第22話「Dランクの試練」
前回のあらすじ
筆記試験と実技試験を経て、見事Dランクに昇格したアキラとエリン。試験官の剣を折るというハプニングもあったが、二人は新たなスタートラインに立った――
-----
「Dランクおめでとうございます!」
翌朝、ギルドの受付でマリアさんが笑顔で出迎えてくれた。
「ありがとうございます!」
エリンが嬉しそうに頭を下げる。
「それにしても、エリンちゃん。Fランクから一気にDランクなんて、すごいわね」
「え?」
俺が首を傾げると、リーナが説明してくれた。
「普通は、F→E→Dって順番に昇格するのよ。でもエリンは、Fランクの試験を飛ばしてDランクの試験に合格した」
「つまり…飛び級?」
「そういうこと」
マリアさんが続ける。
「実は、ギルド内でも話題になってるんですよ。12歳でDランクなんて、十年に一人レベルの天才です」
「マジで!?」
俺はエリンを見る。
エリンは顔を真っ赤にして、手を振っている。
「ち、違います! 私はまだまだで、アキラさんたちが教えてくれたから…!」
「謙遜しすぎだぞ。お前、センスあるよ」
ガルドが笑う。
「最初に会った時は、剣も満足に持てなかったのにな」
「そうでした…あの時は本当に何もできなくて…」
エリンがしんみりとした顔になる。
「でも今は、ちゃんと戦えるようになった。それはお前が努力したからだ」
「ガルドさん…」
「まあ、これからがさらに大変だけどな」
リーナが現実的なことを言う。
「Dランクの依頼は、EランクやFランクとは比べ物にならないくらい危険よ」
「おう! だからこそやりがいがあるってもんだ!」
「アキラは相変わらず能天気ね…」
「さて、早速Dランクの依頼を見てみるか」
依頼掲示板の前に立つ。
Dランクのコーナーには、様々な依頼が貼られている。
「『森の奥のトロール討伐』『廃鉱山の調査』『盗賊団の撃退』…どれも難しそうだな」
「当たり前よ。Dランクなんだから」
リーナが呆れる。
「あ、これなんてどう?」
エリンが一枚の依頼書を指差す。
「『古代遺跡の護衛依頼』…か」
「護衛なら、比較的安全そうじゃないですか?」
「確かに。討伐じゃないしな」
「でも護衛って、何を護衛するんだ?」
俺が依頼書をよく読もうとすると――
「はい決定! この依頼受けます!」
リーナが依頼書を引っ手繰って、受付に持っていった。
「おい! まだ読んでないんだけど!」
「どうせアキラ、依頼書読まないでしょ」
「ぐっ…」
図星である。
マリアさんが依頼書を確認する。
「古代遺跡の護衛依頼ですね。依頼主は…ああ、セレスティア・ローゼンバーグさんですね」
「セレスティアさん!?」
あの遺跡調査を依頼してきた貴族のお嬢様だ。
「また遺跡か…」
ガルドが腕を組む。
「前回はゴーレムが出たな」
「そうそう、あの時は大変だった」
「そしてアキラがまたレベル下がったのよね」
リーナがジト目で見てくる。
「まあ、今回は護衛だから、戦闘は少ないんじゃないか?」
「フラグ立てるのやめて」
依頼の詳細を聞くため、セレスティアの屋敷を訪れた。
「お久しぶりです、アキラさん、リーナさん、ガルドさん」
セレスティアが優雅に出迎えてくれる。
「あ、それと…初めまして?」
「エリンです。よろしくお願いします!」
エリンが礼儀正しく頭を下げる。
「まあ、可愛らしい子。アキラさんのパーティーに新しく?」
「はい! まだ未熟ですが、頑張ります!」
「ふふ、しっかりしてるのね」
セレスティアが微笑む。
「さて、依頼の件ですが」
執事が資料を持ってくる。
「以前調査した遺跡の、さらに奥に新たな通路が見つかりました」
「さらに奥?」
「ええ。私の祖父が探していた『秘宝』は、まだ見つかっていません。恐らく、その奥にあると思われます」
セレスティアが地図を広げる。
「今回は、学者チームを連れて本格的な調査を行います。その護衛をお願いしたいのです」
「学者チーム?」
「ええ。遺跡の専門家が三人。それと私で四人です」
ガルドが頷く。
「なるほど。俺たちは学者たちを守りながら、遺跡を進むわけか」
「その通りです。報酬は金貨30枚。いかがでしょう?」
「30枚!?」
リーナの目が輝く。
「受けます! 喜んで受けます!」
「食いつきが早い!」
俺がツッコむ。
「でも、遺跡の奥か…どんなモンスターがいるかな」
「前回はゴーレムがいたわね」
「ああ、あれは強かった」
俺は思い出す。
あのゴーレム、確か倒した後にレベルが5下がったんだっけ。
おかげで今は…
「ステータスオープン」
小さく呟く。
**桜井アキラ**
- レベル:872
- HP:872,000
- MP:872,000
- 攻撃力:872,000
- 防御力:872,000
- 魔力:872,000
- 敏捷性:872,000
よし、順調だ!
…って、これでも異常に高いんだよな。
「アキラ、また一人でニヤニヤしてる」
「してない!」
翌日、遺跡の入口で学者チームと合流した。
「初めまして。私はマルクス。遺跡研究の第一人者です」
白髪の初老の男性が自己紹介する。
「私はエマ。古代文字の専門家よ」
眼鏡をかけた若い女性。
「俺はトム。罠の解除が得意だ」
筋肉質の男性が笑う。
「よろしくお願いします」
俺たちも頭を下げた。
「では、早速中へ」
セレスティアが松明を持って先導する。
遺跡の中は、前回と同じく石造りの通路が続いている。
「前回調査したのは、ここまでです」
セレスティアが立ち止まる。
目の前には、巨大な石の扉があった。
「この扉、前回は開かなかったのよね」
リーナが言う。
「ええ。でも、祖父の日記にヒントが書いてありました」
マルクスが古代文字を読み始める。
「『四つの紋章を揃えし時、道は開かれん』…か」
「四つの紋章?」
「恐らく、この遺跡のどこかに隠されているのでしょう」
エマが壁を調べ始める。
「手分けして探しましょう」
俺とガルドは、左の通路を調べることになった。
「しかし、古代遺跡ってワクワクするよな」
「そうか?」
ガルドが苦笑する。
「俺は正直、遺跡は苦手だ。罠が多いからな」
「あ、そういえば前回もミミックに襲われたっけ」
「ああ。あれは危なかった」
通路を進むと、小部屋に出た。
「お、何かあるぞ」
壁に、光る紋章が刻まれている。
「これが紋章か?」
近づこうとすると――
ガシャン!
床が崩れた。
「うわああ!」
「アキラ!」
俺は落下する。
が、
「軟着陸!」
スキルを発動し、ふわりと着地した。
「…大丈夫か?」
上からガルドの声。
「ああ、全然平気!」
下を見渡すと、そこは広い部屋だった。
そして――
「あれ…モンスター?」
部屋の奥に、巨大な影が蠢いている。
「おい、何かいるのか?」
「ああ、なんか…でかいのが」
影がゆっくりと動き出す。
ズシン、ズシン。
「ストーンゴーレム…!」
全身が石でできた、三メートルはある巨人だ。
「マジか! またゴーレムかよ!」
ゴーレムが咆哮する。
ドゴォォォン!
「とりあえず、倒すしかないか」
俺は剣を抜く。
ゴーレムが拳を振り下ろしてくる。
「おっと!」
横に跳んで回避。
地面に大穴が開いた。
「やべえ、パワーすごいな」
反撃しようと剣を振る。
ガキィン!
「硬っ!」
剣が弾かれる。
「ちょっと本気出すか」
もう一度、力を込めて――
「でやああ!」
バシュッ!
剣がゴーレムの腕を切り裂いた。
「よし!」
でも、ゴーレムは止まらない。
もう片方の拳が飛んでくる。
「くっ!」
ガードするが、吹き飛ばされる。
「いてて…強いな」
ゴーレムが再び突進してくる。
「こうなったら――全力でいくぞ!」
俺は地面を蹴り、一気に距離を詰める。
「必殺!」
全力で剣を振り下ろす。
ドガァァァン!
ゴーレムの体が真っ二つに割れた。
「やった…」
ゴーレムが崩れ落ちる。
その瞬間、光の粒が俺の体に吸い込まれていく。
「あ、経験値…」
嬉しいような、悲しいような。
いや、嬉しいんだけど。
「ステータスオープン」
**桜井アキラ**
- レベル:867
- HP:867,000
- MP:867,000
- 攻撃力:867,000
- 防御力:867,000
- 魔力:867,000
- 敏捷性:867,000
「お、5下がった! 順調順調!」
「アキラ! 大丈夫か!?」
上からガルドの声。
「ああ、倒したぞ!」
「今、ロープを下ろす!」
ロープを使って上に戻ると、全員が心配そうな顔で待っていた。
「アキラさん、大丈夫ですか!?」
エリンが駆け寄ってくる。
「ああ、余裕余裕」
「余裕って…ゴーレムと一人で戦ったのよ?」
リーナが呆れている。
「まあ、なんとかなった」
「で、紋章は?」
セレスティアが聞く。
「あ、そうだった」
俺は手に持っていた、光る石を見せる。
「これ、ゴーレムが持ってた」
「それです! 一つ目の紋章!」
マルクスが興奮する。
「あと三つ見つければ、扉が開きますね」
「よし、引き続き探そう」
それから数時間かけて、残りの紋章も見つけた。
途中、エリンがジャイアントスパイダーと遭遇したが、落ち着いて対処していた。
「エリン、強くなったな」
「はい! 皆さんのおかげです!」
そのスパイダーを倒した時、エリンの体が光る。
「あれ…?」
「レベルアップしたのね」
リーナが微笑む。
「Cランクモンスターを倒せるなんて、本当に成長したわ」
リーナも罠を解除しながら、二つ目の紋章を見つけた。
ガルドとトムが協力して、三つ目の紋章を手に入れた。
そして、四つ目の紋章。
「最後の紋章は…あの部屋か」
マルクスが指差す先には、また別の部屋がある。
「俺が行くよ」
「アキラ、気をつけろ」
ガルドが忠告する。
部屋に入ると――
ズシン、ズシン。
「またゴーレムかよ!!」
さっきと同じストーンゴーレムが立ちはだかる。
「二体目とか、勘弁してくれよ…」
でも、やるしかない。
「行くぞ!」
今度は最初から全力で。
剣を振るい、ゴーレムの急所を狙う。
ガキィン、ドガァン!
激しい攻防が続く。
「でやああああ!」
渾身の一撃で、ゴーレムを両断した。
「はあ…はあ…」
息が上がる。
二体連続は疲れるな。
光の粒が体に吸い込まれる。
「また経験値…」
「ステータスオープン」
**桜井アキラ**
- レベル:862
- HP:862,000
- MP:862,000
- 攻撃力:862,000
- 防御力:862,000
- 魔力:862,000
- 敏捷性:862,000
「おお! また5下がった! ゴーレム2体で合計10か!」
嬉しそうに笑う。
「アキラ、大丈夫か!?」
リーナたちが駆けつけてくる。
「ああ、なんとか」
「また倒したの…?」
「まあね」
俺は四つ目の紋章を拾い上げた。
「これで全部揃った!」
四つの紋章を扉にはめ込む。
ゴゴゴゴ…
扉がゆっくりと開いていく。
「開いた…!」
中から、神秘的な光が漏れ出す。
「さあ、行きましょう」
俺たちは、扉の奥へと足を踏み入れた。
奥には、広大な空間が広がっていた。
そして、中央には――
「あれは…」
光り輝く宝箱が置かれている。
「祖父の探していた秘宝…!」
セレスティアが駆け寄ろうとすると――
ゴゴゴゴゴ…
地面が揺れる。
「な、何!?」
宝箱の前に、巨大な影が現れた。
「嘘…だろ…」
それは、今まで戦ったゴーレムの倍以上の大きさ。
「エンシェントゴーレム…!」
マルクスが叫ぶ。
「伝説級のモンスターです!」
「伝説級!?」
「まずい、逃げましょう!」
でも、ゴーレムはすでに動き出していた――
-----
## 次回予告
「これが…祖父の探していた秘宝…!」
「でも、伝説級のモンスターが守ってるとか聞いてない!」
「ほら、フラグ立てるからでしょ!」
「今それ言う!?」
次回、第23話「遺跡の秘宝」
最強のゴーレムとの戦い、そして――!?
-----
**現在のアキラのステータス**
- レベル:862(10減少)
- HP/MP/攻撃力/防御力/魔力/敏捷性:862,000
- ギルドランク:Dランク
- 所持金:金貨12枚、銀貨30枚




