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【番外編】デート2

 王都の中心街には所狭しとお店が立ち並び、貴族相手の店も庶民相手の店も繁盛している。

 ブライアンがどこに行くつもりなのか分からないので、私は私で久しぶりの王都を歩くのを楽しむことにした。


 見たこともない食事を提供する屋台の出店や、新鮮な野菜の行商が集まる市場は活気があふれている。

 あぁ、アクセサリーや服が並ぶ店先を眺めるだけでも楽しいわ。


 スタスタと歩くブライアンがチラッとアクセサリーショップの店先を眺めたときに少しだけ期待したけれど……結局そのまま素通りした。


 しばらく歩くと急にブライアンの歩みが止まる。


 えっと。馬具のお店……


 なんだ。普通にブライアンが買いたいものを買いに来ただけか。

 勿体ぶらずに馬具を見に行きたいっていえばいいのに。

 まぁ、らしいといえばらしいけど。


 他の店と違い客は入っておらず、静かな雰囲気だ。


 ブライアンは行きつけなのかドアを開けてさっさと入ると、奥にいる店主らしき男性に挨拶をする。


「頼まれてたものはできてるよ。とってくるから待ってておくれ」


 そう言って店の奥に入っていってしまったため、私とブライアンは静まり返った店内で二人きり。


 気まずい……


 二人きりなんて思うと意識しすぎてしまう。


「……ブライアンはこの店によく来るの?」

「あ、あぁまぁうちの厩舎の馬達は昔からここで馬具を揃えてる。王都の店だから農作業用から軍事でも使えそうなものや馬車を引かせる馬につける様な装飾だとか、とにかく品揃えがいい」

「そっそうなのね」


 また、沈黙してしまう。


「あっ……えっと……ほら! 最初から馬具をみたいって言ってくれたらよかったのに。もしかしたら、両思いになった記念になにか贈り物でもしてくれるんじゃないかって期待しちゃったわ!」


 沈黙に耐えきれずに、ふざけた調子でそう口に出してしまったけど、何かねだってる様で恥ずかしくなる。


 私を見つめていたブライアンが慌てた様にフイと視線を外す。


「……いまここで買ってやるから待ってろよ」

「えっ? 馬具店で?」

「あぁ」


 ……酷い。


 贈り物が欲しいなんて図々しいこと言ったように聞こえたかも知れないけど!

 いくらじゃじゃ馬扱いしてるからって馬具?


「なに? 私にハミでも噛ませて静かにさせるつもり? それとも手綱を握りたいのかしら? 鞭打ちなんてやめてよね!」


 楽しみにしていたデートなのにバカにされた気がして、つい口から言いたくもない文句が溢れる。

 

 ねだってるつもりじゃなくて、思い出を形にしたかっただけなのに……

 ブライアンと二人きりでいたくない。


「ミンディ待てよ!」


 私は涙が溢れるのも止められず、ブライアンを振り切って店を出る。


 ちょうど店員の男性が裏から出てきたのが見える。

 きっとすぐ追いかけに来れないわ。


 私は慣れないヒールで痛む足で無理して人々でごった返す市場に戻り、噴水の縁に腰掛ける。


 でける前は期待で胸いっぱい膨らんでいたけど、今はぺちゃんこだ。


 ぼろぼろ泣く私を遠巻きに見ている人達の視線が痛い。

 私を見ながら「あんなに泣いて、フラれたのかな?」「慰めに行ったら付き合えるかもよ? お前行ってみろよ」「あんなに髪の毛振り乱してたんだ襲われそうになったとかかもよ?」みんなコソコソと好き勝手言っている。


「ミンディ!」


 追いかけてきたブライアンが叫ぶと、余計に周りの視線が集まる。

 私は立ち上がり人気のない方向に歩いていく。


「おい。待てよ! どうしたんだよ急に!」

「だってブライアンが相変わらず私の事じゃじゃ馬扱いするから……」

「はぁ? お前、人の話ちゃんと聞けよ」


 ブライアンは私の肩を掴むと持っていた包み紙を押し付けてきた。


「なに?」

「開けろよ」

「あっ……」


 ブライアンから受け取った包み紙を開けると#革手袋__グローブ__#が入っていた。


 ブライアンはフンと鼻を鳴らす。


「お前が一緒に馬に乗りたいっていうから用意したのに」


「ありが……とう……」


 アクセサリーじゃないけれど、私のためにブライアンが用意してくれた贈り物はもっと素敵でまた胸がいっぱいになる。


「……じゃじゃ馬娘はすぐ逃げ出すからやっぱり手綱は必要かもな」


 そうふざけて言われたけれど、ブライアンの目は優しくてドキッとする。


「手綱の代わりに、握ってて」


 私はそう言って、ブライアンの手を取る。


 ブライアンは耳たぶまで真っ赤にして手を握り返した……

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