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最終話──ミンディside

 お茶会がお開きになり、ことの顛末を話すためお父様と王都にあるケイリー伯爵家の別邸に寄る。

 応接室で私たちの結婚について段取りを話し合っていた筈のお父様とおじ様は、いつの間にか祝杯を酌み交わし盛り上がっている。


「ミンディ。風にあたりに行こう」


 ベランダに出て、落ちはじめた夕日に照らされオレンジ色に輝くブライアンを見つめる。


「王太子殿下とは何を話していたの?」


 ベリンダの付き添いで来ていたはずのブライアンはお茶会で王太子殿下と話し込んでいた。


「これからの事かな?」


 そう言うとブライアンは目を伏せて考え込む様な素振りを見せる。


「私、お茶会で急に王太子殿下に領地について質問されてドキドキしちゃったわ。あれはきっと私が答えられないのを見越してお父様に話を聞く口実作りだったのよ。お父様は王太子殿下が領地のこと気にかけて話を聞いてくれたからって『未来の賢王』なんて大絶賛してたもの」


 まるで王太子殿下の手のひらで踊っている様なお父様を見ると、確かに王太子殿下は賢王になるのかもしれない。


「王太子妃選びの為のお茶会なんて口実で、王室に対して中立の領主達を集めて、王太子殿下が話しに回って忠誠心を高める会だったなんて、振り回されたな」

「……まぁ、いいじゃない」

「?」

「だって王室に振り回されたお茶会だったかもしれないけれど、このお茶会がなかったら……ブライアンの気持ち聞けなかったもの……」


 真っ赤になりながらそう言った私を見つめるブライアンの顔も夕焼けの中でもわかるくらいに真っ赤だった。


「俺はアカデミーを卒業したら王室の武官になって父上の様に近衛騎士団の団長になりたいと志している。今は戦争もないけれど、いつ有事が起こるかはわからない。有事の際には長く留守にしたり……お前を悲しませることになるかもしれない」


 ブライアンの言葉に想像しただけで悲しくなり被り振る。


「ミンディ。それでも俺と結婚してくれるか?」


 ──結婚。


 こないだまでは顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた、腐れ縁の幼馴染でしかなかったのに。


 お茶会の前までは私の片想いだと思っていたのに。


 ブライアンと両想いだって知れて、それだけで幸せだったのに。

 私とブライアンの婚約話が進んでいるとお父様から聞かされた時ももちろん嬉しかったけど、こうしてブライアンから直接言われて喜びが身体中を駆け巡る。


「もちろんよ」


 私がそう答えると、ブライアンが真っ赤な顔をクシャクシャにして笑う。


 私が大好きな笑顔。


 胸がいっぱいになって私も笑うと、ブライアンの顔が急に真面目になる。


 ブライアンの豆だらけの大きな手が私の頬に触れ愛おしそうに包み込む。


「ミンディ。愛してる」

「私も愛してるわ。ブライアン」


 ブライアンの顔が近づき、そっと唇が触れて離れる。

 乱暴なブライアンに似合わない優しい口づけだった。


「優しいと調子が狂うわ」

「……せっかく優しくしてやったのに。後悔させてやる」

「そうこなくちゃ」

「もう、逃さないからな」

「いやよ。逃げるわ。だから……どこまでも捕まえに来て」

「はは。逃げるのかよ。わかったよ、どこまでも追いかけて捕まえてやる。俺のじゃじゃ馬娘」


 そう言ったブライアンに、今度は深く……深く、口づけされた。



ー完ー

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