敵になる事を求めたならば
この事態は残存してる他の国々も知る事となる。
だが、警戒しつつも対応は出来ない。
いくつもの国を滅ぼした存在と戦うのは二の足を踏んだ。
だが、何も知らないままではいられない。
国境を接する国は気が気ではない。
少しでも情報を求めて偵察を出していく。
そうして出撃させた者達はゾンビになって帰ってきた。
国境沿いの村から人々に襲いかかり、ゾンビを増やしていく。
あわてて隣接する国は軍勢を繰り出した。
ゾンビが少ないうちに全てを解決するために。
幸い、これは上手くいき、ゾンビの急拡大は防げた。
だが、下手に動くことが危険な事も理解した。
ある意味、偵察の成果を得られたといえる。
最悪の形でだが。
幸いにして、ゾンビだらけの国々からそれ以上の介入はなかった。
まがりなりにも国内に侵入してるのだ。
これを口実に攻めこまれても文句はいえない。
それがないだけでもありがたかった。
それを各国は無言の意思表示と受け取った。
何もしなければ手を出すつもりは無いが、介入してきたら容赦しないという。
実際に何を考えてるのかは分からない。
しかし目立った動きも見えない。
おそらくそういう事なのではないかと考えるしかなかった。
そうであってほしいという願望が各国にそう思わせているというのもある。
人間、自分に都合の良い状況であると望むもの。
望んだ事が現実だと思い込みたくなるもの。
今の各国がそういう状態だった。
相手は無数ともいえるゾンビの軍勢。
戦って勝てる要素がない。
世界各国が手を取り合えばどうにかなるかもしれないが。
では各国が連合を組めるのかというと、それも難しい。
各国ともに自分の利害を考えていく。
たとえ危険な敵がすぐ近くにいても、簡単に手を組む事はできない。
そんな場合じゃないにも関わらずだ。
それでも各国は交渉を開始していく。
目前に脅威があるのも確かだ。
何の備えもしないわけにはいかない。
簡単にまとまらないと分かりつつ、それでも迅速に、そして自国に有利になるように悪知恵を働かせていく。
そんな各国の動きなどお構いなく、死霊使いは平穏な日々を送っていた。
ゾンビを労働力として使う事で必要なものを生産していける。
生きていくだけならそれで充分だ。
贅沢は出来ないが、それはかまわなかった。
敵対する者がいないだけでありがたい。
平和と平穏以上の贅沢はないのだから。
それでもゾンビに出来ない作業はある。
その部分を補う人間は集めていった。
職にあぶれてる者がそれなりにいるので、人集めはさほど難しくは無い。
やってきた者達はゾンビを見て驚くが、襲われる事もないと分かれば落ち着いていく。
そういった者達に身のまわりの世話や、細かな作業をさせていく。
悠々自適な生活がおくれるようになっていった。
その後、連合を組んだ隣国との戦争もあったが。
大量に送り込むゾンビによって敵を撃退。
いくつかの国を消滅させて再び平和を取り戻した。
生き残ってる国はいくつかあるが、それらが手を出してくる事は無い。
滅亡して誰もいない無人地帯になった国を見れば、下手に手を出そうとは思わない。
この空白地帯を緩衝地域として、残存国は死霊使いとにらみ合う事になる。
だが、にらみ合うだけで手を出そうとはしない。
各国が共同して送り込んだ連合軍は潰滅。
共に戦った国々のうちいくつかが滅亡。
彼我の戦力差は開戦前よりも開いてしまってる。
この状況で再び戦う事はできなかった。
残存国はとりあえず現状維持を保とうとしていく。
しかし、死霊使いはそうはさせない。
敵を生かしておくとやはり面倒なのだと再認識し、容赦なく攻めこんでいく。
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を