第17話「依頼報告と新たな決意」
前回のあらすじ
遺跡の最深部で、アキラたちは謎の黒ローブの男と遭遇。男は告げた――「君は逆転者だ」と。レベルが下がり続け、やがて0を超えてマイナスになった時、すべてが反転する。謎の水晶を手に、アキラの運命が動き出す――
-----
## 本編
「ただいま戻りました!」
俺たちがギルドに到着したのは、日が完全に沈んだ後だった。
ギルド内は相変わらず賑やかで、冒険者たちが酒を飲みながら騒いでいる。受付には、いつものマリアさんが立っていた。
「お帰りなさい。遺跡調査、お疲れ様でした」
マリアさんが笑顔で迎えてくれる。
「はい!無事に帰ってきました!」
俺は元気よく答えた。
「それで、調査の結果は?秘宝は見つかりましたか?」
「あー…それが…」
俺は言葉に詰まった。
秘宝は見つからなかった。その代わり、謎の男に会って、水晶をもらった。そして、俺が「逆転者」だと告げられた。
どこから説明すればいいんだ?
「秘宝は見つかりませんでした」
リーナが代わりに答えた。
「ただ、遺跡の最深部まで調査は完了しています。魔法文明時代の石碑や、ゴーレムとの戦闘もありました」
「ゴーレムですか…それは大変でしたね」
マリアさんが驚いた表情を浮かべる。
「はい、でも無事に倒せました!」
エリンが嬉しそうに言う。彼女にとって、あのゴーレム戦は大きな経験になったようだ。
「わかりました。では、依頼主であるセレスティア様に報告をお願いします。彼女は応接室で待っています」
「え、まだいたんですか?」
俺は驚いた。
依頼主が直接ギルドで待っているなんて、珍しい。
「ええ。あなたたちの帰りをずっと待っていたようです」
マリアさんがそう言うと、俺たちを応接室へと案内してくれた。
-----
応接室のドアを開けると、セレスティアが優雅にソファに座っていた。
「お帰りなさい。無事でよかったわ」
彼女は微笑みながら俺たちを迎えた。
「ただいま戻りました。調査、完了しました!」
俺は元気よく報告する。
「それで、秘宝は見つかったかしら?」
セレスティアが期待を込めた目で聞いてくる。
「それが…見つかりませんでした」
俺は正直に答えた。
セレスティアの表情が、一瞬だけ曇る。
「そう…残念だわ」
「すみません…」
俺は謝った。
「いえ、謝らなくていいのよ。遺跡の調査をしてくれただけでも感謝しているわ」
セレスティアは優しく微笑んだ。
「それで、遺跡の中はどうだったかしら?何か発見はあった?」
「はい!魔法文明時代の石碑がありました。それと、ゴーレムが守っていました」
リーナが説明する。
「ゴーレム…やはり、あの遺跡には何かが隠されていたのね」
セレスティアは考え込むような表情を浮かべた。
「あと…謎の男に会いました」
俺はそう付け加えた。
「謎の男?」
「黒いローブを着た男です。石碑の前にいて、俺たちに色々話してくれました」
「それは…一体何を?」
セレスティアが身を乗り出す。
「えっと…魔法文明のレベルシステムについて、とか…」
俺は言葉を濁した。
逆転者のことを、ここで話すべきかどうか迷う。
「アキラさん、全部話しちゃったほうがいいと思いますよ」
エリンが小声で言う。
「そうね。どうせバレるんだから、正直に話しなさい」
リーナも同意した。
「わかったよ…」
俺は覚悟を決めて、男から聞いた話をすべてセレスティアに伝えた。
逆転者のこと。
レベルが下がり続けること。
レベル0を超えたら、すべてが反転すること。
すべてを話し終えると、セレスティアは驚いた表情で固まっていた。
「まさか…あなたが逆転者だなんて…」
「やっぱり知ってるんですか?」
「ええ。祖父の日記に書かれていたの。数百年に一度現れる、レベルが逆転する者のことが」
セレスティアは真剣な目で俺を見つめた。
「祖父は、逆転者こそが真の勇者になれると書いていた。レベルに縛られず、真の力を手にする者だと」
「真の勇者…」
「ええ。だから、あなたには期待しているわ。いずれあなたは、この世界を救う存在になるかもしれない」
セレスティアはそう言うと、優雅に立ち上がった。
「依頼の報酬は、約束通り金貨50枚よ。受け取ってちょうだい」
「え、いいんですか?秘宝、見つけられなかったのに…」
「構わないわ。あなたたちは遺跡を調査してくれた。それで十分よ」
セレスティアはそう言うと、テーブルの上に金貨の入った袋を置いた。
「それと、これも」
彼女は小さな本を取り出した。
「これは祖父の日記の写しよ。逆転者についての記述がある。役に立つはずだわ」
「ありがとうございます!」
俺は日記を受け取った。
「それじゃあ、私はこれで失礼するわ。また何かあれば、ギルドを通して依頼するわね」
セレスティアはそう言うと、優雅に部屋を出て行った。
-----
応接室に残された俺たちは、しばらく沈黙していた。
「金貨50枚…すごい額だな」
俺は袋の重みを感じながら呟いた。
「秘宝を見つけられなかったのに、こんなにもらっていいのかしら…」
リーナが申し訳なさそうに言う。
「でも、ゴーレムも倒したし、遺跡も調査したんだから、もらっていいと思いますよ!」
エリンが明るく言った。
「そうだな。それに、俺たちは命懸けで戦ったんだ。報酬をもらう資格はある」
ガルドが頷く。
「よし!じゃあ、この報酬をみんなで分けよう!」
俺は袋を開けた。
金貨50枚。
4人で分けるなら、一人12枚ずつで、残り2枚だ。
「俺が12枚、リーナが12枚、ガルドさんが12枚、エリンが12枚。残りの2枚は…パーティーの資金にしよう!」
「それがいいわね。何かあった時のために、資金は残しておいたほうがいい」
リーナが同意した。
「わあ…金貨12枚も…」
エリンが目を輝かせている。
「エリン、ちゃんと貯金しなさいよ?」
「はい!」
エリンは嬉しそうに金貨を受け取った。
「それにしても、逆転者か…」
ガルドが呟く。
「これからどうするつもりだ、アキラ?」
「どうするって…普通に冒険者を続けますよ」
俺は当然のように答えた。
「レベルが下がり続けることを知っても、か?」
「はい!だって、レベル0を超えたらすべてが逆転するんでしょ?だったら、早くそこまで行きたいです」
俺の言葉に、ガルドは苦笑した。
「お前は本当に前向きだな」
「それがアキラさんのいいところです!」
エリンが笑う。
「まあ、その前向きさが命取りにならないといいけど…」
リーナがため息をついた。
「大丈夫だって!俺には最強の仲間がいるんだから!」
俺はそう言って、みんなを見渡した。
リーナ、ガルド、エリン。
この3人がいれば、どんな困難も乗り越えられる気がする。
「よし!じゃあ、今日は打ち上げだ!飯を食いに行こう!」
「賛成です!」
エリンが元気よく手を上げた。
「まあ、たまにはいいわね」
リーナも笑顔で頷く。
「ならば、付き合おう」
ガルドも同意した。
俺たちは応接室を出て、ギルドの食堂へと向かった。
-----
食堂は相変わらず賑やかで、冒険者たちが酒を飲みながら騒いでいる。
「すみませーん!料理4人分お願いします!」
俺は大声で注文した。
「はいよ!」
食堂のおばちゃんが元気よく返事をする。
俺たちはテーブルに座って、料理を待った。
「それにしても、今日は色々あったな」
俺はしみじみと呟いた。
「ゴーレムとの戦闘、謎の男との出会い、逆転者の真実…本当に濃い一日だった」
「これからもっと大変になるわよ。覚悟しておきなさい」
リーナが真剣な表情で言う。
「大丈夫!俺、絶対にレベル0を超えてみせるから!」
「その前に死なないでくださいね」
エリンが心配そうに言った。
「大丈夫大丈夫!俺には運があるから!」
「運だけで生き残れるほど、冒険者の世界は甘くないぞ」
ガルドが厳しい声で言う。
「わかってますって!だから、もっと強くなります!」
俺は拳を握りしめた。
レベルは下がり続ける。
でも、それでいい。
レベル0を超えた先に、真の力が待っている。
そう信じて、俺は前に進む。
「おまたせー!」
食堂のおばちゃんが料理を運んできた。
肉の煮込み、パン、スープ。
豪華な夕食だ。
「いただきまーす!」
俺たちは一斉に食事を始めた。
「うめえ!」
「おいしいです!」
エリンも嬉しそうに食べている。
「たまには、こういうのもいいわね」
リーナも満足そうだ。
「ああ、たまには息抜きも必要だ」
ガルドも珍しく笑顔を見せた。
俺たちは楽しく食事を続けた。
明日からまた、厳しい冒険が始まる。
でも、今は仲間と一緒に、この時間を楽しもう。
「なあ、次はどんな依頼を受けようか?」
俺は口に肉を頬張りながら聞いた。
「まずは、エリンの訓練を続けないとね」
リーナが答える。
「そうですね。もっと強くならないと、みんなの足を引っ張っちゃいます」
エリンが申し訳なさそうに言う。
「気にするな。お前はまだ始めたばかりだ。これから強くなればいい」
ガルドが優しく言った。
「はい!頑張ります!」
エリンが元気よく答える。
「よし!じゃあ、明日からまた訓練だ!」
「うう…また地獄の特訓ですか…」
エリンが不安そうな顔をする。
「大丈夫大丈夫!俺が付きっきりで教えてやるから!」
「それが一番不安なのよ…」
リーナがため息をついた。
俺たちは笑いながら食事を続けた。
手の中の水晶が、微かに温かくなっているような気がした。
これから、どんな冒険が待っているんだろう。
ワクワクが止まらない。
「よし!明日も頑張るぞ!」
「おー!」
俺たちの声が、食堂に響き渡った。
-----
## ステータス
**桜井アキラ**
- レベル:893(変動なし)
- HP:893,000
- MP:893,000
- 攻撃力:893,000
- 防御力:893,000
- 魔力:893,000
- 敏捷性:893,000
- スキル:全スキルLvMAX
- 所持金:金貨12枚
**パーティー資金**
- 金貨2枚
**新アイテム**
- 謎の水晶(逆転者の証)
- セレスティアの祖父の日記(写し)
-----
## 次回予告
報酬を手にし、新たな決意を固めたアキラ。
逆転者としての運命を受け入れ、さらなる強さを求める。
だが、レベルが下がり続ける中、本当に彼は戦い続けられるのか?
次回、第18話「エリンの成長と新たな依頼」
仲間と共に、アキラは前へ進む!




