ちた。
【エンシェントナイト(Bランク)を撃破しました】
【レベルが5下がりました】
【レベル863→858】
「やった!レベル下がった!」
「だからその喜び方おかしいって!」
リーナのツッコミ。
「よくやったな、相棒たち」
ガルドが肩を叩く。
【ガルドのレベルが上がりました】
【レベル78→80】
【リーナのレベルが上がりました】
【レベル45→47】
【エリンのレベルが上がりました】
【レベル9→11】
「みんなレベル上がってる!強くなったな!」
「普通はそう喜ぶのよ、アキラ」
リーナが呆れる。
エンシェントナイトが消えると、扉が光り始めた。
ゴゴゴゴゴ……
扉が開く。
「開いた!」
扉の向こうには、小さな部屋があった。
部屋の中央には、台座があり、その上に一冊の古い本が置かれていた。
「これは……」
セリアが本を手に取る。
「古代の書物ね」
リーナが覗き込む。
「何て書いてあるんですか?」
エリンが尋ねる。
「『逆転者の記録』……」
セリアがページをめくる。
「逆転者について書いてある!」
俺は興奮した。
「でも……」
リーナが困った顔をする。
「どうした?」
「大部分が消えてるわ。解読できるのはほんの一部だけ」
「マジで?」
「ええ。時間の経過で文字が消えてしまったようです」
セリアが残念そうに言う。
「でも、少しは読めるんだろ?」
「ええ。『逆転者は、世界の理を覆す存在』……それから、『三つの試練を越えることで、真の力を得る』……」
「三つの試練……」
「それ以上は、読み取れませんね」
セリアが本を閉じる。
「じゃあ、真実はわからないのか?」
「今はまだ。でも、この本は貴重な手がかりです。ギルドで保管しましょう」
「そうだな」
少し残念だったけど、仕方ない。
「とりあえず、調査は成功ね」
リーナが安堵の表情を浮かべる。
「よっしゃ!じゃあ帰ろう!」
「ええ。報告しないとね」
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遺跡を出て、王都への帰路についた。
「今回は良い調査になったな」
ガルドが満足そうに言う。
「はい!戦いも上手くいきました!」
エリンが嬉しそうだ。
「アキラも、ちゃんと作戦を立てて戦ったしね」
リーナが珍しく褒める。
「えへへ、成長したでしょ?」
「少しだけね」
「少しかよ!」
セリアがクスッと笑った。
「アキラさんたちと一緒だと、飽きませんね」
「そ、そうですか?」
「ええ。また機会があれば、ご一緒しましょう」
「はい!」
俺たちは笑いながら、王都へと向かった。
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数日後、ギルドでの報告を終えた。
「お疲れ様でした。報酬の金貨100枚です」
受付のお姉さんから金貨を受け取る。
「やった!大金だ!」
「みんなで分けましょう」
リーナが提案する。
「そうだな。一人25枚ずつか」
ガルドが計算する。
「わあ、25枚も!」
エリンが目を輝かせる。
「よっしゃ、今日は豪華な飯だ!」
「賛成!」
俺たちは街の有名なレストランへと向かった。
食事を楽しみながら、今回の冒険を振り返る。
「逆転者の真実、少しずつわかってきたな」
「でも、まだ謎だらけよ」
「三つの試練か……次はどんな試練が待ってるんだろう」
「それは、これからのお楽しみだな」
ガルドが笑う。
「よし、じゃあ次の依頼も頑張ろう!」
「おー!」
俺たちは杯を掲げた。
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だが、この時の俺たちは、まだ知らなかった。
逆転者の試練が、すぐそこまで迫っていることを――
そして、影の組織の本格的な動きが始まろうとしていることを――
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## アキラの現在ステータス(第36話終了時点)
- **レベル**: 858
- **HP**: 858,000
- **MP**: 858,000
- **攻撃力**: 858,000
- **防御力**: 858,000
- **魔力**: 858,000
- **敏捷性**: 858,000
- **スキル**: 全スキルLvMAX
- **ギルドランク**: Bランク
- **所持金**: 金貨157枚、銀貨20枚
- **所持アイテム**:
- 謎の水晶(逆転者の証)
- セレスティアの祖父の日記(写し)
- 通信石
- 木剣×65本(新規補充分含む)
- 制御の石板
- Bランクギルドカード
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## 次回予告
「平和な日々も束の間――突然の緊急依頼が舞い込む!街を襲う謎のモンスター軍団!その裏には、影の組織の暗躍が……!? アキラたちは街を守れるのか!? 次回、第37話『街を襲う影――逆転者を狙う者たち』――レベルを下げて、街を守れ!」




