第24話「新たな真実」
前回のあらすじ
伝説級のエンシェントゴーレムを倒し、秘宝を手に入れたアキラたち。その秘宝は『逆転者』について記された古代魔法の書だった。セレスティアから「重要な情報を伝えたい」と言われ――
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「で、なんでこんな早朝に呼び出されたんだ…?」
翌朝。まだ太陽が昇りきらない時間に、俺はセレスティアの屋敷にいた。
眠い。すごく眠い。
「おはようございます、アキラさん」
セレスティアが優雅に現れる。
なんでこの人、朝からこんなに完璧なんだ。
「あ、おはようございます…」
あくびを噛み殺しながら挨拶する。
「夜中まで本を読んでいたので、すぐにお伝えしたくて」
「夜中まで…?」
「ええ。逆転者についての記述が、想像以上に詳細でしたので」
セレスティアが古代魔法の書を開く。
「まず、この図を見てください」
本には、複雑な魔法陣が描かれている。
「これが、逆転者を召喚する魔法陣です」
「召喚…?」
「ええ。つまり、アキラさんがこの世界に来たのは、偶然ではないということです」
「マジで?」
「はい。誰かが意図的に、この魔法を使ってアキラさんを呼んだのです」
「誰が?」
「それは…まだわかりません」
セレスティアが別のページを開く。
「そして、これが逆転者の特性についての記述です」
古代文字で書かれているが、その横に翻訳が添えられている。
『逆転者は、経験を積むほどにレベルが下がる』
「あ、これ知ってる」
『レベルが0に達した時、真の力が目覚める』
「これも聞いたことある」
『しかし――』
「しかし?」
セレスティアが深刻な顔になる。
「『レベルが0に達する前に、三つの試練を乗り越えなければならない』」
「試練…?」
「ええ。その試練を乗り越えなければ、逆転者としての力は覚醒せず――」
セレスティアが言葉を詰まらせる。
「最悪の場合、命を落とす可能性もある…と」
「えっ」
「つまり、アキラさんは今、命がけの試練に挑んでいるということです」
「」
沈黙。
「…いや、ちょっと待って」
俺は頭を抱える。
「俺、そんな大変なことになってたの?」
「ええ」
「知らなかった…」
「でしょうね」
セレスティアが苦笑する。
「アキラさん、いつも能天気ですから」
「能天気って!」
「事実でしょう?」
ぐうの音も出ない。
「で、その試練って何なんですか?」
「それが…」
セレスティアがページをめくる。
「詳細は書かれていないのです」
「え」
「ただ、『試練は自然と訪れる。逆転者自身が気づかぬうちに、既に始まっている』と」
「なにそれ怖い」
「本当に怖いですね」
二人で顔を見合わせる。
ギルドに戻ると、リーナたちが待っていた。
「おっそーい! 何してたのよ!」
「いや、セレスティアさんに呼ばれて…」
「で、何だったの?」
リーナが興味津々で聞いてくる。
「えっと…」
俺は事情を説明した。
逆転者の召喚、三つの試練、そして命がけの冒険――
「」
全員、固まった。
「…つまり」
ガルドが重々しく口を開く。
「アキラは、知らないうちに命がけの試練に挑戦していた、と」
「そういうこと」
「」
また沈黙。
「いやいやいや」
リーナが頭を抱える。
「アキラ、あんた本当に天然すぎるでしょ!」
「俺だって知らなかったんだから仕方ないだろ!」
「普通気づくわよ!」
「どうやって!?」
「レベルが下がってる時点で何か変だと思いなさいよ!」
「でも俺、レベル下がるの喜んでたし…」
「そこが問題なのよ!!」
エリンがおろおろしている。
「あ、あの…アキラさん、大丈夫なんですか…?」
「大丈夫大丈夫! なんとかなるって!」
「その根拠のない自信、どこから来るの…?」
リーナがジト目で見る。
「まあ、今のところ順調にレベル下がってるし」
「順調って言うな!」
「でも実際、何も問題起きてないじゃん」
「それは今のところでしょ! 試練がいつ来るかわからないのよ!」
「まあまあ、落ち着けリーナ」
ガルドがなだめる。
「確かに状況は深刻だが、今騒いでも仕方ない。試練が来た時に、全力で対処すればいい」
「ガルドさん…」
「アキラには俺たちがついてる。何があっても、助けてやる」
「ガルド…!」
俺が感動していると――
「でも、アキラの天然ぶりは何とかしないとね」
「そこ!?」
「気分転換に、依頼でも受けるか」
ガルドが提案する。
「そうだな。考えてても仕方ないし」
依頼掲示板の前に立つ。
「何か簡単なのないかな…」
「アキラが依頼書読むなんて珍しいわね」
「さすがに今日は慎重にいくよ」
「本当?」
「本当だって」
俺は掲示板を眺める。
「えーっと…『迷子のネコ探し』『畑の害獣駆除』『護衛依頼』…」
「ネコ探しなんてどう? のんびりできそうよ」
リーナが提案する。
「いいね、それ」
「じゃあそれで――」
「待った」
ガルドが割り込む。
「その下の依頼、見てみろ」
「え? どれ?」
「『森の異変調査』だ」
依頼書を見ると――
**依頼内容:最近、森の奥で不気味な現象が報告されている。調査してほしい。**
**報酬:金貨20枚**
**ランク:D**
「森の異変…?」
「不気味な現象って、何だろう」
「わからん。だが、気になるな」
ガルドが腕を組む。
「もしかしたら、例の『影の組織』が関係してるかもしれん」
「影の組織…!」
俺は思い出す。
前に街を襲った、あの組織だ。
「確かに…可能性はあるな」
「でも、危険じゃないですか?」
エリンが心配そうに言う。
「危険かもしれんが、放っておくわけにもいかん」
ガルドが真剣な顔をする。
「もし本当に影の組織が動いているなら、早めに対処すべきだ」
「…わかった。この依頼、受けよう」
「アキラ…」
リーナが不安そうな顔をする。
「大丈夫、俺たちなら何とかなる」
「根拠のない自信ね…」
「でも、行くしかないだろ」
「まあ、そうね」
リーナが諦めたように頷いた。
森の入口に到着した。
「さて、不気味な現象って何だろうな」
「依頼書には詳しく書いてなかったわね」
「とりあえず、森の奥に行ってみるか」
歩き出すと――
ガサガサ。
茂みが揺れた。
「何か来る!?」
全員、武器を構える。
茂みから飛び出してきたのは――
「ネコ…?」
小さな黒猫だった。
「にゃー」
「えっ、ネコ?」
リーナが拍子抜けする。
「不気味な現象って、これ?」
「いや、違うだろ…」
ネコは俺の足元にすり寄ってくる。
「にゃー」
「可愛い…」
エリンがネコを抱き上げる。
「迷子なのかな?」
「多分な。首輪もついてないし」
「これ、さっきの依頼の迷子のネコじゃない?」
リーナが言う。
「あー、確かに」
「じゃあ、一石二鳥ってこと?」
「まあ、そうなるな」
俺たちは笑い合った。
「でも、不気味な現象は別にあるんだよな」
「ああ、さらに奥に行かないと」
森の奥深くに進むと、雰囲気が変わった。
「なんか…静かすぎない?」
リーナが呟く。
「ああ、鳥の声も聞こえない」
ガルドが警戒する。
「何かいる…」
その時――
ゴゴゴゴゴ…
地面が揺れた。
「地震!?」
「いや、違う!」
前方の木々が倒れ、巨大な影が現れた。
「うわああ! 何あれ!?」
それは、全身が黒い霧に包まれた、異形のモンスターだった。
「シャドウビースト…!」
ガルドが叫ぶ。
「影の組織が生み出したモンスターだ!」
「マジか!」
シャドウビーストが咆哮する。
ドゴォォォン!
「戦闘態勢!」
俺たちは武器を構えた。
シャドウビーストが突進してくる。
「くっ!」
俺は剣で受け止める。
ガキィン!
「重い…!」
「アキラ、一人で受けるな!」
ガルドが加勢する。
二人でなんとか押し返す。
「リーナ、魔法!」
「わかってる! ファイアボール!」
炎の球がシャドウビーストに直撃。
ドゴォン!
「効いてる…?」
煙が晴れると、シャドウビーストは無傷だった。
「嘘でしょ!?」
「魔法が効かない…!?」
「いや、効いてはいるが、再生してるんだ!」
ガルドが指摘する。
見ると、ダメージを受けた部分から、黒い霧が湧き出して傷を修復している。
「厄介だな…」
「一撃で倒すしかない!」
「わかった!」
俺は剣に力を込める。
「全力でいくぞ!」
地面を蹴り、一気に距離を詰める。
「でやああああ!」
渾身の一撃をシャドウビーストに叩き込む。
ズガァァァン!
シャドウビーストの体が真っ二つに裂けた。
「やった…!」
黒い霧が散っていく。
シャドウビーストは完全に消滅した。
「はあ…はあ…」
息が上がる。
その時、俺の体が光る。
「また経験値…」
光の粒が体に吸い込まれる。
「ステータスオープン」
**桜井アキラ**
- レベル:845
- HP:845,000
- MP:845,000
- 攻撃力:845,000
- 防御力:845,000
- 魔力:845,000
- 敏捷性:845,000
「おお、7下がった」
「アキラ、そろそろその反応やめない?」
リーナが疲れた顔で言う。
「でもさ、順調じゃん」
「順調って…」
「まあ、とりあえず依頼は完了だな」
ガルドが辺りを見回す。
「他にモンスターはいないようだ」
「じゃあ、戻るか」
ギルドに戻り、依頼を報告した。
「シャドウビースト…!」
マリアさんが驚く。
「影の組織のモンスターですね…本当に動き出しているんですか」
「ああ、間違いない」
ガルドが頷く。
「状況は思ったより深刻かもしれん」
「ギルドマスターに報告します」
マリアさんが奥に消える。
「やっぱり、影の組織が動いてるんだな」
「ええ。そして、アキラを狙ってる可能性も高い」
リーナが真剣な顔で言う。
「試練も、影の組織も…何か関係あるのかな」
「わからん。だが、用心するに越したことはない」
「まあ、何が来ても対処するだけだよな」
「その楽観的な態度、見習いたいわ…」
リーナが呆れる。
「あ、そういえば」
エリンが抱いていたネコを見せる。
「このネコ、どうします?」
「あ、迷子のネコの依頼も受けてたんだった」
「一緒に報告しましょう」
結局、その日は二つの依頼を完了することができた。
報酬も合計で金貨25枚。
悪くない一日だ。
でも、心の片隅には不安が残る。
試練は、いつ訪れるのか。
そして、影の組織の目的とは――
「アキラ、考え事?」
リーナが聞いてくる。
「ん? ああ、ちょっとな」
「まあ、気にしすぎても仕方ないわよ。今は目の前のことに集中しましょ」
「そうだな」
俺は笑顔を作る。
「じゃあ、今日も酒場で祝杯だな!」
「賛成!」
みんなで酒場へと向かった。
明日は明日の風が吹く。
今日はただ、仲間と過ごす時間を楽しもう――
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## 次回予告
「新しい依頼が来た。今度は…Cランク昇格試験?」
「え、もう? 早くない?」
「アキラの成長速度、異常なのよ」
「褒めてる…?」
「褒めてない!」
次回、第25話「Cランクへの挑戦」
新たな試練が、アキラを待ち受ける――!
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**現在のアキラのステータス**
- レベル:845(7減少)
- HP/MP/攻撃力/防御力/魔力/敏捷性:845,000
- ギルドランク:Dランク
- 所持金:金貨67枚、銀貨30枚(報酬25枚追加)




