第6話 ミルダ・カームハイツそして町へ
「「「「女の子?」」」」
なんともかわいらしい少女がいた。言い方的には美少女の方がいいかもしれない。
「あなた達誰!?何も言わないのならここで跡形も無く消すわよ!」
「いや!ちょっと待ってくれ!僕らは旅の者だ!この森を移動してたらこの場所についていたんだ!」
いきなり跡形も無く消すって、物騒すぎるだろ!!
「そうかしらね?嘘を言ってもわかるわよ・・・。『サーチ《心を透かせ》』」
彼女の体が急に光りだした、そして心を何かに見られてる感じがする。なんだこれ・・・魔法とかってやつなのか?
「あ・・・あれ?言っていること正しいの?またやっちゃった?」
何かぶつぶつ言ってる・・・。コルントに目配せしてみたが彼も聞こえてないらしい。
「あ・・・あの?大丈夫か?」
「へ!?あ、いや・・・あの。そ、その・・・えっと」
さっきは高圧的な態度をとってたと思ったら、今度はすごいしどろもどろになったぞ。なんかすごい情緒不安定な。
「ご・・・ごめんなさい!!てっきり奴らの仲間だと思って・・・本当にごめんなさい!!!」
次は一気に年頃の女の子の声になってすごい謝ってきたぞ。
「い、いや。大丈夫なんだが・・・。それにしても君はなぜこの場所に?」
「は・・・はい。いつもこの場所で魔法の練習をしていまして。」
魔法?魔法といったか!?まさか実在するとは思ってなかったぞ!ほんとにここはファンタジーの世界(星)なのか!そしてコルントは目が星になってる、まあ好きだからな、ファンタジー系の物語。
「1人で練習しているのか?」
「はい。あまりほかの場所でもできませんし、一人の方が落ち着いて練習できます。」
「そうか。確かに1人の方が練習ははかどるしな。」
「はい!」
さっきまでと違って年相応の普通の女の子だな。まあ10代ってところか?
「そういえばお兄さん方は、なぜこの森を?」
「あぁ。俺たちは自分たちの村を出て旅をしようと思ったのだが、この森が広すぎて迷子状態だったのだ。やみくもに進んでいたら、この場所に出たというわけだ。」
「なるほど、そうだったのですね。良ければ町まで案内しましょうか?」
「え?いいのか?」
「えぇ、いいですよ。疑ってしまったお詫びに…」
「それだったらよろしく頼む。」
親切な女の子だ。俺たちが知っている人間と大差ないな、魔法は使えないけど。それにしてもさっきから思うのだが、なぜ言葉が分かるのだ?まあ分からずに会話が成立しないよりかはだいぶいいことなのだが・・・
「私の名前はミルダ・カームハイツです。」
「バルナです。」
「俺の名前はカーライムだ。」
「ハリアーです。以後お見知りおきを」
「コルントです。バルナさんは、私のお兄ちゃんです!」
「それでは案内します。私についてきてください。」
そういうとミルダと名乗る女の子は、森のほうに歩いていった。町はどうやら俺たちの進行方向にあるらしい。俺たちも彼女のあとをついていった。
それにしても・・・家名を名乗ってたな。コルントの知識が通じるのなら・・・
「なあミルダ。すこしいいか?」
「はい?なんですかバルナさん」
「今カームハイツと名乗っていたが、貴族なのか?」
「いえ、貴族ではないのですが、私のお母さんが筆頭宮廷魔術師なので、家名を名乗ることが許されているのです。」
「なるほど。」
貴族ではないにしろ、なかなかにすごい人が家族にいるようだ。そしてコルントの言っていた通り、家名は名乗らなくてよかったな。
「なあコルント、聞いていいか?」
「なんですか?カーライムさん」
「その、『筆頭宮廷魔術師』とは何だ?」
「どこかの国家に属する魔術師の中で、最も優れた能力を持っている魔術師のことをそう言うのです。我々で分かるように言えば、主力艦隊の総司令官、連邦軍総帥みたいなものです。」
「なるほど、つまりあの娘の親はとんでもない人なのか。」
「はい、とんでもない人です。」
後ろでコルントとカーライムがミルダに聞こえないようにしゃべっていたが、最後そこ「とんでもない人」で片づけるか。なぜそこで適当にした、俺も人のこと言えないけど。
「ところでバルナさん達はなぜ村を出て街に行こうと?」
「あぁ、カーライムとハリアーは小さいころからの幼馴染でな、よく村周辺で木に登ったり魔物を狩っていたんだ。そうしているうちに、もっと外の世界に行きたいと思っていたのだ。だが元々俺たちの村は閉鎖的な環境で、許されなかった。だから夜逃げみたいな感じで、親の目を潜り抜けて村を出たんだ。町を探そうと思ってこの森に入り、気付いたらあの広場にいたんだ。」
「そうだったのですか・・・。今頃あなた方の家族さんは」
「いなくなって清々しているだろう。何せあの村の中で問題児だったからな、俺たちは。」
我ながらよくこのような話が出てくるな。ある程度決めてたはいたのだが、ここまで話を広げられるとは思わなかった。
「・・・・・すみません。嫌なことを聞いてしまって。」
「まあいいよ、二度と顔を見ることも無いしな。」
「そういえば、閉鎖的な村と言っていましたが・・・」
「ご想像の通り、世間常識はほとんどない。国の名前も通貨もよくわからない。」
「でしたら、説明してあげますよ。」
「お?そうか、頼む。」
本当に親切だなミルダは。そこで俺は、少しながらこの世界の知識を知った。
〇モルド王国:今俺達が向かっている街を統治している国家。約1,500年前に建国されたらしく、古い国家の一つに数えられているらしい。国土はほかの国と比べたら狭いようだが、資源に恵まれており、また植物を育てるのに適した土や気候が多く、最も恵まれている国の一つらしい。王都[マーダリア]を中心とし、2つの都市、9個の街、18個の村があり、それぞれエリアごとに貴族が統治しているらしい
また通貨は世界共通で、
[銅貨]が一番低く、
[銅貨]10枚で[銀貨]1枚
[銀貨]10枚で[金貨]1枚
[金貨]10枚で[青銅貨]1枚
[青銅貨]10枚で[王金貨]1枚
[王金貨]100枚で[緋緋色金金貨]1枚
となっているらしい。王金貨はめったに出回るものではなく、ましてや緋緋色金金貨は幻の存在とも言われているらしい。通貨が幻ってどういうことだよ、それ本当に存在するのかよ。
あと俺らの世界では青銅はよく出る金属だが、この世界(星)ではあまり採取できず、金よりも少ないらしい。だから金よりも青銅の方が価値は上らしい。
「皆さん。街が見えてきましたよ!あれが『イシス』です!」
「「「「お~~。」」」」
あれがイシスという街か。立派な城壁、その周りは水に囲まれている。さしずめ城塞都市だな、これは。
「もともとこのイシスという街は、要塞だったのです。その要塞が使われなくなり、その後街になりました。あの壁は、その時の名残です。」
なるほど、だから見た目が城塞都市のようになっているのか。
「さて、街に入りますよ。ちょうど今は誰も並んでないからすぐ入れそうですね。」
確かによく見ると門の前に人はいない。だが衛兵はいるな。待てよ、俺たちこの世界の身分証明書とかないぞ。
「なあミルダ。俺たち通行許可証も身分証明書みたいなもの持っていないのだが、入れるのか?」
「大丈夫です。私に任せて下さい!」
そのまま俺たちは門の前まで来た。すぐ近くまで来た後に、
「「とまれ!」」
「身分証明書をみせ・・・って、ミルダ様?」
「そうよ、今日もお疲れさま。」
「魔法の練習はよろしいのですか?」
「今日は休憩よ、毎日やって体を壊したくはないから。」
「そうでしたか。それで、後ろの方々は?」
「旅の人らしいよ。村があれだったらしくて、身分証明書を持っていないらしいけど、大丈夫、身元の安全は保障するわ。」
「そうですか。ミルダ様がおっしゃるのなら大丈夫でしょう。では、どうぞ」
「いくよ!バルナさん達」
「「「「お、おう。」」」」
衛兵と話してたかと思うと、あっさり街の中に入れたぞ。すごい人の娘さんだからなんだろうな、衛兵も完全に信用していたぞ。
「さて、私の案内はここまでです。」
「あぁ、本当にありがとう。助かった。」
「大丈夫ですよ、またどこかで会いましょう。」
「そうだ最後に、冒険者ギルドの場所分かるか?」
「それでしたら、この大通りをまっすぐ進んでいくとありますよ。」
「そうか、本当にありがとう。」
「それじゃ、またね。」
そういうと彼女は、走ってどこかに行った。
「可愛かったな。あの娘」
「そうですね。」
「私とあまり変わらないような気がします。」
男衆二人は惚れてやがるな。まあ、軍人である俺たちはあのような子に会うのはめったに無いからな。
それにしても、初対面の俺たちにいろいろと教えてくれたし、村(嘘)のことについても何も疑ずに信じた。あれか?強気状態の時に言っていたなぞの言語によるものか・・・
わからないな。ただ、とりあえず、
「さて、ずっとここにいるわけにもいかない。冒険者ギルド行くぞ」
「「「おー」」」
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