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第35話『昇格試験の罠』

前回のあらすじ


影の組織の罠にハマり、死にかけたアキラ。仲間に救われ、一人で突っ込む危険性を痛感した。そしてBランク昇格試験が明日に前倒しされることに。果たして筆記試験の壁を乗り越えられるのか――


-----


「えーっと……魔法生物の分類は……」


アキラが頭を抱えながら参考書とにらめっこしている。


「ドラゴンは……爬虫類系魔法生物……」


「違う」


リーナが即座に訂正する。


「ドラゴンは竜族系魔法生物。爬虫類系とは別カテゴリーよ」


「えー、でもトカゲみたいじゃん」


「見た目で分類してたら試験落ちるわよ」


リーナが呆れた顔をする。


「うう……難しすぎる……」


「これ、基礎中の基礎なんだけど……」


時刻は深夜2時。


明日の朝が試験だというのに、アキラの習得度は絶望的だった。


「次、モンスターの弱点について」


「スライムは……物理攻撃!」


「それ、普通のスライムの話でしょ。メタルスライムは?」


「え……魔法攻撃?」


「正解。じゃあ、ゴーストタイプは?」


「ええっと……」


アキラが固まる。


「……わかんない」


「聖属性か光属性の魔法よ。物理攻撃は無効」


リーナがため息をついた。


「アキラ、あんた本当に冒険者やってるの?」


「やってるよ! ちゃんと!」


「でも基礎知識が壊滅的じゃない……」


「だって、全部力押しで倒せるし……」


「それよ、それが問題なの!」


リーナが声を荒げる。


「あんたはレベル867のステータスがあるから、何も考えなくても勝てちゃう。でも、普通の冒険者はそうはいかないの」


「うっ……」


「Bランク冒険者になるってことは、後輩を指導する立場にもなるってこと。基礎知識がないと話にならないわ」


「わかった……頑張る……」


アキラが再び参考書を開く。


「よし、次は薬草学ね」


「や、薬草学!?」


「当たり前でしょ。回復薬の材料とか、毒消しの作り方とか、冒険者の基本よ」


「リーナ、俺、明日までに全部覚えられる気がしない……」


「弱音吐かない! あと6時間あるんだから!」


「6時間って……寝る時間は……」


「ないわね」


「マジか……」


こうして、アキラの地獄の一夜が始まった。


-----


## 試験当日の朝


「うう……眠い……」


アキラが目をこすりながらギルドへ向かう。


「徹夜明けで試験って、キツイわね……」


リーナも疲れた顔をしている。


「リーナも付き合ってくれてありがとう……」


「まあ、仲間だしね」


リーナが照れくさそうに笑う。


「頑張れよ、アキラ!」


「応援してます!」


ガルドとエリンが見送ってくれる。


「ありがとう! 絶対合格してくる!」


アキラが拳を握る。


ギルドに到着すると、受験者が数人集まっていた。


「おお、あれが噂のアキラか」


「Cランクになって一週間でBランク試験だって?」


「化け物じゃねえか……」


周りの視線が刺さる。


「気にしない気にしない……」


アキラが小声で呟く。


セリアが現れた。


「皆、集まったわね。それでは試験を開始するわ」


-----


## 筆記試験開始


「まずは筆記試験。制限時間は2時間。それでは始め」


カツン、と時計の音が響く。


アキラは試験用紙を見た。


「えーっと……問1、魔法生物の分類について述べよ……」


(これ、昨日やったやつだ!)


アキラが慌てて答えを書き始める。


「ドラゴンは竜族系……スライムは粘体系……ゴーレムは構築系……」


(よし、いける!)


問2、問3と順調に進んでいく。


だが――


「問15、魔法陣の構成要素とその役割について、図を用いて説明せよ」


(……は?)


アキラが固まる。


(魔法陣の構成要素って何!? そんなの習ってない!)


慌てて記憶を掘り起こすが、そんな知識は一切ない。


(リーナ、これ教えてくれなかったよな……)


時計を見ると、残り時間は1時間。


(まずい……わからない問題が多すぎる……)


アキラは必死に答案を埋めていく。


だが、半分以上は適当な答えだった。


-----


## 筆記試験終了


「はい、そこまで」


セリアの声で試験が終わる。


「うう……ダメだ……絶対落ちた……」


アキラが頭を抱える。


「採点は後で行うわ。次は実技試験よ」


「実技試験……これなら何とか……」


アキラが少し希望を持つ。


「実技試験の内容は、模擬戦闘。こちらが用意したモンスターを制限時間内に倒すこと」


セリアが説明する。


「モンスターのレベルは80。Bランク相当の実力があれば倒せるわ」


「レベル80……余裕じゃん」


アキラが安心した顔をする。


「ただし……」


セリアが意味深に笑う。


「今回は特別にハンデをつけるわ」


「ハンデ?」


「ええ。アキラ、あんたには制限をつける」


セリアが魔法陣を展開する。


「レベル抑制魔法――発動」


ズンッ!


魔法陣がアキラを包み込む。


「な、何だこれ!?」


「あんたのレベルを一時的に制限する魔法よ。現在レベル867を……」


セリアが指を鳴らす。


「レベル50まで下げる」


「ええええ!?」


-----


## レベル50のアキラ


「ちょ、ちょっと待ってください! レベル50って!」


アキラが慌てる。


「Bランク冒険者の平均レベルは80前後。レベル50で戦えるかどうかが、真の実力の証明になるわ」


「そんな無茶な……」


「あんたはいつもステータスに頼りきってる。本当の戦闘技術を見せてもらうわ」


セリアが厳しい顔で言う。


「うっ……」


アキラが自分のステータスを確認する。


**現在レベル: 50**


- HP: 50,000

- MP: 50,000

- 攻撃力: 50,000

- 防御力: 50,000

- 魔力: 50,000

- 敏捷性: 50,000


「うわ……めっちゃ弱くなってる……」


「さあ、準備はいい?」


セリアが手を上げる。


「ちょ、ちょっと待って……」


「実技試験、開始!」


地面が揺れ、巨大な影が現れた。


「グルルルルル……」


「オーガ!?」


レベル80のオーガが目の前に立っている。


身長3メートル、筋肉隆々の魔物だ。


「これを倒せば合格よ。頑張りなさい」


セリアが涼しい顔で言う。


「頑張りなさいじゃないですよ!」


アキラが叫んだ。


-----


## 苦戦する戦い


「ガアアアア!」


オーガが巨大な棍棒を振り下ろす。


「うわああ!」


アキラが横に飛んで避ける。


ドガァァン!


地面が砕ける。


「やばい……直撃したら死ぬ……」


いつもなら余裕で受け止められる攻撃も、レベル50では致命傷になる。


「木剣で……!」


アキラが木剣を抜いて斬りかかる。


バシィン!


「え……」


木剣がオーガの皮膚で弾かれた。


「攻撃力50,000じゃオーガの防御を抜けないか……」


オーガの防御力は約60,000。


通常のアキラなら867,000の攻撃力で一撃だが、今は歯が立たない。


「くそ……どうすれば……」


「ガアアア!」


再び棍棒が襲いかかる。


ドシュッ!


アキラの肩をかすめる。


「ぐっ!」


血が流れる。


「まずい……このままじゃ……」


-----


## 思い出す基礎


(落ち着け……落ち着くんだ……)


アキラが深呼吸する。


(俺には867,000のステータスがない。でも……)


昨夜、リーナが言っていた言葉を思い出す。


『普通の冒険者は、知識と技術で戦うの』


(そうだ……弱点を突けばいい!)


アキラがオーガを観察する。


「オーガの弱点は……確か……」


記憶を必死に掘り起こす。


「目だ! オーガは視力が弱い!」


アキラが地面の砂を掴む。


「ガアアア!」


オーガが突進してくる。


「今だ!」


アキラが砂をオーガの目に投げつける。


「グギャア!」


オーガが目を押さえてひるむ。


「よし!」


アキラが懐に飛び込む。


「木剣は通じない……なら!」


アキラが木剣を投げ捨て、素手で殴りかかる。


「うおおおお!」


ドゴォッ!


拳がオーガの腹部に突き刺さる。


「グゲェ!」


オーガがよろめく。


「まだだ! もう一発!」


アキラが連続で拳を叩き込む。


ドガドガドガ!


「グギャアアア!」


オーガが倒れた。


ドシャァァン!


-----


## 実技試験クリア……?


「はあ……はあ……やった……」


アキラが膝をつく。


「合格よ、アキラ」


セリアが拍手する。


「よかった……」


その時――


ズズズズズ……


地面が再び揺れ始めた。


「え……まだ何か……?」


森の奥から、黒い影が現れる。


「シャドウビースト!?」


3体のシャドウビーストが姿を現した。


「ちょっと待って! 試験終わったんじゃ……」


「これは試験じゃないわ」


セリアが剣を抜く。


「影の組織……またあんたを狙ってきたわね」


「まずい……レベル50のままじゃ……」


アキラが後ずさる。


「大丈夫。私がいるわ」


セリアが前に出る。


だがその瞬間――


バチィィィ!


セリアの体に電撃が走る。


「ぐっ……これは……」


「麻痺魔法……!」


森の奥から、フードを被った複数の人影が現れた。


「また会ったな、逆転者よ」


昨夜の男だ。


「くっ……影の組織……」


「今度は万全の準備で来た。レベル50に制限されたお前なら、簡単に捕らえられる」


男が手を上げる。


「シャドウビースト、捕獲しろ」


3体のシャドウビーストが一斉に襲いかかる。


「やばい……」


アキラが構える。


だが、レベル50では到底太刀打ちできない。


その時――


「させるかああああ!」


リーナの声が響いた。


-----


## 仲間の到着


「サンダーボルト!」


リーナの雷魔法がシャドウビーストを撃ち抜く。


「リーナ!」


「遅くなってごめん!」


リーナが駆けつける。


「ガルドさん、エリンも!」


「待たせたな、アキラ!」


ガルドが剣を構える。


「アキラさん、大丈夫ですか!」


エリンが心配そうに駆け寄る。


「みんな……」


「ちっ……また邪魔が……」


男が舌打ちする。


「シャドウビースト、全力で行け!」


3体のシャドウビーストが凶暴化する。


「任せろ!」


ガルドが1体に斬りかかる。


「ファイアボール!」


エリンが魔法を放つ。


「アイスランス!」


リーナも攻撃を繰り出す。


激しい戦いが始まった。


-----


## セリアの反撃


「ふん……麻痺魔法程度で私を止められると思ったか」


セリアが麻痺を解除する。


「な、なに!?」


「私は元勇者パーティーのSランク冒険者よ。舐めないでちょうだい」


セリアの剣が光り輝く。


「聖剣技――閃光斬!」


ズバァァァッ!


光の斬撃が森を切り裂く。


シャドウビースト3体が一瞬で消滅した。


「つ、強い……」


アキラが呆然とする。


「撤退だ!」


男たちが黒い煙を発生させる。


「今度こそ逃がさない!」


セリアが追撃しようとするが――


「待ちなさい、セリア」


後方から声がした。


振り返ると、クロウが立っていた。


「クロウ!?」


「深追いは禁物だ。罠かもしれない」


「くっ……」


セリアが剣を納める。


煙が晴れた時には、影の組織は消えていた。


-----


## 試験結果


戦いが終わり、ギルドに戻った。


「はあ……疲れた……」


アキラがベンチに座り込む。


レベル制限も解除され、元のレベル867に戻っている。


「それで、試験結果なんだけど……」


セリアが書類を持ってくる。


「筆記試験は……60点ギリギリ合格」


「マジで!? やった!」


「喜ぶのは早いわよ。実技試験は満点。総合で……」


セリアが微笑む。


「合格よ、アキラ」


「やったああああ!」


アキラが飛び上がる。


「おめでとう、アキラ!」


「やりましたね!」


リーナとエリンが祝福する。


「よくやったな、相棒」


ガルドが肩を叩いた。


「これで今日からBランク冒険者ね」


セリアがBランクのギルドカードを渡す。


「ありがとうございます!」


アキラが深く頭を下げた。


-----


## 新たな段階へ


「それで、Bランク昇格記念の依頼なんだけど……」


セリアが新しい依頼書を取り出す。


「もうあるんですか?」


「ええ。緊急度が高いの」


「どんな依頼ですか?」


リーナが前に出る。


「古代遺跡の調査。場所は西の荒野」


セリアが地図を広げる。


「西の荒野……あそこは危険地帯じゃ……」


ガルドが険しい顔になる。


「ええ。だからこそBランク冒険者が必要なの」


「報酬は?」


「金貨100枚」


「100枚!?」


アキラが驚く。


「それだけ危険ってことよ」


リーナが冷静に言う。


「それに……」


セリアが真剣な顔になる。


「その遺跡、逆転者に関係があるかもしれない」


「逆転者に……!」


アキラが身を乗り出す。


「詳細は不明。だからこそ調査が必要なの」


「やります!」


アキラが即答する。


「即答ね……まあ、予想通りだけど」


セリアが苦笑いする。


「ただし、今回は私も同行するわ」


「ギルドマスターが!?」


「影の組織が本格的に動いてる。あんたたちだけじゃ危険すぎる」


「ありがとうございます!」


「出発は三日後。それまでに準備を整えなさい」


「了解です!」


四人が敬礼した。


-----


## その夜


宿に戻り、四人は祝杯を上げていた。


「Bランク昇格おめでとう、アキラ!」


「ありがとう、みんな!」


グラスを合わせる。


「でもさあ、筆記試験60点って……」


リーナが呆れた顔をする。


「あれだけ勉強したのに……」


「ごめん……頑張ったんだけど……」


「まあ、合格したからいいけどね」


リーナが笑う。


「それにしても、レベル50での戦い、大変だったな」


ガルドが言う。


「マジで死ぬかと思った……」


アキラが冷や汗をかく。


「でも、あれで基礎の大切さがわかったでしょ?」


リーナが諭すように言う。


「うん……ステータスだけじゃダメだって実感した」


「それがわかっただけでも成長よ」


「ありがとう、リーナ」


エリンが嬉しそうに笑う。


「これからもっと強い敵と戦うんですよね!」


「ああ! 頑張ろうな!」


アキラが拳を握る。


窓の外には満月が輝いていた。


新たな冒険の予感を感じながら、四人は夜を過ごした。


-----


## 次回予告


「西の荒野の古代遺跡へ! セリアも同行する大規模調査が始まる! だが、遺跡には逆転者の秘密が隠されていて……!? 次回、第36話『荒野の遺跡と逆転者の真実』――レベルを下げて、真実へ!」


-----

# アキラの現在ステータス


**名前**: 桜井アキラ

**年齢**: 17歳

**レベル**: **867**

**ギルドランク**: Bランク(昇格成功!)


**ステータス**:


- HP: 867,000

- MP: 867,000

- 攻撃力: 867,000

- 防御力: 867,000

- 魔力: 867,000

- 敏捷性: 867,000


**スキル**: 全スキルLvMAX


**所持金**: 金貨132枚、銀貨20枚


**所持アイテム**:


- 謎の水晶(逆転者の証)

- セレスティアの祖父の日記(写し)

- 通信石

- 木剣×46本(試験で1本消費)

- 制御の石板

- **Bランクギルドカード(NEW!)**




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