第25話「Cランクへの挑戦」
前回のあらすじ
逆転者には三つの試練が待ち受けていることが判明。そして森では影の組織のモンスターが出現。不穏な空気が漂う中、アキラはいつも通り能天気に過ごしていた――
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「Cランク昇格試験の申請…?」
ギルドの受付で、マリアさんが困惑した顔をしている。
「はい! 俺、Cランクになりたいです!」
俺は元気よく答えた。
「えっと…アキラさん、Dランクになってまだ一週間なんですが…」
「そうなんですけど、レベルもどんどん下がってるし!」
「だからその理論おかしいって!!」
リーナのツッコミが炸裂する。
「でもさ、実際強くなってる気がするんだよね」
「気がする、じゃなくて実際は弱くなってるの!」
「え、そうなの?」
「今さら気づいた!?」
マリアさんが眼鏡を直しながら説明する。
「Cランク昇格試験は、Dランクで最低でも三ヶ月の実績が必要です」
「三ヶ月!?」
「はい。その間に、Dランク相応の依頼を一定数こなし、実力を証明しなければなりません」
「そんなに待たなきゃダメなの?」
「当たり前です。ランクは簡単に上がるものではありません」
ガルドが腕を組んで頷く。
「そうだな。俺もBランクになるのに、二年かかった」
「二年!?」
「ああ。ランクが上がるほど、求められるレベルも高くなる」
エリンも小さく頷く。
「私も、Dランクになったばかりですし…まだまだ修行が必要です」
「むう…」
俺は唸る。
三ヶ月か…長いな。
「でも、どうしても早くCランクになりたいんです!」
「なんで?」
リーナが呆れた顔で聞く。
「だって、Cランクになったら、もっと面白い依頼が受けられるだろ?」
「面白いって…」
「あと、報酬も増えるし!」
「お金目当てかい!」
「違う違う! その…」
俺は言葉に詰まる。
本当の理由は、試練のことがあるからだ。
レベルが下がるスピードを上げたい。
早くレベル0に到達して、試練を乗り越えたい。
でも、それを言うと心配されるだろうな。
「まあ、気持ちはわかるが」
ガルドが肩を叩く。
「焦っても仕方ない。地道にやるしかないんだ」
「…わかりました」
俺は諦めた。
酒場で、俺たちは次の依頼を相談していた。
「Dランクの依頼、どれがいいかな」
「えっと…『山賊退治』『洞窟探索』『商隊護衛』…」
エリンが依頼書を読み上げる。
「山賊退治、面白そう!」
「アキラはすぐ戦闘系を選ぶわね」
リーナが苦笑する。
「でも、実際それが一番経験になるだろ?」
「まあ、そうだけど…」
「よし、じゃあ山賊退治で――」
「待て」
ガルドが割り込む。
「山賊退治は、意外と厄介だぞ」
「え、なんで?」
「相手は人間だ。モンスターと違って、知恵がある」
「あー、確かに」
「罠を仕掛けたり、奇襲を仕掛けてきたりする。油断すると危ない」
「でも、やりがいありそうじゃん!」
「その前向きさ、どこから来るの…」
リーナがため息をつく。
「まあ、いいわ。山賊退治で行きましょう」
「本当!?」
「ただし、作戦を立ててから」
「作戦…?」
「そう。闇雲に突っ込むんじゃなくて、ちゃんと計画を立てる」
リーナがテーブルに地図を広げる。
「山賊のアジトは、ここ。森の中の廃屋だって」
「ほうほう」
「入口は一つだけど、裏口がある可能性もある」
「なるほど」
「だから、まず偵察して、敵の数と配置を確認する」
「偵察…地味だな」
「地味でも大事なのよ!」
リーナがビシッと指差す。
「冒険者は、準備が命! わかった?」
「わかりました…」
翌日、山賊のアジトがあるという森に向かった。
「静かだな…」
「ああ、山賊がいるとは思えないくらい」
ガルドが周囲を警戒する。
「あ、あそこに廃屋が」
エリンが指差す先に、古びた建物が見えた。
「よし、まずは偵察だ」
リーナが小声で言う。
「アキラ、物音立てないでよ」
「わかってる」
俺たちは慎重に近づく。
廃屋の窓から中を覗くと――
「あれ、誰もいない?」
「本当だ。がらんとしてる」
「おかしいな…情報では、ここがアジトのはずなんだが」
ガルドが首を傾げる。
「もしかして、もう逃げた?」
「いや、それとも…」
その時――
ガシャン!
背後から音がした。
「うわっ!」
振り返ると、山賊たちに囲まれていた。
「罠だ!」
「やっぱり…!」
山賊のリーダーらしき男が笑う。
「へへへ、冒険者さんたちが来るって情報、もらってたんだよ」
「情報…?」
「そうさ。だから、お前らが来るのを待ってたんだ」
「くっ…」
山賊は十人以上いる。
しかも、全員武装している。
「どうする、ガルド?」
「戦うしかないな」
「了解!」
俺は剣を抜く。
「リーナ、エリン、準備はいいか?」
「いつでも!」
「は、はい!」
「じゃあ――行くぞ!」
戦闘開始。
山賊たちが一斉に襲いかかってくる。
「うおお!」
俺は剣を振るう。
でも――
「あれ?」
剣が山賊に当たらない。
というか、山賊が素早く避ける。
「くそっ、動きが速い!」
「人間相手だからな! モンスターとは違うぞ!」
ガルドが叫ぶ。
ガルドは山賊二人を相手にしている。
リーナは魔法で援護。
「ファイアボール!」
炎が山賊に命中。
「ぎゃあ!」
「やった!」
でも、すぐに別の山賊がリーナに迫る。
「リーナ、危ない!」
「くっ!」
リーナが後ろに跳ぶ。
エリンも必死に剣を振るっているが、押されている。
「くそっ、数が多すぎる…!」
「アキラ、集中しろ!」
ガルドの声に、俺は我に返る。
「そうだ、落ち着け…」
深呼吸。
目の前の山賊を見る。
剣を構える。
「もう一回!」
今度は、相手の動きを読む。
山賊が剣を振り下ろしてくる。
「そこ!」
剣を受け流し、カウンター。
バシュッ!
山賊が倒れる。
「よし!」
「やるじゃねえか!」
ガルドが笑う。
「でもまだまだいるぞ!」
激しい戦闘が続く。
俺たちは徐々に山賊を倒していくが、こちらも疲労が溜まってくる。
「はあ…はあ…」
リーナの魔力も残り少ない。
エリンも息が上がっている。
「くっ…このままじゃ…」
その時、山賊のリーダーが叫んだ。
「全員、一斉に攻撃だ!」
残りの山賊が全員、俺たちに向かってくる。
「やばい…!」
「みんな、下がれ!」
ガルドが前に出る。
「させるか!」
俺も前に出る。
「アキラ!?」
「大丈夫、任せろ!」
俺は剣を構える。
全力で、一撃を放つ。
「でやああああ!」
ズガァァァン!
剣が地面を叩く。
衝撃波が広がり、山賊たちが吹き飛んだ。
「な、なんだこれ…!?」
山賊たちが驚愕する。
「今だ、ガルド!」
「おう!」
ガルドが突進し、山賊のリーダーに斬りかかる。
ガキィン!
リーダーが剣で受け止める。
「くっ…!」
「リーナ、援護を!」
「わかった! 最後の魔力で…ファイアストーム!」
巨大な炎の渦が山賊たちを包む。
「ぎゃああああ!」
山賊たちが次々と倒れていく。
「やった…!」
戦闘終了。
俺たちは、なんとか勝利した。
「はあ…はあ…疲れた…」
リーナが地面に座り込む。
「本当に…人間相手は疲れるわね…」
「ああ、モンスターとは違う難しさがあるな」
ガルドも息を切らしている。
エリンは、倒れた山賊を縄で縛っている。
「これで…全員ですね…」
「ああ、お疲れ様」
俺は辺りを見回す。
「それにしても、情報が漏れてたって言ってたな」
「ああ。誰が情報を流したんだろう」
「まさか…」
リーナが顔を上げる。
「影の組織…?」
「可能性はある」
ガルドが頷く。
「奴らは、アキラを狙ってる。罠を仕掛けてもおかしくない」
「でも、なんで山賊なんか使うんだ?」
「試してるのかもしれん。アキラの実力を」
「…そっか」
俺は拳を握る。
影の組織…また出てきたな。
「まあ、今は考えても仕方ない」
ガルドが立ち上がる。
「山賊を連れて帰ろう。依頼完了だ」
「はい!」
ギルドに戻り、山賊を引き渡した。
「お疲れ様でした」
マリアさんが笑顔で迎えてくれる。
「報酬は金貨15枚です」
「ありがとうございます」
「それと…」
マリアさんが真剣な顔になる。
「ギルドマスターがお呼びです」
「セリアが?」
「ええ。至急、とのことです」
俺たちは顔を見合わせた。
セリアのオフィスに入ると、彼女は書類を見ていた。
「来たか」
「呼ばれたんですけど…何か?」
「ああ」
セリアが書類を置く。
「お前たち、最近影の組織と遭遇することが多いな」
「…はい」
「そして、アキラ。お前は逆転者だ」
「ええ」
「影の組織は、お前を狙っている。間違いない」
セリアが立ち上がる。
「だから、お前にはもっと強くなってもらう必要がある」
「強く…?」
「ああ。Cランクに昇格させる」
「え!?」
全員が驚く。
「でも、まだ一週間しか…」
「特例だ」
セリアがキッパリと言う。
「お前の実力は、既にCランク相当だ。いや、それ以上かもしれん」
「でも…」
「ただし」
セリアが指を立てる。
「条件がある」
「条件…?」
「特別試験を受けてもらう。通常のCランク試験よりも、遥かに難しい」
「…どんな試験ですか?」
「一週間後、Aランクダンジョンの攻略だ」
「Aランク!?」
リーナが叫ぶ。
「無茶苦茶ですよ! アキラたちはまだDランクなんですよ!?」
「わかっている。だが、これがギリギリの譲歩だ」
セリアが真剣な目で俺を見る。
「アキラ、お前にはその力がある。そして、それを証明してもらう」
「…」
俺は考える。
Aランクダンジョン。
確かに危険だろう。
でも――
「やります」
「アキラ!?」
リーナが驚く。
「大丈夫。俺たちならできる」
「でも…」
「リーナ、ガルド、エリン」
俺は仲間を見る。
「俺一人じゃ無理だ。でも、みんながいれば…きっと乗り越えられる」
「アキラ…」
エリンが涙ぐむ。
ガルドが笑う。
「まったく、無茶苦茶だが…断る理由もないな」
「ガルドさん…!」
リーナもため息をつく。
「わかったわよ…付き合うわ」
「リーナ!」
「でも、ちゃんと準備するからね!」
「もちろん!」
セリアが微笑む。
「決まりだな」
「はい!」
「一週間後、ここに集合しろ。Aランクダンジョン『深淵の塔』に挑んでもらう」
「深淵の塔…」
「ああ。歴代のCランク冒険者が、何人も挑戦して失敗してきた場所だ」
「…わかりました」
俺たちはオフィスを出た。
酒場で、俺たちは作戦会議をしていた。
「Aランクダンジョンか…」
ガルドが腕を組む。
「相当な覚悟が必要だぞ」
「わかってる」
「一週間で、できるだけ準備しよう」
リーナが地図を広げる。
「装備の強化、戦術の確認、そして…」
リーナが俺を見る。
「アキラ、お前は力の制御を練習しなさい」
「力の制御?」
「そう。お前、力が強すぎて、逆に扱いきれてないでしょ」
「…確かに」
「だから、ちゃんとコントロールできるように訓練する」
「わかった」
エリンも頷く。
「私も、もっと強くならないと…」
「エリン、お前は十分頑張ってる」
ガルドが頭を撫でる。
「これからも、一緒に成長していこう」
「…はい!」
俺たちは、グラスを掲げた。
「じゃあ、一週間後の成功に――乾杯!」
「乾杯!」
グラスが鳴る。
一週間後、俺たちは深淵の塔に挑む。
それは、きっと大変な戦いになるだろう。
でも、仲間がいれば――
きっと、乗り越えられる。
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## 次回予告
「一週間の特訓が始まった」
「アキラ、もっと力を抑えて!」
「これでも抑えてるんだけど…」
「全然抑えられてない!」
「そして、深淵の塔への挑戦が――」
次回、第26話「特訓と絆」
仲間との絆が、さらに深まる――
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**現在のアキラのステータス**
- レベル:845
- HP/MP/攻撃力/防御力/魔力/敏捷性:845,000
- ギルドランク:Dランク
- 所持金:金貨82枚、銀貨30枚




